「ああ! あれはぁぁぁ!!」美少女を見るときは視力が5.0までアップするアレーレのその瞳に写ったものは、天下の往来で彼女をして周囲の目を引くほどの驚きの声をあげさせたのである。
アフラ様、ご乱心?!
例によって本人はちっとも、ご乱心してません
「たたたたた、大変ですぅぅ!」転がりながらロシュタリア王宮に転がり込む美少女。
「どうした,アレーレ? 騒がしいぞ」
「一体何があったと言うのですか?」テラスで紅茶を味わう2人の王族は、いぶかしげに彼女に尋ねる。
「はぁはぁ…、ア、アフラ様が…」言いながら、ルーンに差し出された紅茶を一気に飲み干し、
「アフラ様が中本工事似の、おじさんと楽しげに城下を歩いているのを目撃してしまったんですぅぅ!」
「「緊急会議です(だ)」」
「そんなことで呼び出したんですか?」言い、誠は溜め息一つ。
「そんなことだと? 誠、事の重大さを分かっているのか?!」いつになく熱血な藤沢先生。
「このエルハザードにも援助交際という魔の手が忍び寄っていると言うのに!! 教育者としてこんなことを見過ごすわけにはいかん,ね、校長!?」突然振られたストレルバウは、いつになくうろたえる。
「いや、まぁ…そのなんだ,まさしく、藤沢殿の言う通り! アフラ殿は風の大神官と言えどまだ17歳!」力説するストレルバウ。
「どこぞの中年が手を出す前にこのワシが…」最後の呟きは運良く他の者には聞こえなかったようだ。
「見間違いと違いますか? アフラさんは裕福な代々神官の家柄ゆうじゃありませんか,とてもお金に困っているようには…」アレーレに言うというよりは、皆に言うように誠。
「甘いわね、まこっちゃん。万引きと同じで何もお金が欲しいからやるんじゃないのよ。アフラさんの場合、毎日毎日変わることのない、退屈な神官の生活,厳しい戒律,そして就学と修行、この逃れられない永遠に続くと思われるようなサイクルから抜け出したくて援助交際に走ったのよ!」彼女のその手には週刊エルハ婦人という週刊誌が。
「…ナナミ、目ガおばさん」ウーラの呟きに危うく誠は頷くところだった。
「取りあえず、そうと決まったことでもないんですし、調べてみるというのは…どうでしょう?」
「うむ、わらわもその意見に賛成じゃ。あのアフラが援助交際などするようには思えぬ」ルーンの提案に珍しくファトラも同意する。
「ではロンズを呼びましょう…」手を叩こうとするルーンを無言で制する者がいた。
「その調査、適任と思われる男がおります。趣味を通じて知り合った者ですが」不敵な笑みを浮かべたストレルバウは指を鳴らす。
「るるるる〜♪、ふふふん、ふんふんふん…♪」
「ど、どこだ!」身構えるファトラ。しかし姿はなくともどこからともなく鼻歌がこだまする。
「歌は良いねぇ」
「うわぁぁ! 耳に息をかけんといてや!」誠の後ろに白髪の青年が突如出現した。現れた男から飛び退く誠,うっとり見つめるルーン王女。
「ストレルバウ博士の呼び出しにより参上しました,私立探偵ガレスと申します」言いながらキザに敬礼。
「ガレス君は幻影族でのぅ,尾行にはもってこいの能力の持ち主じゃ。ふぉーすちるどれんとも呼ばれておる」
「でもぉ、逆にアフラさんが危なくありませんか?」いち早くガレスの危険度の高さを察知したアレーレが言う。しかしガレスはそれに、ストレルバウと同じような危ない笑みを浮かべて答えた。
「ふふふ、大丈夫ですよ。私の興味の対象は美少年のみ…」
「ロンズ,この者を牢へぶち込みなさい」
「「はっ!」」間髪入れずルーンの合図によりガレスは、アメリカ軍によって捕獲された宇宙人のさながらに、ロンズの率いる2人の屈強な男によって移送された。
「るるるるるぅ〜♪ 私が一体何をしたぁぁ♪」
「ふっ、ちょっとでも、良いかな? なんて思った私が馬鹿だったわ」
「姉上? 何か?」
「いえ、何も。ところでストレスバウ? ガレスとは趣味で知り合っただとか何とか言ってはおりませんでしたか?」猜疑の目が学問の最高権威者に注がれる。
「何をおっしゃいます! 民族衣装と言う点でですよ、ふぉっっふぉっふぉ!」何の民族衣装だ,ストレルバウ?
「ともかく! ここはですねぇ、生徒の気持ちを」
「ほんとに見たんですってば!」
「大神官、モラルに反して中年男と駆け落ち,この記事は売れるわ!」
「ああ,もう、みんな好き勝手にぃ! こんな時にシェーラさんとミーズさんはどこに行ったんや?!」
「…マコト、諦メロ」
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「まんぼう…」喧騒の中に呟き1つ。
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その頃、アフラは…
「よう、アフラ! おやじさんとは会えたか?」王宮前でアフラはよく聞くその声に呼び止められた。
「ええ、元気やったわ。ほら、これミーズ姉さんに美容に良いって噂のローバグゼリー。シェーラには東方伝来のハリセンいう武器を…」それぞれに手渡すアフラ。
「いつも変わったものを差し入れてくるわねぇ。ありがとう」受け取り、ミーズは微笑む。
「おやじさん、神官じゃないのか?」ハリセンを振り回し、赤毛の少女は尋ねた。
「商人や、昔から2年に1度くらいしか会えんさかい、つい話し込んでしもうたわ。昔は体操の選手だ何だと言うとったから、神道とは縁がなかったのかも知れんなぁ」
「ということはアフラは母親似ね。似ていなかったもの」
「そうかもしれんどすなぁ…」呟くようにアフラは遠い地の母を思いやる。同じような気持ちにミーズも、親の顔を知らないシェーラも味わっていた。
そのほのぼのとした空気はまるで、嵐の前の静けさだったと炎の大神官シェーラ・シェーラは後に語っている…。
〜Fin〜
元 : 不特定多数なアフラファンの方、ごめんなさい。ガレスのファンは…いないだろうなぁ。
相変わらず方言の口調が変です、それと渚ファンも怒らせてしまうかな?
ストレルバウ : お色気はどこへ行ったぁぁぁ!
元 : 博士、そればっかですねぇ。
ストレルバウ : それこそワシがワシである証じゃ。
元 : そ、そうですか…(このじじい、近頃開き直ってきたな)
ストレルバウ : しかしアフラはファトラに付け狙われることがないが、何故じゃろうか?
元 : そうですよね、どうしてなんでしょ? これを書いていてもファトラが何故か
冷静な側になってしまいましたし。扱いにくいキャラなんじゃないですかねぇ。
ストレルバウ : そんなもんかのぅ、取りあえず、次こそお色気を出すのじゃぞ!
元 : へいへい…