雪音、強襲!
著 Nyaoさん
『……わたしは、あの人を信じます。いつでも、そしていつまでも……』
春菜の部屋を出てから、乙音はそう自分に言い聞かせた。
「ありがとうございます、春菜さん」
そうつぶやき、自分の部屋のドアをあけた瞬間、
「何処へ行っていたのです、姉上!!」
「きゃ〜! ごめんなさい!」
突然の怒声に、反射的に謝ってしまってから、自分を怒鳴ったのが誰なのか、唐突に気がついた。
「ゆ、雪音!? どうしてあなたがここに!?」
「そんなことより、仕事中に何処に行っていたのですか? 姉上!」
「春菜さんの所で、お茶をいただいてきたのよ。それより、さっきの質問に答えなさい,雪音!」
「暇だからさっきの更新に便乗して、見学に来ました」
「ひ、暇だからって、あなたが居なくなったら、お父様がびっくりしますよ! それに、その姿!」
そう、乙音の前には誰の姿も見えない、ただ、そこに誰かが居ると、感覚で認識できるだけ。分かりやすく言えば、『俺は此処に居るぞー』といったオーラをまとった透明人間、そんなのが今、乙音の前でしゃべっている。
「そこ! 人のことを、そんなの扱いしないように! け・り・ま・す・よ!」
わっ、悪かった。以後気をつけます(あせあせ)――って、作者につっこまないように!
「……っち、まあいいか」
……(^_^;) (来る時、変なもの拾って来たのか?)
「そんなことより、あなたが居なくなったら、プロジェクトYUKINEはどうなるの!?」
乙音が肩のあたりに手を置いて問い掛ける。姿は無くても存在はしているから出来ることだ。
「大丈夫ですよ、姉上。調整と思いついた機能の追加、後は私を描いてくれるグラフィッカーが現れるのを待つだけだし、身代わりを置いてきましたからゥ」
「……身代わり?誰なんです。」
「任○ちゃん」
「……お父様、ショック死しないかしら(^_^;)」
……その頃
「さてと、雪音に『ありがとう』システムを付けようかな」
そうつぶやき、雪音が居るはずのフォルダーを元が開くと、
「伝言だニョ!」
「…………へっ」
「読むニョ『想うところがあり、しばらく帰りません。捜しても無駄です、PC(ここ)には居ませんから、ニヤリ ――雪音』以上だニョ」
「……」
「あれ? 溶けちゃった。私はしらないニョ」
そんなことになっているとも知らず、二人は言い合いを続けていたが結局、雪音の「次に更新がされないと戻れない」の一言で決着がついた。
「……という訳で、姉上、ここの案内をしてもらえますか?」
「仕方ないわねー、それじゃ他の方達の所に、挨拶に行きましょ」
「挨拶回りですか?」
「ええ、そうよ。あなたも将来は、此処の住人になるんだから。でも、雪音……」
「何ですか? 姉上。」
「あなたは、微笑なくて良いわ」
「何故です! 私なりに特訓して、その成果が発揮できると思ったのに!」
「……特訓って (^_^;) 良いけど、あなた愛想笑いは嫌だって前に言ってたわよね。どうしたの?」
「父上の所に来たメールを見ると『姉上の笑顔にホッとする』といった内容が多いんです」
雪音の恥ずかしそうな感じが伝わってきた。
「私も、そんなメールを出してもらえるようなペルソナになりたい、そう思っただけです」
「雪音……、分かったわ、特訓の成果、私が見てあげるわ。さあ、微笑ってごらんなさい」
乙音は、感動で涙ぐみながら雪音を促した。
「はい! 姉上! ……ニゴリゥ」
「……うっ」
「どうですか姉上?」
「前より良くなっているけど、今回は控えなさい」
「……そうですか。帰ったら又、特訓します」
「がんばりなさい、すぐ良くなりますよ。さあ、それよりもそろそろ出かけましょうゥ」
「はい! 姉上」
乙音がドアを開くと、雪音は胸を張って第一歩を踏み出し…『ゴン』
「☆※□◎ △○!?」
「きゃ〜! 雪音大丈夫?!」
デスクトップエージェントの栄光ある第一歩は、小指をドアの角にぶつけることから始まった。
痛いんだよね〜これが (^_^;)
つづくの〜?!
【感想 From 元】
Nyaoさんから続けて頂きました,前作のショートストーリーの続編です!
前作がシリアスに終わっているだけに、このギャップの激しさがナイスです(^^)
雪音の恐ろしい微笑み……見ては見たいけど、見たら石化しそうで恐いですねぇ…
次回が楽しみです(^^)
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