『テンシノウタゴエ』

                          BGM : Cat on Mars
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 僕はしがない野良猫さ
 誰にも飼われずに、誇り高く生きているのが野良猫なんだ
 そんな僕にも夢がある
 それは、立派な化け猫になること
 人間の言葉を理解することができるけど、残念なことにまだ人に化けることが
 できない
 今はまだ化け猫予備軍とも言えるものに所属しているけれど、いつか人に化けて
 あのひと猫のように歌を歌ってみたい
 それが僕の夢なんだ
 そうだこれから、あのひと猫の話をしようかな



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 僕は、しがない野良猫さ♪
 毎日、毎日好きなことして過ごしてる♪
 いつもおなかはすいてるけれど♪
 何にも縛られない自由な生活♪


 自由には、それなりのリスクが付き物なのは、野良猫世界も同じ
 よく人間に追いかけられるから
 なんで人間はあんなにケチなんだろう?
 いっぱい食べ物があるのだから、少しくらいつまみ食いしたって
 いいじゃないか
 人間なんて大嫌い
 だけど、歌は好きなんだ
 聞いていると何だか心が、ほや〜ってして、嬉しくなったり、悲しく
 なったりするんだ


 今日、いつものように夕日を見ながら散歩していたら、あのひと猫に会った
 彼女は、猫なのに人の姿になれる“化け猫”っていうすごい猫なんだ
 公園のベンチに座って誰かを待っているようだった
 そこで、「ニャニャニャニャ〜、ニャ(あの歌を歌って聞かせてよ)」
 とおねだりしてみる
 以前、一人で歌の練習しているのを見ていたことがあるんだ
 とっても、可愛くて素敵な歌声なんだ
 するとキョロキョロと周りを見て、他に誰もいないことがわかると、
 コクンとうなずき、沈みかける真っ赤なお日様に向かって歌い始めてくれた
 この時間のお日様は、もう少しで沈んじゃうけど、とっても綺麗なんだよね
 地面には、僕と彼女の影が並んでなが〜く伸びて映っていた



   かせいのうえのねこみたいに♪
   わたしのこころは かわりません♪
   しんじないでね うそだから♪

   ムスメ15で家出した♪
   わたし15でカサなしよ♪
   とおくのさきに穴がある♪

   かせいのうえのねこみたいに♪
   わたしのこころは かわりません♪
   しんじないでね うそだから♪

   いちごまもったせんしたち♪
   つのにはつのの人生が♪
   おかわりするかは へそにきけ♪

   せんぞだいだい かもめ好き♪
   しょうこはないけど さびしいの♪
   かせいのうえの ねこだから♪



 とっても綺麗で可憐な歌声
 夕日があたった彼女の顔はとっても楽しそう
 さらさらした髪をそよ風になびかせてこっちに微笑みかけてくれる
 うまい歌と彼女の笑顔 僕はすごく幸せ
 歌の意味はよくわからなかったけれど、とっても感動しちゃった
 歌の余韻に浸りつつ僕が、もう一回歌ってよ と言おうと思ったら
 一人の人間の男が来た
 「まや! うた歌えたの? しかもここまでうまいなんて…」
 ふっふっふっ、驚いてる、驚いてる
 僕は前から知っていたよ、少しだけど優越感
 「社長が教えたんだろうけど、変な歌だな〜」
 といいつつ、彼女の頭に手を乗せる
 変な歌とは、なんだ、変な歌とは、それに何だその手は
 彼女は、恥ずかしそうに頬を染めて下を向いてしまった
 でも、誉められて嬉しそう
 「ウニャ、ニャ、ニャ〜〜〜〜〜(その気安い手をどけろ〜〜)」
 と叫ぶも
 「なんだ?この猫」
 当然だけど、全然通じてない、ちょっと悔しい
 でも、帰り際に彼女が手を振ってくれたのが、嬉しかったからいいや


 ねぐらに帰り際、僕も真似して歌ってみた
 「うにゃ〜、ふにゃ〜、にゃ〜お」
 う〜ん、歌えないな〜
 人間の言葉がわかっても、まだ声まではだせない
 はやく立派な化け猫になって歌を歌いたいな


 友達は「おまえなんかが、化け猫になれるわけないだろう」と
 馬鹿にするけど
 夢は努力次第で、いつか現実になると思うから
 諦めたらそこでおしまい、だから決して諦めないんだ
 挫けそうになった時、あの天使の歌声がきっと僕を励ましてくれるから



                           fin


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A)togaki 〜 From 鈴弥氏 → HP Electric Wave Tower


 20000HITおめでとうございます。
 稚拙で拙い文章ですが、送ってしまいました。
 これは、ジオブリSSようにいくつか考えてあったネタの中から“まや”が
 メインで出てくるものを選んで書いたのですが、書き終えてみると変な野良
 猫の一人称形式のものと成り果てていて、“まや”がメインというものでは
 なくなってしまった感があります。
 こんな下手なものを送るのは非常に恥ずかしいのですが、折角書いたので…
 煮るなり、焼くなり好きにしてください、後の処置はお任せしますから。

 それでは

 追伸;
 この話の中で“まや”が歌っているのは、カウボーイビバップのサントラ2
 とミニアルバム ビタミンレス に入っている“Cat on Mars”の日本語訳です。

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K)ansou 〜 To 元

 鈴弥さん、ありがとうございます!
 「歌うまや」、ううん、良いですねぇ。田波に誉れられ、照れてる辺りが
 とても巧いです。
 化け猫に憧れる、しがない音楽好きな野良猫。
 そんな彼と「化け猫」である、まやとの交流。
 猫には猫にしか解らない「気持ち」がうまく出ていますね。田波がにくい
 ですな(笑)。
 夕日をバックにした、まやの小さなコンサート。
 皆さんには、菅野よう子氏のCDを聞きながら読んで頂けると、より良い感じ
 が出てくると思います。

                                                       1999/03/27
文/鈴弥