『その娘,精密機器につき』

著者:元



 「精密機器って、磁石に弱いのよね」
 「それがどうしたんだ?」
 パソコンを叩きながら田波は菊島の言葉を流す。対する菊島は手にU字型磁石を持っていた。
 「化け猫って、データの集まりみたいなものよね」田波の横でぼぅっと立っているまやを見やり、社長。
 「さぁ、パソコンで封印できるんだからそうなんじゃないかな?」
 「えりゃ!」まやに磁石をくっつける菊島。
 「うにゃにゃ!!!!」
 ばちばちばち
 「ま、まや?!」
 まやの姿が壊れたモニタの様に歪む。そして
 ボム!!
 白煙を立ててまやは爆発した。
 「まや!!」叫ぶ田波。
 「うるさいがな」タチの悪い言葉がまやの立っていたところから帰ってきた。
 収まる煙。
 「まや?」
 「へ?」呆然とする菊島と田波。
 そこにははらまきに寅さん帽子,わらじを履いて耳には赤ペン,手には競馬新聞を持った「おやじまや」が胡散臭い目つきで立っていたのである。
 「何、ぼさっとしとんのや,ワシは忙しいんだがな」まやは腰に吊るした携帯ラジオの電源をON,流れるは西武園競輪の実況中継。
 「はよ、万馬券買いにいかな! 姫萩はん,車出してぇな!!」
 まやはそう叫びながら、地下のガレージへと降りていった。
 「どうするんだ,あれ…」
 「さぁ」
 無責任な大人,2人有り…。


             つづく