なんか大変なのです。
僕の主人のアイリスちゃんはぐっすりと眠っています。
それだけが、唯一良かったなぁと思うことです。
すみれ:「お〜っほっほっほっほっほ〜〜〜」
この人はずっと笑い続けています。
さくら:「……………」
…この人は虚ろな目つきでジッと僕を睨んでいます、スゲ恐です。
米田:「大神ぃ〜、酒が足らんぞ〜」
大神:「たりまへんね〜」
かんな:「何でェ、どうするよ、隊長!」
この3人はだらしなく笑っています。
そうなのです。
今日の夕食、副隊長のマリアさんがちょっと留守をしているのを良い事に、米田のおじいちゃんと、かんなお姉ちゃんとで宴会が始まってしまいました。
そこに大神おにいちゃんが引き摺り込まれて、今や帝国歌劇団はただのタチの悪い酔っ払い集団に変貌を遂げているのです。
紅蘭:「おぃ、じゃんぽーるぅ」
あ…
紅蘭:「噂じゃぁ、夜に歩き出すそうじゃねぇか」
僕の頭を鷲づかみにして眼鏡のよっぱらいが僕を睨みます。ぬいぐるみの僕がそんな事出来るわけないじゃないですか。
天才科学者とか自分で言っておいて、案外オカルトを信じるのですね。
紅蘭:「何か言えよぉ〜」
ぽい
投げないで下さい。
ぼて
あ
かんな:「おりゃ〜」
ドゲシィィ!
ぐふぅ、沖縄カラテな廻し蹴りが僕のお腹にジャストミートなのです。
人間なら死んでます。
さくら:「……………」
ああ! この人、床に落ちた僕を凄い恐い顔で睨んでます,何々でしょう?!?!
すみれ:「ほっほっほっほっほ!」
こっちのお姉さんはそろそろ酸素切れで倒れそうですね。
かんな:「そういや、マリアの部屋に酒があったような気がするぜ」
米田:「何と?! 大神! 取って来い!」
大神:「鍵がありませんよ〜、えへへ♪」
隊長の威厳全くナシですね。
米田:「このドラクエで言うところの魔法の鍵をやる。これは度の扉も開ける事が出来る優れものだ!」
…プライバシーはないのですね。
大神:「一番、大神! いっきま〜す!」
かんな:「いよっ! アムロ!」
ああっ! 大神お兄ちゃんが走って行っちゃいました!
大神:「ゲット完了!」
あっという間に戻ってきました。片手には透明な液体の入った一升瓶です。
ラベルが張ってありますね。
…どうやらロシアのお酒の様です。
米田:「すぴりたす? 洋モノかぁ?」
かんな:「マリアの奴はそれをラッパ飲みしてたぜ」
僕は知っています。絶対真似しちゃいけないのです,ウォッカであるスピリタスは度数96度。火が燃えるほどの強いお酒なのですよ…あ、大神お兄ちゃんからおじいちゃんがそれを奪い取っちゃいました!
米田:「マリアちゃんと関節キスいっただき〜♪」
大神:「あ、ずるいっすよ,取ってきたのオレなのに〜」
米田おじいちゃんがラッパ飲みです…あ!
ぱたり
かんな:「あれ?」
大神:「年を気にせずに飲みすぎですよ〜、中将!」
げしげし
2人して白目を剥いて倒れた上司を足蹴です。酷いですね。
大神:「2番手、大神一郎! イッキ行きます!」
かんな:「ひゅ〜ひゅ〜」
ぱたり
かんな:「なんでぇ、だらしねぇな! 貰うぜ!」
ばたり
どうやら鉄の胃袋のかんなお姉ちゃんでも、マリアさんのロシアちっくな胃袋には敵わなかった様ですね。
すみれ:「お〜っほっほっほ…ほ…」
ばたり
ああ、笑い過ぎで倒れてしまいました。
ん?
バタン!
ぐぇ、何かが乗っかってきます、重い…
紅蘭:「ぐぅ…」
僕をまくらにしないでくだ…はっ!
さくら:「………」
ま、まだ睨んでいるのです。あれ?
さくら:「………………ぐぅ」
寝ていた様ですね。
ところでこの状況で黒乃巣会が攻めてきたらどうするんでしょうか?
マリア:「な、何があったの?!」
…黒乃巣会の方が良かったかもしれません。
マリア:「隊長! 大神隊長! …あ、コレは私のお酒! 勝手に部屋に入ったんですか!!」
大神:「……ん? おはよう、マリア,ぐふぅ!」
ボディブロー炸裂です。
マリア:「おはようじゃありません! おはようじゃ!」
大神:「ま、まて、話せば,話せば分かる…うぎゃぁぁぁ!!」
これ以上の惨劇を僕は正視できませんでした。
僕も眠ることにします,おやすみなさい…