黒い流れ星作戦
著 burst


  いつもと変わらぬ神楽オフィス。
  ある者はパソコンを打ち
  ある者は銃を分解し
  ある者は始末書?を書き
  ある者はぼけーっとし
  ある者とある猫は地下のガレージでぐっすりしていた。
  ただひとつ変わったことと言えば、経理の姉さんがまだ来ていないことぐらいだった…


  「蘭東さん、今日は遅刻かぁ」
  「めずらしいこともあるんですねぇ」
  ばたん
  「あ、蘭東さんおはようございます」
  「うーん、まずいわねぇ…」
  「どうしたんです、なにかあったんですか?」
  彼らの興味はなぜ遅刻したのか?から非常事態か?へと変わっていた。
  一言で彼らの考えを変えてしまうんだから、すごい。
  「ちょっとまずいことが起こりそうなのよ、社長、ちょっと下を見てみてよ」
  「どれどれ」
  窓際にいた社長は窓を開け下を見た。
  そこには何台もの黒い車が止まっており、おびただしい数のスーツ姿のおっさん達がうようよいた。
  「んー? げ!!なにあれ!?」
  田波も上から覗く。
  「なんだなんだ?」
  桜木も上に乗る。
  「すごい人数ですねぇ…」
  梅崎も上に…
  「あいつらがどうした?」
  「ぐぐぐ、おもーい」
  社長の叫びを無視して社員は続ける。
  「ほら、覚えてない? 前も何回か来たじゃない。あれよ、あれ」
  「「え!? まさか…」」
  「なんです?あれって…」
  「そうね、田波君はまだ入社してなかったもんね、実はあいつらはねぇ…」
  「蘭東さん! 入ってきちゃいましたよ!」
  そのスーツ軍団は一糸乱れぬ隊列でになってビルの正面玄関から入ってきた。
  「うーん、しょうがないわね、真紀! またあの手でよろしく!」
  「やだ」
  ばし
 
蘭東が突っ込む
  「神楽の未来が懸かってるのよ!」
  死にかけの社長が声をふりしぼる
  「真紀ちゃん、おねがぁぁい…」
  「梅崎さん、頼みますよぅ」
  「…いてててて、わーったよ!! やりゃあいいんだろ!」
  吹っ切れた流れ星は覚悟を決めたらしい。
  「素直でよろしい」
  「くっ、また特別手当請求するからな!」
  「はいはい」
  彼女は服を脱ぎ始めた。
  「ったく、次元っぽいのはあんまり好きじゃないんだよなぁ」
  そしてその横で桜木がその服を受け取り、裏返している。
  「じゃあ、今度は赤とかにしてみます?」
  「…やめとく…」
  「おまえはみるなぁ!」
  ばしぃ
 
「あうっ」
  残りの社員に突っ込まれた田波は意識を失った…


  数秒後…
  「…よし、準備完了!」
  「っていつのまに…なんで真っ黒なんですか?」
  「特注品なんだよ、裏地が全部黒だから裏返せばすぐに変装できるのさ。ま、お尋ね者の常識だけどな」
  復活した田波が見たのは、黒いスーツの梅崎だった。トレードマークの白の帽子さえ黒になっていた
  「梅崎さん、靴!靴!」
  「おっといけねぇ」
  最後の靴を履き替え、彼女はいつものモーゼルではなく、いかにも悪役が使いそうなマシンガンを手に取った。
  「社長、いつでもいいぜ。」
  「…うむ、各員配置につけ!」
  「「了解!」」
  「あのー、配置って俺はどのへんに…」
  「まあ、適当にやってください、田波さん」
  「適当って言ったって…」
  「来るわよ!」
  「うーし!」


  ピンポーン
  「すいませーん、神楽総合警備さん。私達、こうゆう者ですが、今日は、強制捜査に参りました。ドアを開けていただけませんか?」
  どすん ばたん
  ばきゅぅん

  「おらおらおらぁ」
  「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
  「う、梅崎さん!???」
  オフィスの中から悲鳴と銃声が聞こえたので、外の刑事達はパニックになった。
  「な、なんだ!? よし、とりあえず突入!」
  ばん
  ドアが蹴破られる!!
  「なんだよ、てめーら!」
  じゃき
  ずだだだだだ
  「うお!?」
  「たすけてぇ! 刑事さん!」
  社長が甲高い声で叫ぶ。
  「…なぁ高見ちゃん、これって…」
  「だめですよぅ、ちゃんと人質のふりしなきゃ! きゃぁぁぁぁ! たすけてぇぇぇ! ころされるぅぅぅ!!」
  「うるせいやい!フラれたての女に(略)」
  ずだだだだだだだ
  「うわぁ、なんだこいつ!」
  「ちい、警察か! ちくしょう! 追ってこれるもんなら追ってきてみな!」
  たったったったった
  彼女は逃げ惑う刑事をひらりひらりとかわしながら軽やかにオフィスを出て行った。
  「うおっ!」
  「犯人が逃げるぞ!とっつかまえろ!」
  「まてぇーーー」
  たったったったった
  どかどかどか
 
「てぇぇぇい」
  ずだだだだだ
 
「ひいぃぃぃ」
  「発砲を許可する!」
  ぱきゅうん
  ぱきゅうん
  ずだだだだだだ
 
…………
  ……
  …
 
  そして彼らは階下に消えていった…


  「…社長、これって…」
  「いいアイデアでしょう。あたしが考えたのよ! 『黒い流れ星、神楽を襲う!!』ってね」
  「そーじゃなくて! なんなんだよ、これ!」
  「実はね、目標を横取りされた厚生省が危険物所持だっていって お札の回収をせまってきたことがあったでしょう?」
  「はあ、(やな思い出…)」
  「それで厚生省が警察に手をまわして、強制捜査させたのよ。ボウガンとかも危険物だし」
  「前もあってね、そのときは真紀ちゃんが「銃刀法違反が怖くて、拳銃稼業ができるか〜!」 っていって暴れまくってくれたおかげで助かっちゃったのよね」 
  「それから毎回、真紀にがんばってもらってるのよ。もし、もう一回警察がきても、脅されてやってたってことにすればいいしね」
  「でも、梅崎さん、しばらくは帰ってこれませんよねぇ…」
  「…いいのか、この会社 …いいのか、警察…」


  実はこのとき、梅崎は初めて社員から”流れ星”と呼ばれたのである。色が違うけど…


おわり




感想 From 元

 Burstさんから頂きました! 感謝感謝です。
 神楽の行き当たりばったり的な解放感がうまく出ていますねぇ。
 田波君は相変わらず流されるまま…不幸だ(笑)。
 梅崎のスーツがリバーシブルだったとは…Maltsのスタジャンのようです。
 彼女はひたすらに銃を連発した後に「またつまらぬモノを撃ってしまった」とか、やっぱり言うんでしょうかね?(それは五右衛門!)
 何はともあれ、ありがとうございます,Burstさん!

2000.8.16. 元. 


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