「できたぁぁぁぁ!!」 薄暗い研究室,老人の声が上がった。
 その喜びの声は、まるでフランケン○ュタインを作り出した時の某博士の声を彷彿とさせていたという…


渚のア・ナ・タ

TV2の設定です,精紳汚染されないよう…



 狂った科学者は自室を出、ロシュタリア城の廊下を徘徊する。
 程なくして、彼の目に通路の向こうから一人の女官が歩いてくるのが入った。
 ニヤリ,カーリアすらも恐れるような邪悪な微笑みを浮かべる老人。懐から何かを取り出す。
 「ちゃららちゃっちゃ〜ん,ミエールメガネェ,これをかけると何と! 服が透けて見えるのじゃぁ!」
 廊下に小さく響く声。聞くものはいないが。そして老人はやってくる女官に視線を向けると…
 「ターゲットロック,うりゃ!」
 スチャ,眼鏡を掛ける! と、その目の前に見てはいけないものが写る。
 「通路の真ん中で、如何いたしました? 博士?」 男の声が頭の上から聞こえてくる。ストレルバウの立つ通路の横から出てきた、城の巡回をしているロンズである。
 「博士? 博士!?」
 老人は立ったまま気を失っていた。



 「…という訳じゃ」 一世一代の発明品をロンズに解説するストレルバウ。
 「…博士」 ロンズは言って、溜め息一つ。
 「さすがは学術顧問であらせられる!!!」 歓喜の表情。
 「おお! 分かってくれるか,ロンズ殿!!」
 「もちろんでございます,不祥ロンズ、博士の実験をお手伝いさせて頂きます!」
 「ぐふふ…お主も、好きよのぅ」
 「「ぐふふふふふふふ…・・」」
 と、2人の目の前を女官が2人通り過ぎる。
 「ともかく、テストと行きますか?」
 「そうじゃのぅ」 女官の後ろ姿を見送りながら、2人の獣が頷き合う。
 スチャチャ,装着の二人。
 ゴロゴロゴロ…
 突然に黒雲が空を覆った。
 ガガン!!
 雷が二人と女官の間に落ちる!!
 「「??!!」」
 「ダ〜ル,ナルシィ〜スゥゥゥ!!」
 きゃしゃ〜ん,2人の前でポ−ジングするナルシストが一人,突拍子もなく出現した。
 黒雲が現れたときと同じに急速に晴れる頃、
 二人の彫像の前でひたすらポージングするダル=ナルシスの姿があった。



 「何でも透けて見える…と?」 ダルは信じられないものを見るように、その眼鏡を手に取った。
 「そうじゃ、何でも,な。ところでロンズ殿,そういえば菜々美殿やシェーラ殿は?」
 「皆様、藤沢様の提案で海へ行きましたが」 思い出す様にして侍従長は答えた。
 「ルーン殿下やファトラ様は?!」
 「ええ、殿下も羽を延ばした方が良いと思いまして連れて行ってもらいました」
 「クァウール…も?」 尋ねるダル。
 「ええ,誠様が行くというので」
 数瞬の沈黙…それを破ったのは年の功でもあるのか,老人だった。
 「行くかの? 海へ」
 「「師匠と呼ばせて下さい!!」」
 野獣3匹,海へ…



 灼熱の太陽が眩しい程の光を青い空から投げかける。
 ザザン,潮の香りと波の音。
 爽やかなその風景の中に、ややピンク色がかった闇を纏う3人の男の姿があった。
 「おったぞ!」 ストレルバウは誰よりも早く、数百m先の砂浜で各々遊ぶ美女達を発見する。
 老眼など何のそののようだ,目が血走っている。
 「師匠,双眼鏡です」 恭しく手渡すダル。
 「「「うひひひひ…」」」 構える三人。同時に覗く。
 「あれれ? 博士にロンズさん,ダル皇帝まで…いらっしゃってたんですか」 男の声と最も見たくない映像のドアップが3人の視覚を焼き尽くした。
 「「「うえっぷ」」」
 「どうしました? あれ? 皇帝まで…」 ブリーフの水着な藤沢は、顔が青い3人をただ、見下ろすしかなかった。



 「藤沢殿,実はのぅ…」 説明するストレルバウ。しかし…
 「いけません,教師という聖職者たる者、許しません!!」
 「これはあくまで学術的な実験じゃよ」
 「うむ、これによりロシュタリアの科学力は数段アップすることだろう」
 「学術の実践,これこそがモノを教える立場の者が最も優先して行う事ではないのか?」
 三者三様の理論展開,しかし根底にあるものはもちろん同じ物だ。
 「むぅ…」 唸る藤沢。そして意を決してこう言った。
 「では私を!!」
 「「「誰が見るかぁぁぁ!!!」」」
 「ミーズを,いや、いたいたけな生徒達の素肌を見るとは言語道断!!」
 「いや、ミーズ殿は遠慮しておく」
 「あ、わしも」 ストレルバウとともに頷くダル。
 「それはそれでカチンときますね,仕方ありません、どうしてもと言うのなら、私を倒してからにしなさい!!」
 男・藤沢真理,ここに立ちはだかる!!



 「藤沢殿,結婚して、変わられましたな。同志と思っていたものを…」 ゆらり,藤沢の前にロンズが立つ。
 「しかし今のお主は我らが野望を邪魔する幻影族やバグロム以上の敵,消えてもらうぞ! 死ね,男奥義・ジョーを倒しきれなかったコークスクリューパァンチ!!」 飛び散る汗がキラリ,光る。
 回転するロンズの手首が余りの回転数に見えない。男奥義,それは真の男のみが使用し得る究極の奥義である。
 「なんの!! メンズバリアー!!」 両手を広げ、何かを自らの周りに展開する藤沢。
 ビシィ,ロンズの拳は見えない壁にぶつかり、男臭い汗を白い砂浜に散らした。
 メンズバリアー,男レベル7で修得の男臭い汗を大気中に発散させ、不可視の盾を作るというA×フィールドをも越える究極の防御技だ。
 「チィ,やりますね、藤沢殿!」
 「どいておれ,ロンズ殿。このワシが直接相手してやろう」
 ズィ,ロンズを押しのけ、老体ストレルバウが藤沢に向う。
 「藤沢殿,よもや男臭さでこのワシに勝てるとでも思うておるのか? 燻し銀のストレルバウ,参る!」
 「クッ,早い! この力は!!」 急速接近するストレルバウ,老人とは思えないその素早い身のこなしは、無限に湧き出るという伝説の力を用いている。
 すなわち、エロの力…
 「究極奥義・入れ歯の吐息ぃぃ!!」 藤沢の懐に飛び込むストレルバウ。
 「ぐっはぁ!!!」 のけ反る藤沢。入れ歯の吐息,男レベルが40以上であり、さらに必須条件として50歳以上であることで始めて行使が可能な奥義中の奥義。
 その後ろではダル=ナルシスがひたすらポージングをしている。
 特殊職業であるナルシストレベルが20以上で使える技だ。敵の集中力を極端に減退させるという援護技である。
 「くぅ,これがリリスの生み出したものの力か…」 余りの臭さとダルによる視覚の混乱に、藤沢は敗北の予感を感じた。
 「どうやら、ここまでの様じゃな…」 ストレルバウ,ロンズ,ダルの影が、砂浜で膝を付く藤沢を覆う。
 しかし彼はこの瞬間を待っていたのだ,近づいてくるこの一瞬を! 
 「かかったな!! ここで私が負ける訳にはいかない。食らえ、奥義・妻帯者クラッシュ!!」
 砂浜を両拳で叩き付ける藤沢。
 カカア天下な妻帯者である上に、男レベルが40以上でしか使えない伝説奥義の一つ。心に溜まる鬱憤を地面に叩き付け、辺り一帯を吹き飛ばすという荒技だ。
 ドドォォォ!!
 巻き上がる砂
 「藤沢殿,もう教えることは何もない…」 ストレルバウのうめきが藤沢の耳に入ったような気がした。
 吹き飛ぶ3人。
 ズシャァァ!!
 何百m吹き飛ばされたであろうか,砂浜に3人は叩き付けられた。
 「あらあら,大丈夫ですか?」 そんなのほほんとした声が、彼らの頭上、間近から聞こえてくる。
 ”””この声はぁぁ!!!””” その女性の声に、三人は素早く眼鏡を掛け、顔を上げる。
 すぐ側で心配そうに3人を見下ろすルーン。水着ではなく、薄い水色のワンピースを着ているが、3人には関係のないものだった。
 「「「…え???」」」



 『古より、この砂浜には3つの石像がある。すなわち古の賢者,歴戦の古参兵,異国の皇帝。
 それはかつてショックの余りに石になったという、嘘か誠か分からない伝説を背負っているのだ。
 もしも立ち寄る事があったら一見していくのも良いかもしれない』

ロシュタリア観光ガイドより抜粋 

おわり