『とあるお昼の報告書』


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  「ふあぁぁぁ…暇だな」 
  「本当ですねぇ」大口を開けて欠伸する梅崎に高見が相槌を打った。 
 高見の見つめるデスクトップパソコンのディスプレイには「信○の野望」なん
 ぞが起動していたりする。敵武将のほとんどが暗殺されて、日本中に空白地が
 点在している所がプリティー。 
  そんな彼女達を背中に、幼女体型の女性が書類整理をする男性の机に近付い
 て行った。 
  「ねぇ、田波君,田波君は昔、どんなコトやってたの?」神楽総合警備社長,
 菊島は唯一の男性社員,田波洋一に尋ねる。彼は困った顔をしながら答えた。 
  「どんなコトって…ごく普通にガッコを卒業して、どこぞの会社に入社して、
 潰れて、また入社してまた潰れてと…」指を折りながら田波は言う。 
  「まぁ、ごく普通の生活だなぁ。社長は?」 
  「乙女のひ・み・つ」答えて、菊島は人差し指を唇に当てた。 
  「あ、そ。高見ちゃんは?」 
  「え、ええ? 私ですかぁ!」 
  「なによ、その、あ、そってのは!!」あっさりと無視された菊島は田波の
 背後からチョークスリーパーを掛けるが、慣れているのか,彼は高見に視線を
 移す。
  「私の昔…

                             ・・・・・・・

  「恋も魔法もサ○ーにおまかせ! プリティー○ミーここに参上!!」激烈ミ
 ニスカに,良く分からないが妙に、めでたそうなバトンを持ってポーズを取る
 女性が幕張にいた。 
  その後ろに並べてある種々様々な漫画雑誌には、普通に見えるものから業界用
 語で「やおい」と呼ばれる代物まで置いてあったりする。 
  ふと、視線を移すと同じような風景がそこかしこに繰り広げられていた。そう、
 今,ここは業界用語で「冬コミ」と呼ばれる祭典… 

                              ・・・・・・・

  「高見ちゃん?」硬直する丸眼鏡の少女を不審に思い、声を掛ける田波。 
  「あ、え、ええ,ごく普通の女子コーセーでしたよ、私は。ハ、ハハハ…」
 渇いた笑い。 
  「? そ、そう? 梅崎さんは?」彼は今度は銃の手入れをする白スーツの女性
 に話を振った。 
  「ん?」

                              ・・・・・・・

  「竜,こっちよ〜」 
  「まて〜,真紀〜」砂浜をじゃれあって走る2人の男女。押し寄せる波を足で
 散らした時のしぶきが眩しい。 
  若い2人は半径3mの世界で、石を投げつけたくなるくらいの幸せを堪能して
 いた。 

                              ・・・・・・・

  「…フッ、あたしは過去を捨てた女なのさ」額に汗しながら答える梅崎。 
  「あたしより、あんたはどうだい,栄子?」机に足を上げながら、彼女は一番
 仕事をしていそうなOL風の女性に尋ねた。 
  「…私?」

                              ・・・・・・・

  「うらうらうら,サツがなんだい?!」釘バットを肩に、特攻服を羽織った蘭
 堂はハーレーを駆る。 
  人の血で赤く染まったとしか思えない特攻服の背には、定番通り「唯我独尊」
 と「皆殺露死」の文字が光り、何と「総長」の文字までがあった。 
  後ろに従う数十台の仲間達のさらに後ろには、パトライトを利かせた白と黒の
 ツートンカラーの車が数台、追いかけてくる。 
  蘭堂は不意に懐から取り出したパイナップル(?!)の栓を抜き、3秒後に後
 ろへ投げ捨てた。 
  「ゴウン!」爆炎とともに追跡車が完全に沈黙する。 
  「うるさいのも消えたことだし,結城、今日は飛ばすよ!」彼女は隣でカブに
 乗る少年に言い放った。 
  「うん、えーこちゃん」 
  「えーこちゃんゆ〜な,総長って呼べ!!」

                               ・・・・・・・

  「…あの頃に比べたら,おとなしくなったものね」 
  「あ、あのぅ、何を遠い目をしてらっしゃるので?」何故か敬語の高見ちゃん。 
  「私の事は、ま、良いじゃない。夕はどうなの?」 
  「ぐぅ…」蘭堂の視線の先には扉にもたれ掛かって眠る女性の姿が。 
  「ううん、運転手は運転が…おしごとぉ…」寝言まで言っている。 
  「ま、うちの会社は過去を問わないって事よ」菊島は田波にそう言って、自分の
 席に戻って行った。 
  「…俺の過去はまともだぞ」そうでもないんじゃないか? 田波君。 
  ふと、彼の右手が捕まれた。 
  「ん? どした、まや」いつからそこに居たのか、まやは黙って彼の手を握って
 いる。寂しげな雰囲気,ただそれだけしか読み取れない。 
  「? お腹すいたのか? ネコ缶いっこ、開けるか?」見当違いな事を訪ねる田波。
  それに、まやは首を横に振ると、小さく微笑んだ。 




  余談 

  「私の過去…ですか。それは私にも分かりません」ニヤリと笑う入江省三。
  しかし彼の過去を知りたいと思う人はいなかったという(友達いるのか…こやつ…)。 


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 あとがき

  …うあ、やっちまった。相変わらず馬鹿な事を書き続けている元です。
  一応、根拠をもとに創作いたしました。
  まず高見ちゃん,これは言うまでもなくコミック3巻の「桜木高見、故郷
 へ帰る」より容易に連想できます。
  次に梅崎さんの半径3mの世界は、やはりコミック3巻P87の5コマ目
 の写真、及びP98での彼女の態度より、かなり曲解して解釈いたしました。
  でも写真の梅崎さんの服装から考えると、こんなんもありえるんじゃない
 かなぁと…。
  蘭堂さんに関しては仁君の考察する「ジオブリ研究序論」より、そのまま
 引っ張ってきました。結城君が親衛隊長と考えたんですが、あの性格から、
 カブに乗るのが精一杯かと…。
  菊島社長、夕、田波君に関しては、全く分からない,もしくはたいした過
 去ではないと判断して触れませんでした(特に夕は寝る事が生き甲斐みたい
 だし)。
  こんなん違う! または蘭堂様がこんなことする訳ないぃぃ! などの御批
 判,御感想などがございましたら是非お聞かせください。

                                                    1998/01/14(wed)
文/