6:30 起床。 支天輪の向こうから味噌汁の香りがする。 月天様が朝食を作られているようだ。 誰か月天様に呼ばれたようだが、多分八穀じゃないだろうか? 6:31 そう言えば今日は宮内神社で祭りがあると言っていたな。 ま、オイラには出番はないだろう。 6:35 二度寝に突入。 8:00 八穀に頭を蹴られて目覚める。 コイツ、また寝ぼけてオイラのところに来てやがる。 蒲団が奴に占領された。起床する。 8:02 八穀がニヤニヤしながら眠っている。ウザイことこの上ない。 8:05 八穀が何やら寝言をブツブツ呟いている。 「女御ちゃんで双恋〜〜♪ 萌え〜〜」 うぁ、コイツ、女御萌えかよっ! 8:10 蹴っても起きない八穀を塁壁陣の巣に捨ててきた。 塁壁陣のやつ、腹をこわさなきゃいいが…… 8:30 離珠登場。 相変わらずデシデシ言ってやがる。 8:31 「大変でし、虎賁しゃん! 今日のお祭りでお神輿担ぐ人達が怪我したんだそうでし」 8:40 かいつまむとだ。 先日、宮内神社で祭りの予行練習として神輿を有志で担いだんだそうだ。 コースは本番である今日行う通り、境内から長い石段を降りて商店街まで行く予定だった。 しかし石段のところでバランスを崩してしまい、神輿ともども有志達も階段を転げ落ちた。 結果、神輿は壊れるわ、ほぼ全員がなんらかの怪我を負うわの大惨事だったとのこと。 唯一恵まれた点と言えば、死者や重傷者が出なかったことだろう(普通、死ぬぞ)。 8:45 「離珠たちで、お神輿担ぐでし! 出雲しゃんが可哀想でし」 何を言ってやがる、このお気楽娘が。 8:46 「神輿は壊れてるだろう?」 8:47 オイラの言葉に、離珠は羽林軍達を連れてきてやがった。 これはこれで、案外考えているのか? 8:48 「あんな重いもん、どうやって担ぐんだよ」 「…ちょっと待ってるでし」 8:49 今度は軍南門を連れてきた。あっさりついて来るな、この単細胞! 8:50 「衣装がなぁ。離珠、知ってるか? 祭りで神輿を担ぐにはハッピが必要なんだぜ」 「ハッピでしか……なんとかなるでし!」 言って、またどこかへ行きやがった。元気な奴だ。 8:55 軍南門と羽林軍達がお茶を要求し始めた。 ウルセー、裏の自販機でウーロン茶でも買って飲んでろ。 8:56 いや、支天輪の中に自販機なんかないから……ホンキで探すなよ、オマエら。 8:57 女御の2人と談笑しながら離珠帰還。 三人寄ればかしましとはこのことだろう。 8:58 「これで文句ないでしね、虎賁しゃん」 「観念するしかないね、虎賁」 いつの間にか八穀復帰。オイラの隣でニヤニヤしてやがる。 塁壁陣のよだれ臭いぞ、オマエ。 8:59 「……あー、しっかしなぁ。そうだ、南極寿星のじいさんが黙ってないだろ。オイラ達 星神が勝手に動いちゃイカンってさ」 9:00 突如、背後に生まれた全身を貫くような緊迫感に、一同身構える。 振り返るとバックライトで照らされた北斗七星登場。演出過剰だ。 コイツら、出番が少なすぎて相当鬱憤が溜まっているようだな。 「離珠にぬかりはないでし」 オイラの隣で呟く奴の顔が一瞬、悪女に見えた。 確かにコイツらならば南極寿星のじいさんに拮抗しうるが……ここまでやるか? 9:05 太助の代ではまったく出番のない北斗七星達がオイラ達に向かって吠え始めた。 「諸君、我々は祭りを、地獄の様な祭りを望んでいる」 「諸君、我々に付き従う支天輪の戦友諸君」 「君達は一体、何を望んでいる?」 「更なる祭りを望むか?」 「情け容赦のない、糞の様な祭りを望むか?」 「鉄風雷火の限りを尽くし、三千世界の鴉を殺す、嵐の様な祭りを望むか?」 奴らは『ヘルシング』の読み過ぎだと思う、鬱だ。 9:06 するとオイラ以外の星神達は一斉に、ガガガガ、ガガガガッと右手を上げた。 どこぞの親衛隊のように。 「「祭り!! 祭り!! 祭り!!」」 ユニゾンする。みんな、ノリが良すぎるぞ? 9:07 「よろしい、ならば祭りだ」 満足げに北斗七星のリーダー格、破軍が言った。 「征くぞ、諸君」 9:10 「出鼻をくじくようで悪いが」 言っておかななければならない。 「オイラ達のサイズで、どうやって神輿なんかを担ぐんだ?」 みんながみんな「しまったぁ」という顔で硬直している。 気付けよ……。 9:19 支天輪の外から水が落ちてきた。 なんだなんだ?? オイラたちは顔を出してみた。 9:20 キリュウの姐さんが支天輪の外で「良い話だ」とか言いながら涙ぐんでいる。 盗み聞きか? きっとこの人は『シベリア超特急』を面白い映画だと言うに違いない。 9:30 「万象大乱!」×58 万難地天キリュウの力によって、オイラ達は人間のサイズになった。 月天様と南極寿星のじいさんにバレないうちに宮内神社へ移動だ。 10:00 宮内神社到着。 境内までの長い石の階段には、出店が並び始めていた。 準備で忙しい社務所へ向かうことにする。 10:05 「うぁぁぁ!」 宮内出雲が驚いている。いや、2度目だろ、この姿を見るのは。 「今年は神輿は中止しようと思っていたのですけれど」 「何だ、オイラ達の出番はないってことか……と離珠は言ってる」 「いえいえいえ! 手伝っていただけるのでしたら、宮司の私にとってはこれ以上 嬉しいことはありません!」 そう呟く宮内出雲の視線の先には、ぼろぼろに壊れた神輿が置いてあった。 10:06 「なぁに。オイラ達の手にかかれば、あっという間に直るぜ。な、羽林軍?」 頷く羽林軍達。 「……って、離珠が言ってるぜ」 付け加えておいた。 10:07 宮内父&母登場。 「ありがとうございます」 「よろしくお願いね、離珠ちゃん」 「いつも美味しいお菓子をいただいているお返しだよ、って離珠は言ってるし、 オイラもそう思ってる」 それを聞いた2人は優しく笑った。 オイラ達、星神は恩は忘れないのだ、うん。 10:08 そんなオイラを見ていた八穀が後ろでニヤニヤしている。 あとで絞めてやる。 10:10 「これが神輿のルートです」と宮内父が差し出すのは町内地図。 「早速、神輿担ぎの取り纏め役を呼び戻しましょう。手順などは私よりうまく 教えてくれるはずです」と、こちらは宮内。 「怪我したんじゃないのか?」 「運良く無傷だったのよ」 オイラの質問に宮内母が嬉しそうに答えてくれた。 10:11 「さて、じゃ、そいつが来る間に神輿を直しちまおう、頼むぜ、羽林軍」 「「おー!!」」 10:30 とんてんかんてん 羽林軍の修理の音が境内にこだまする。 11:00 「「完了!!」」 「おつかれ」 神輿の修理は完了した。うん、良い仕事してやがる。 11:01 八穀が離珠とともに木陰で寝ていた。無論2人まとめて蹴り起こす。 11:05 「よっ! なんだか面白いことになってるな」 奈那姉登場。 宮内神社のハッピを着ている。 11:06 「神輿も直って、メンツも揃って、言うことなしだね、こりゃ」 「もしかして、神輿担ぎの取り纏め役ってのは……?」 「アタシだよっ! 今日は気合入れていくぜ」 適任といえば適任だと思うが、宮内の野郎、先に言っておけよ。 11:10 神輿を前に、奈那姉は両手に持っていた大きな袋を広げた。 中からは仕出し弁当がどっさり。 「祭りは4時からだからね、とりあえず早めの昼飯を兼ねたミーティングといこうか」 オイラとしては、月天様に見つからないルートを通って欲しいと願うばかりだ。 14:00 境内で思い思いに過ごす。 羽林軍達は出店や屋台の準備を手伝っている。気の良いやつらだ。 14:30 八穀が女御達をストーキングしていた。 背後から延髄切りを食らわせて黙らせることにする。 15:00 離珠が、祭りの準備に追われる宮内出雲をずっと遠めに眺めている。 いつもの離珠らしくない。 15:30 奈那姉がどこからともなくバスケットボールを調達してきてオイラを挑発した。 仕方ない。いっちょ、軽くもんでやるか。 15:55 「さぁて、準備は良いかい?」 「「おー!!」」 奈那姉の掛け声の下、オイラ達は答える。 奈那姉とのボールの奪い合いには勝ったが、オイラの息は絶え絶えだ。 比べて奈那姉はケロリとしている。一体どうしたことだ??? 16:00 ぽん、ぽん 神社の上空に、祭りの開始を表す音だけの花火が鳴った。 16:01 「わっしょい!」 「わっしょい!!」 巨大なうちわを扇ぎながら先導する奈那姉に従って、神輿を担いだオイラ達はまずは 境内に踊りこむ。 16:05 「わっしょい」 「わっしょい」 境内から長い石段を降りていく。 予定ではこの後、町内を練り歩くはずだ。 16:10 石段を降りきった。 見物人達の何重もの輪で、オイラ達は遠巻きに囲まれている。 なんとなく気持ち良いものだ。 16:20 「わっしょい!」 「声が小さくなってきたぞ!」 奈那姉の叱咤。 「わっしょい、わっしょい!」 北斗七星のやつらが、一番元気だ。 普段から鬱憤溜まっていたみたいだしなぁ。 16:40 「わっしょい!」 「わっしょい!」 いつのまにか近所のガキどもも混ざってきた。 やれやれ、これで少し手が抜けるな。 17:30 「わっしょい、わっしょい!」 宮内神社に戻ってきた。 今ではこの神輿は、見物人の列をオプションにつけて、ノリの良い中途参加者達も 加えて結構な人数が揃っている。 「ほらほら、後少しの辛抱だよ!」 奈那姉の怒声が飛んだ。 17:50 境内で、神輿を神主である出雲の元へ奉納する。 「みんなお疲れ!」 奈那姉の〆の言葉に、さすがにオイラ達はその場で座り込んでしまった。 周りから拍手と労わりの声が届く。 18:00 「今日はありがとうございました」 いつも見たことのないくらいの神妙な顔で出雲再登場。 「今年の神輿は中止する覚悟でした。それをしっかりと果たしてくれて、お礼の言葉 もありません」 こうしてみると、出雲は出雲なりにちゃんと神主の仕事をしてるんだなと思う。 18:05 宮内父母登場。 「おつかれさま、ありがとうねぇ」と宮内母。 「お礼といってはなんだが、どこの屋台でも君達にはただでだしてくれるように話を つけておいたよ」ナイスだ、宮内父! 18:06 「それじゃ、たっぷり楽しみましょうかぁ!」 「「おー!!」」 奈那姉の号令の下、オイラ達は出店の並ぶ境内へと駆けていった。 18:08 おっと、忘れ物だ。 オイラはどこかボーっとしている離珠を捕まえて、神社へ急ぐ。 18:10 「おや、どうしました?」 出雲発見。 18:01 「お前、もう仕事終わったんだろ?」 「ええ、まぁ。あとは片付けだけです」 「なら、今度はオイラを手伝ってくれ」 「??」 18:02 オイラは離珠をぐいっと出雲に押し付ける。 「じゃ、離珠の子守りはお願いするぜ!」 「え、ちょ、ちょっと!?」 さっさと退散だ。 18:03 2人から見えなくなったところで奈那姉に捕捉された。 18:04 「ふっふっふ〜」 「な、なんだよ、無気味な笑いだな」 奈那姉はオイラの首に腕をまわして小脇に抱えながら言い放つ。 「じゃ、アンタの子守りはアタシがしてやるよ」 「いいよ、離せよー」 「遠慮するなよ」 18:05 木陰で八穀は一部始終を見ていたらしく、ニヤニヤしている。 あとで絶対〆てやる。 18:10 まぁ、せいぜい祭りを楽しむとしよう。 今日はこの辺で。 |