「うわぁぁ!! …はぁはぁはぁ」
  僕は飛び起きる。額は冷汗でぐっしょりと濡れていた。
  「嫌な…夢やった」
  しかしその内容は霞の如く僕の手から消え去り、何も残ってはいない。
  朝、久々にベットで寝ると悪夢を見るのだろうか?
  コンコン
  ノッキング
  「まこっちゃん,起きたぁ?」
  「今起きたとこや,菜々美ちゃん」
  ガチャリ、扉が開く。
  現わるるは幼馴染みの菜々美ちゃん,東雲食堂の朝の準備は終わったのだろうか?
  「おはよ、まこっちゃん!」
  「おはよう、菜々美…ちゃん?!?!?!」
  僕は異変に気付く。
  何で、何なんや?!?! 一体何がおこったんや?
  「どうしたの? まこっちゃん?」近づく菜々美ちゃん。
  「ななな…菜々美ちゃん,一体何なんや??」
  震える右手で彼女を指差す僕。それを菜々美ちゃんは変なものを見るような視線で僕を見つめている。
  っていうか、変なのは菜々美ちゃんや。
  「何って何よ?」
  「そのヒゲやぁぁ!!」


ヒゲ



  そう、菜々美ちゃんの形の良い鼻の下には、『ドリームキャスト』のような形(→@の)の髪と同じ色の髭が2つ、生えているのである!!!
  「はぁ? ヒゲ? あったりまえじゃないの。まだ寝ぼけてるの??」
  首を傾げる菜々美ちゃん。
  何や、当たり前?? ちょっと待てや…
  僕は自分の鼻の下に右手で恐る恐る触れてみる…こ、この感触は…チョビ髭!!
  「もぅ、やっぱり寝ぼけてんのね。まこっちゃんの『加トちゃんチョビヒゲ』があったからこそ、神の目の暴走を止めることが出来たんじゃない」
  “どうやってやぁぁ!!” まさるさんかい・・・
  「おい、どうしたんだ?」
  「起きてまへんの?」
  「早く朝御飯に行きましょうよ」
  3人の女性の声に僕と菜々美ちゃんは扉の方に振り返る。
  そこには三大神官の姿があった。
  「何なんやぁぁ!!」
  「何騒いどるんどすか?」アフラさんもどきが僕に近づく,僕はじりじろと後退。
  「朝から変なのよ、寝ぼけてるみたいね〜」呆れたように菜々美ちゃん。
  「3人とも…なんですか,そのヒゲは?!」
  「? 当たり前のことを何言ってるのかしら?」ミーズさん(らしい)は首を傾げ、諭すように話し掛ける。
  「私達大神官は、神官の中でも類希な髭の持ち主が選出されるのよ」
  「そうだぜ、姉貴は『つや』,アフラは『長さ』,アタイは『太さ』じゃねぇか,思い出して目が覚めたか?」
  「でも最近、私のつやがなくなってきてるのよねぇ」青々とした髭を撫でながらミーズさん。
  「30代はお髭の曲がり道って言いますからなぁ,早く結婚相手を見つけないと、婚期のがしますぇ」
  「アフラ! 自分が若いからってぇぇ!!」アフラさんを追い駆けるミーズさん。
  僕はそれをただただ唖然と見つめていた。
  “…つやの大神官に長さの大神官,それに太さの大神官やて…こんなの夢や!”
  「誠、まだ思い出せねぇのか? イフリータを思い出せよ,あいつは一人でアタイら3人と互角の勝負をしたんだぜ!」
  僕の肩を叩いてシェーラさん。非常に男らしい赤髭があるけど、その瞳は僕を心配してくれている。
  「勝負って…ヒゲで?」
  恐る恐る尋ねる僕に、4人はコックリと力強く頷いた。
  「あんな剛毛、アタイは見たことなかったな」
  「ご、剛毛!?」
  「さすがは先エルハザードの遺産やわ,ウチの長さでは太刀打ちできんかったわ」
  「つやつやと黒光りしていたものね,私もとても勝てなかったわよ」
  頷き合うアフラさんとミーズさん。
  菜々美ちゃんはしみじみと頷きながらこう止めを刺した。
  「私もね、まこっちゃん,イフリータは鬼神だったけど…あんな剛毛だもの,まこっちゃんが夢中になってもしょうがないかって、納得したのよ。かの関羽雲長もあれには叶わないわよ」
  「美髯公?!」
  “イフリータに…あのイフリータに髭が…それも剛毛…”想像する。
  あの美しい、僕のイフリータに髭が…ターンAよりも凄い髭が…
  僕の中で、大切な何かが砕け散った。
  「嘘やぁぁ!!!」
 ・・・・・・・・
 ・・・・・・
 ・・・・
 ・・
 ・
  「うわぁぁ!! …はぁはぁはぁ」
  僕は飛び起きる。額は冷汗でぐっしょりと濡れていた。
  「嫌な…夢やった」
  しかしその内容は霞の如く僕の手から消え去り、何も残ってはいない。
  朝、久々にベットで寝ると悪夢を見るのだろうか?
  コンコン
  ノッキング
  「まこっちゃん,起きたぁ?」
  「今起きたとこや,菜々美ちゃん」
  ガチャリ、扉が開く。
  現わるるは幼馴染みの菜々美ちゃん,東雲食堂の朝の準備は終わったのだろうか?
  「おはよ、まこっちゃん!」
  「おはよう、菜々美…ちゃん?!?!?!」
  僕は異変に気付く。
  何で、何なんや?!?! 一体何がおこったんや?
  「どうしたの? まこっちゃん?」近づく菜々美ちゃん。
  「ななな…菜々美ちゃん,一体何なんや??」
  震える右手で彼女を指差す僕。それを菜々美ちゃんは変なものを見るような視線で僕を見つめている。
  っていうか、変なのは菜々美ちゃんや。
  「何って何よ?」
  「そのえらくゴツイ眉毛やぁぁ!!!」


あらゆる意味で終わり