『タキの裏切り』

著者:元



 円卓に彼は座る。
 「第5部隊,ハウンドに阻止されました」
 「3班,撤退」
 明らかに不利な状況を示す情報が次々と入って来る。
 「黒猫…」
 「心配は要らん,全て計画通り」
 タキの言葉に黒猫は抑揚なく答えた。
 ザッ,立ち上がる。
 「何処へ?」
 「少し休む」
 「分かった」
 黒猫は去っていく。
 と、彼のいた円卓の位置に1本のビデオテープが置いてある。
 「?? なんだこれは?」手に取るタキ。
 「それは彼のコレクションの1つよ」ヴァシュカがタキの呟きに答えた。
 「コレクション??」
 タキは直接磁気信号を読み取る。
 彼の頭の中で、画像が流れる。
 黒眼鏡の中年男が映っているアニメだった。その中年の場面だけがピックアップされている。
 『問題ない』
 『年寄りどもに与えるには丁度良いおもちゃだ』
 『フッ…』
 タキはビデオテープを置く。
 「こいつは…」
 ヴァシュカが呆然とするタキに微笑んだ。
 「私は『赤城リツコ』なのよ」
 「ってことは…俺は『冬月コウゾウ』?!?!」
 そしてタキは裏切った…