スターダスト プレゼント


 
 それは私達予科生がビアンカで訓練中に宇宙の彼方からやってきた物体と接触したことから始まりました。
 ビアンカの格納庫で私達は2mくらいの楕円形の物体を囲んでいます。
 「タイムカプセル、ね」
 「何だい、それ?」
 晶ちゃんの断定にジョジョが首を傾げました。
 「昔の人が自分の思い出を宇宙の周回軌道に飛ばして、数十年後に戻ってきたところを回収して昔を懐かしむんだよ」
 晶ちゃんは案外物知りです。
 「ねぇねえ、開けてみようよ!」
 「でもアリサちゃん、人のものを勝手に開けちゃ……」
 「だって見てみなよ、しーぽん。これ2010年って書いてあるよ」
 アリサちゃんが指差した場所にはこのタイムカプセルを発射したと思われる数字が刻まれていました。
 「346年前のものかよ、生きてる奴はいないだろ」
 「ファーストウェイブの前の話だね」
 ピエールの言葉に光太くんまでもが頷きます。
 「てなわけで、あけちゃおあけちゃお!」
 「ダメだってば、アリサちゃん!」
 私が止めるのも聴かずにアリサちゃんはカプセルの開閉ボタンを押してしまいました。
 ぷしゅー!
 音を立ててカプセルが開きます。
 「へぇ、レトロだなぁ」
 「でも今とあまり変わらない気もするけど?」
 光太くんの感想とやよいちゃんのそれとはちょっと違うみたい。
 「もぅ、知らないよー」
 言いながらも私も中身を覗いてみます。
 「わぁ」
 狭いカプセルの中には文集だとか紙で作った工作だとか、洋服だとかが入っていました。
 「あれ、これはなんだろう?」
 ジョジョが服らしいものを取り出しました。
 それは白地に紺色の襟がついている半袖の服。
 赤いスカーフがついていて、上着と対になるように紺色の短めのスカートも入っていました。
 「制服に似てるわね」
 やよいちゃんが言います。
 「うーん、これはセーラー服ね」
 「「セーラー服??」」
 晶ちゃんの言葉に私を含めたみんなが首を傾げました。
 「セーラー服っていうのは昔の海兵隊の制服よ」
 「海兵隊って……大海原を行く軍隊の?」
 「ええ」
 ピエールの質問に答える晶ちゃん。
 と
 「ジョジョ、アンタ……」
 アリサちゃんの震える声とその指差す先はジョジョです。
 なんとセーラー服を着始めているではありませんか!!
 「「やめんか!!」」
 「ぐへ!」
 男性陣の鉄拳制裁によってジョジョの野望は阻止されました。
 驚いたのは拳を振るったのはピエールと小田原くんだけではなかったことです。
 「こ、光太くん??」
 「あ、ごめん。なんか本能で許せなくて……」
 「「本能?!」」
 光太くんにそこまで言わしめるセーラー服というものは恐ろしいですね。
 「ねぇ、しーぽん?」
 「なぁに、アリサちゃん?」
 その時の私は、アリサちゃんがこんな恐ろしいことを言うとは思いもよりませんでした。
 「しーぽんに似合いそうだよ、このセーラー服っていうの」
 「え?!」
 「そうだね、しーぽんなら似合うと思うな」
 「着てみたらいかがですか?」
 「見てみたいよな、ピエール」
 「ああ、スゲ―見てみたい!」
 みんな、怖いほどの迫力で迫ってきます。
 「あの、えっと、私はちょっとそういうのは……」
 「ダメよ、しーぽん」
 やよいちゃんが諭すそうに言いました。
 「こういうのは若いうちにしか着れないんだから」
 「やよいちゃんもほとんど歳変わらないじゃないーー!!」
 「良いから着なさい!」
 アリサちゃんも迫ってきます。
 「は、はわわわわ」
 私は逃げ場を求める様に、彼を見ました。
 そう、彼なら助けてくれるに違いないんです。
 だっていつも正しいから。
 ね、光太くん?
 「うん、似合うと思うよ、しまちゃん」
 「はぅーーーー!!」


 「というわけで着替えてきました」 
 下手をすると短めのスカートで下着が見えてしまいそうです。
 スカートを両手で押さえながら姿を見せた私に、みんなが注目しました。
 「ちょ、そんなに見ないでよぉ」
 じっと無言で見つめています。
 ピエールと小原田くんに至っては目が血走っていました、走って逃げ出したいです。
 光太くんは……にっこり笑って親指を立ててくれました。
 意味は良く分かりませんが。
 そしてアリサちゃんに視線を移します。
 両手をうずうずと動かしています、嫌な予感がします。
 「しーぽん、かーわいいぃぃぃ!!」
 飛びついてきました。
 「いやー、変なところ揉まないでーーー!!」
 「良いではないか良いではないか」
 「良くなーい!!」
 萌え萌え状態だったアリサちゃんを引き剥がせたのは、それからしばらくしてからでした。
 「ねぇ、これはなにかしら?」
 再びタイムカプセルを覗いていたやよいちゃんが紺色の何かを取り出します。
 それはランニングシャツ……いえ、ランニングシャツの「つなぎ」みたいな形をしています。
 やっぱり着るものなのでしょう、股間にあたる部分はV字になっていて、かなり恥ずかしいです。
 胸の部分には四角い白い布が張ってあります。
 下着か水着でしょうか??
 「それはスクール水着だ」
 唐突な答えは私達の背後から。
 「あ、あなた達は……」
 やよいちゃんは4つのその姿に唖然とします。
 そこにいたのはビック4でした。
 「それはかつて日本にいた海賊として有名な村上水軍の兵士が身につけていた海中用の戦闘服」
 「『スクール』って言ったじゃないですか!!」
 「問題はそれを着るか着ないかと言うことよ、片瀬志麻さん?」
 「って、私ですか?!」
 「君のスペックなら問題無い」
 「訳分からないですよっ!」
 ビック4は変人が多いです。
 「そうね、しーぽんなら似合いそうね」
 「ちょ、やよいちゃん???」
 「着てみたら、しーぽん」
 「そうだよ、似合うよ」
 「絶対に似合うって!」
 晶ちゃん、ピエール、ジョジョまで言い出しました。
 おたおたする私の肩を優しく叩く人がいました。
 大親友のアリサちゃんです。
 「こうなったら着るしかないでしょ、しーぽん?」
 「だーかーらー、何で私なの?!?!」
 所詮、大親友なんて……
 私は最後の頼みの綱に助けを求めました。
 さっきは私の思っていたのとは違ったけど、本当に困った時にはきっと助けてくれるんです、彼は!
 私はすがる思いで光太くんを見ました。
 彼はとってもとっても優しい笑みを私に向けています。
 「こ、光太くん……」
 「僕も見たいな、しまちゃんのスクール水着姿」
 「はぅーーーーー!!!!」


 西暦2167年、地球は超新星爆発による巨大な電磁波と放射線のうねりに飲み込まれ、大きな被害に見舞われました。
 世界中の人たちが協力して立ち向かいました―――昔の皆さん、ありがとう。
 地球は元気です。
 私もなんとか元気です、今は西暦2356年。
 「体操着にブルマなんてものもありますよ」
 どこから嗅ぎつけやがったのか、校長先生がタイムカプセルからそれを取り出した時、私は退学覚悟で校長先生の即頭部に蹴りを入れたのは余談です。
 昔の皆さん、こんなものを残してくれなかったら、私はもっと感謝していたのに…と思うんです。

おわり


これはdaic氏の同人CDに投稿したものです。
製品の方にはナイスなしーぽんCGが添付されておるのですよ。