よりベターに


 「よりベターに、ベターに進化するには…」
 「ラミア…」
 薄暗い四畳半のアパート。
 ちゃぶ台を前に、一人何かを口に頬張る青年に、金色の髪の女性は呆れ顔で尋ねた。
 「何をしている? ラミア??」
 「セーメか。よりベターに進化するために…」
 口を動かさず、互いに額のリビヒットチャネルを用いて意志の交換。
 がつがつ…
 ラミアはちゃぶ台の上のそれを、まるでアニムスの花の実を平らげるかのように次々に口へと運んで行く。
 「ラミア…それはベターではなくてバターではないか?」
 「そうだ。雪印だ」
 山と積まれたそれは雪印北海道バター248円。どうやら特売していたらしい。
 そんな彼の傍らには『ちび黒サンボ』の絵本が一冊。
 「…ベターにか」小さく微笑み、セーメは腰を下ろす。
 「ラミア…お前のそんな冗談だか本気だか分からない所もまた…好きだぞ」
 呟きながら、セーメはラミアの背にしなだれかかった。
 ラミアはバターを口に運ぶ手を休め、そんなセーメを見つめる。
 「セーメ…」
 「ラミア…」ラミアの胸に顔を埋める彼女。
 そんなセーメに、ラミアはゆっくりと言葉を紡いだ。
 「…何をベタベタしている?」
 「よりベターに進化するため」
 静まり返る四畳半。
 「ベタなオチだ」呟くラミアの言葉が、やけに大きく響いた様な気がする。


カンケルに滅ぼされてください