ボクとカノジョの事情



 「ねぇ、もしも私が死んだら、どう思う?」
 「悲しいな」
 「ホント?」
 「ウソだと思う?」
 「……じゃ、もしも私がすでに死んでいたとしたら、どうする?」
 「じゃ、君なんだい?」
 「ユーレー」
 「ほぅ」
 「ね、どうする? 私は貴方が心配で成仏できないの。でも私は死んでしまっている。もしもそうだとしたら、どうする?」
 「認めない」
 「へ?」
 「認めない。それだけだよ」
 「悲しい?」
 「いや、認めない。君が死んでいるなんてことは絶対に認めない」
 「……そっか。うん、そーだね」
 
 時々思い出したようにそんなことを俺に尋ねるカノジョ。
 ここ数十年というもの、まったく歳をとっていない。
 けれども、俺は決して認めない。

おわり