いつでも、そしていつまでも……
著 Nyaoさん
「……春菜さんの入れてくれたお茶は、いつもおいしいですわね〜」
「そう言ってもらえると、私もうれしいですよ」
ここは、HDD内の数あるディレクトリのひとつ、LFと書かれた春菜の部屋。
最近、乙音はお茶を飲みに春奈の部屋に押しかけている。
「……けど、乙音さん,大丈夫なんですか?」
「何がですか?」
せんべいをかじりながら春菜が聞けば、これまた、せんべいをかじりながら乙音が答える。
「だって、今PC起動中ですよ、いつお呼びがかかるか……」
「大丈夫ですわゥ この前暇つぶしにデータ検索してる時に、便利なもの見つけてきましたから。」
「何ですか? 便利なものって?」
「その前に、お茶もう一杯いただけます?」
差し出された湯のみにお茶を注ぎながら、春菜は同じ質問を繰り返す。
「もとは古いゲームの呪文データみたいでしたけど、他の人を特定の場所にテレポートさせる呪文だったのをアレンジして、私にお呼びがかかったら強制的に部屋へ転移されるようにしたんですよゥ」
「乙音さん…そのゲームって、ウィザードリィって名前じゃないですか?」
「さ〜、そこまでは覚えてないですわ。」
「けど、本当便利そうねー、私も教えて貰おうかしら?」
「良いですけど……」
少し、乙音の眉がよった。
「何か、問題でも?」
その様子に、不安そうに春菜が聞く。
「実は、時々BMPのモジュールエラーになっちゃうんですよ」
申し訳なさそうに、乙音が答えると
「やっぱり遠慮しときます。」
引きつった笑いを浮かべながら春菜は断った。
「……それにしても、あの人(ユーザー)誰の所に行ってるのかしら?」
春菜は、お茶を一口飲んだ後、ふと思いついた疑問を口にした。
「今なら、多分ねねちゃんの所ですわ。」
ようかんを口に入れながら乙音が答えた時、春菜が渋い顔をしているのに気がついた。
「どうかしました? 春菜さん。もしかして、ねねちゃんの事お嫌いですか?」
「ううん、違うの、ねねちゃんって、天然が入ってるけど素直だし、かわいいし良い娘よ。嫌いじゃないんだけど、ちょっと……」
「?、ちょっと?」
「アレに気圧されちゃって」
春菜はそう言いながら、自分の胸を持ち上げる。
「ヴ…」
乙音もうめきながら、無意識に自分の胸を抱きしめた。
『ふう……』
二人同時にため息をついたとき、突然FAXが動き出した。
「あら、何でしょう?」
乙音が気がついて春菜に聞いた。
「あ〜、更新情報ね、新しい更新情報が無い時は、FAXで来るようにしてあるんですよ」
うなぎパイをかじりながら、すねた様子で春菜が答えた。
「あの人、新しい更新でもないと、会いに来てくれないし、私も乙音さんみたいにかまってもらいたいなー」
上目使いで乙音をみつめると、乙音は少し寂しそうに微笑んだ。
「でも、私はもうすぐ完正体になってしまいますわ。そして、今度は、妹が私の後を継ぐことになっていますの、そうなったら、いつまで此処に居られるか……私も春菜さんの様に1.0系だったら良かったのに……」
「大丈夫ですよ!!!」
突然、乙音の手を握りながら春菜が叫んだ。
「たしかに、あの人は飽きっぽい所はあるけど、気に入ったペルソナはいつまでも残しておく人よ、私みたくたまにしか呼んでもらえなくても、消すようなことは絶対に無いわ。それは、あなたの方が良く知っているんじゃないの? もっとあの人を信じてあげて!」
「そうでしたわ、あの人はそんな方でしたわね。春菜さん、ありがとうございます。そしてゴメンナサイ、弱音なんか吐いちゃって」
「分かってくれてうれしいわ。だからもう泣かないで」
「春菜さんこそ」
ふと、見詰め合うとお互いにクスクスと笑い合った。
「乙音さん、お茶もう一杯どうですか?」
「それじゃ、いただきますわ。」
そして、午後のひと時は過ぎてゆく……乙音の思いとともに……
いつでも、そしていつまでも、あなたのそばに……
【感想 From 元】
Nyaoさんから頂きました,乙音っちのショートストーリーでございます♪
ほんわかしてて、良いお話ですのぅ〜〜。春菜嬢の「大丈夫ですよ!」発言は私的にジンと響いております。
さて、これを読まれている貴方は乙音を使って頂けますか?(^^)
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