それはいつの頃からあったのか…
 ロシュタリア王宮の地下およそ20mあまりのところに「王の間」並みの空間があった。
 そして、永くネズミ以外の生物をその内に踏み込ませなかった大きな地下室に、1つの大きなテーブルを囲んで、3人の人影が集っている。
 「ここに集まって他でもないわ」年長者と思われる、水色の髪の女性が口を開いた。
 「ああ、分かってるよ。それはイフリータがいた頃から感じていたことだ」赤い髪の少女は苦い顔で返す。
 「そう、エルハザードで最強と言われたはずの私達! その地位と名誉を何としてでも取り戻すのよ!」やや、ヒステリー気味に年長者の女性,ミーズ=ミシュタルは叫んだのだった。



最強伝説〜その第一歩




 「イフリータやイフリータU,さらにカーリアといった固体レベルでうちらよりも力を持つ者が、これから現れないとも限らんどす。特にTVでは第2段が始まってますますその可能性が高まってきてる…ここらでうちらもどこぞのヒーローものみたいに都合よくパワーアップする必要がおますな!」だん,机を叩いてアフラは力説した。
 「都合の良いパワーアップ,最重要課題ね」机にひじを突き、組んだ両手で口元を隠すミーズ。何故か薄笑いをしていたりする。
 と、シェーラが、ぽんと手を叩く。
 「…よく、目の前で知り合いが死ぬのを見て、怒りと悲しみで眠っていた力が覚醒する,なんて話が多いよな」
 …一同沈黙…
 「…ありもしない潜在能力に頼るのはどうかと…」渇いた笑いを小さくあげて、アフラは一触即発の沈黙を破った。
 「そ、そうだよな,ははは…」と、こちらも渇いたシェーラ。
 「良いアイデアだとは思うけど…2人が言うんじゃしょうがないわね」残念そうにミーズは呟いた。誰を犠牲にしようとしていたかは、未だもって不明という。
 「うちはイフリータやカーリアよりも強い者が出てくる可能性は薄いと思うどすえ。よく少年マンガである話で…」
 「ああ,あんまり強いとその内、宇宙に出てさらには死後の世界にも行っちまう可能性があるからな! いくら神秘の世界言われてるこの世界でも、そこまで酷いことは起んねぇよ!」何の話だ? シェーラ!
 「サ○ヤ人に修行してもらうっていう、そのアイデアも悪くないわ」しかしミーズの呟きは無視された。
 「1つだけ、最も効果的な方法があるんどすわ」身を乗り出して、アフラは2人に持ち掛けた。
 「うちらはもうこれ以上法術が強くなるとは思われえへんどす,そこでうちがこれまでの戦いから考えた案があるんどすが…これにはうちらのチームワークが必要どす」
 「なんだよ、勿体つけねえでさっさと言えよ」促すシェーラ。
 「異なる宗派の法術の混合,すなわち合体技どす!」
 「が、合体技!」明らかに嫌な顔をするシェーラ。
 「ま、合体…」何故か顔を赤らめるミーズ,何を連想していたのかは、やはり今をもって不明という。
 「じょ、冗談じゃねぇ,あたいが体が硬いことは知ってるだろ!」
 「「は?」」アフラとミーズはシェーラの言葉に首を傾げる。
 「だってよ、変形するんだろ! 六神合体とか叫びながらよぉ!」6人いるのか?
 「…シェーラ、あなた…一度変形してみたい?」額にひし形を6つくらい浮べてミーズはシェーラにせまる。
 「ミーズ姉さん,これは天然と言うことで!!」必死にアフラはミーズを後ろから引き止めた。
 「取りあえず、うちが誠はんからヒントを貰って考えついたものがあります,ミーズ姉さん、水の球を空中にお願いしますわ」
 「…えい、こうかしら?」テーブルの上に直径10m程の水の球が瞬時に現れる。
 「そこに、シェーラ,思いっきりあんたの炎の法術でこれを吹き飛ばして!」
 「おう、うりゃあああ!!!」水の球を炎が包み込み、瞬時に熱湯に,そして…
 ごぅぅぅん!!!
 大音響とともに天井が崩れ、三神官達は圧力で壁まで吹き飛ばされる!
 「うきゃ〜」
 「なになになに??」
 「成功どすぇ,秘儀・水蒸気爆発!!」
 「こんなところでやる技じゃねぇぇ!」



 …その頃、地上では…
 「何じゃ、これはぁぁ!」
 「まぁ、ジーパン刑事のものまねでしょう,ファトラ?」
 「んなわけあるかぁぁ!」3時のティータイムを楽しんでいたファトラとルーンの足元が大音響とともに崩れ、2人は落下していった。
 原因不明の地盤沈下による被害はロシュタリア城の3分の1を壊滅に陥れ、幕を閉じたと言う…。



 「世界平和の為とは言え、大きな被害ね」額にバンソーコーを張ったミーズは夕日をバックに丘の上から崩壊したロシュタリア城を眺めていた。
 「ちょっと失敗だったな」と腕にギブスをしたシェーラ。ちょっとどころではないが…。
 「ほな、第2のアジトで作戦を練り直しましょか?」不思議なことに無傷なアフラの提案に3人は歩き出した。
 第2のアジトのある…東雲食堂の地下へと…

 「勝ったのは、あたいらじゃない,農民達さ」何か訳の分からないことを言うシェーラ達の背中は沈み行く夕日に向かって小さく小さくなって、いずことなく消えていったという。



再凶伝説…その第2歩へつづ…


 「続いてたまるか!!」(ファトラ談)


最強(再凶)伝説〜その第1歩…お・わ・り