男:主人公 兼 ナレーター
女:喧嘩腰
他:×2
BGM:無音
男>俺の名は田中健治。
24にして海外に10店舗の大きな会社を築いたがバブルがはじけて、後には
5億程の借金が残っちまった。
へっ、俺の人生、もうだめだ。死ぬときくらい俺の名を日本中に響かせてやる。
サンシャイン60から飛び降り自殺,これで明日の新聞の表紙はいただきだ!
BGM:風
男>ふう、やっぱり風が強いな〜。
さて、警備員もノしたことだし、さっさと事を済ましちまおうか。
俺の人生の最後に美しい死に場所を・・・
ん? 何だお前は? フェンスの外で何してる! 俺より先に死ぬんじゃねぇ!
女>何よ、あなたは! 私の美しい人生の1頁を邪魔して!
サンシャイン60から飛び降り自殺、薄幸の美女の謎ってのが明日のスポーツ
新聞の見出しなのよ!
男>俺が先に死ぬ! 2番煎じなんて真っ平だ!
女>それはこっちのセリフ! 何者よあなたは!? 私そっくりの顔して!
男>俺のこの顔は生まれつきだ! お前こそ俺の顔そっくりに整形してんじゃねぇ!
女>何よ! この朴念人!
男>なんだと! このアバズレが!
BGM:ノリの良い曲(Vol:中)
男>潔い人生の1ページに、この俺にそっくりな女との悪口雑言合戦がかなり長いこと
記された。そしてこいつとの出会いで俺の自殺計画は大幅な変更を余儀なくされる。
BGM:ノリの良い曲(Vol:小)
女>ふぅ、これじゃ埒があかないわね。
男>ああ、そうだな。では何か賭をして勝った方がこの権利を得られるということに
したらどうか?
女>いいわね。賭の内容は何にしましょうか?
男>そうだな、どちらがどれだけ不幸な人生を歩んできたかというのはどうだろう。
女>いいわね、自信があるわよ。そちらからどうぞ。
男>おう、俺はな・・・
BGM:ノリの良い曲(Vol:中)
男>俺は人生空回りの連続で現在に至る話をした。
俺の失敗と裏切り、そして腐った人間関係をしかしながらこの女は軽く笑い飛ばす。
BGM:ノリの良い曲(Vol:小)
女>そんなんで不幸だって言うの? 聞いて呆れるわ! 私の話をおとなしく聞くのね。
BGM:ノリの良い曲(Vol:中)
男>俺の話を聞き終わると彼女は身の上を語り始める。
空白:2sec
男>彼女の名は衣川陽子。歳は俺と同じ24で売れない歌手をしているという。
彼女の不幸は仕事上のトラブルと今まで頼りにしてきたスポンサーに裏切られたこと
だという。ま、俺に比べリゃ子供のようなものだ。
空白:2sec
男>例によって勝負は決着が付かなかった。再び始まる悪口雑言の後、彼女はこんな提案
をした。
BGM:ノリの良い曲(Vol:中)
女>これから1年、生きてみましょう。それでどちらがどれだけ不幸になっているかで
勝負を決めるってのはどう?
男>ふふ、おもしろい! では1年後のこの場所この時間で合おう! 抜け駆けは許さんぞ!
女>それはこちらのセリフよ! 首をくくって待っていることね、不幸にかけては私の右に
出るものはいないわよ。
BGM:フェイドアウト
空白:3sec
BGM:風
男>1年後、俺はあの場所あの時間へ帰ってきた。あの女はフェンス越しに俺を待っていた。
女>待ってたわ、田中健治、あんたも立派になったものね
男>よく言うぜ、経済新聞ではお前の名前がないことがないじゃねぇか
BGM:ノリの良い曲(Vol:中)
男>俺はあの後、最も自分に似合っていそうもない芸能界の門を叩いた。
しかし俺の予想に反していつの間にやらトップアーティストの座をつかんでいたのだ。
それに反し彼女は不得意と思われる事業に手を出したそうだが、これもうまいとこ風
に乗り、今では揺り籠から棺桶まで作る衣川財団を確立した。
女>この賭、私の勝ちね。
男>なんだと、お前の方が俺よりいいだろ! この勝負俺の勝ちだ! 俺が先に死ぬ!
女>私よ!
男>俺だ!
BGM:フェイドアウト
空白:2sec
男>長々と討論の挙句俺は一つの案を出した。
空白:1sec
男>そうだ、入れ替わってみよう。それで俺の不幸がお前にも分かる!
女>ほほう、私の不幸を存分に味わってみなさい!
男>俺たちはそれぞれの状況などを事細かに知らせ合い、入れ替わりに成功した。
長髪のかつらを被れば、姿形がそっくりなので誰も疑うことはない。
そして俺はいつの間にやら彼女の会社で経営の手腕をフルに発揮していた。
再び1年が過ぎた。
BGM:ハイな曲
男>牛肉だ、牛肉を一点買いしろ! そうだ、それみろ値が上がってるぞ!
今日は何日だ? ん? おい、私は用を思い出した。後は任せたぞ。
BGM:フェイドアウト
BGM:軽い曲
女<やっぱり私の勝ちのようね
男<彼女はいつもの通りフェンス越しに俺を待っていた。
男<馬鹿言うな、俺の勝ちだぜ。あんな楽しい暮らしをしやがって。
女<あなたこそあんなにおもしろい生活のどこが不幸なの?
男<再び悪口雑言が続く。その時だった。
他<畜生! 死んでやる!
他<逃げたぞ! 追え!
男<1人の男とそれを追う警官隊が俺たちの目の前を通り過ぎる。
男はそのままその身をフェンスから投げ出した。
BGM:フェイドアウト/ラスト曲へ徐々に出だし
男<あっ!
女<ったく、あなたがぼけぼけしてるから先を越されちゃったじゃない!
男<お前がいけないんだろ! どう考えても俺の勝ちだ!
女<私よ!
男<俺!
女<私だったら!
男<俺だって言うの! よし、じゃあ1つゲームで決めようぜ!
BGM:ラスト曲へのボリュームへ移行