『タキ,魂のThe』
著者:元
暗闇の支配する部屋の中、彼らはその映像を見ていた。
コンコン
1つしかない扉がノックされる。
「入れ」低い声で、彼は言い放つ。
この部屋の中心核,そして指導者でもある男,黒猫と呼ばれている中年だ。
「…黒猫」入ってきたのはやはり男,タキという通称を持つ化け猫だった。
「何の用だ?」彼は扉を閉め、部屋を見渡す。
黒猫の他に彼らの中枢であるメンツが揃っていた。
「タキよ、お前にもそろそろ我々の計画と目的を知っておいてもらおうと思ってな」
”…俺もとうとう幹部ってことか”心の中で呟くタキ。
「まずはこれを見てもらおう」
黒猫は指を鳴らす。
同時に部屋に据えつけられたスクリーンに映像が映し出された。
そこは何処かのオフィス。
昼下がりの休み時間であろうか,各々、ローソンのとろろそばやラ・ノアのケーキやら好き勝手なものを食べていたりする。
女性ばかりのその職場に、一人の冴えない男がいた。
そんな彼にカルボナーラが盛ってある皿を手にした化け猫の少女がトテトテを近づいて行く。
「ん!」男にそれを差し出す少女。
「ありがとな,まや」くしゃ,彼女の髪を軽く撫でて、男はそれを受け取った。
終わる映像。
「分かったな? タキ」同意を求める黒猫。
「…はい?」意図が読めず、タキは首を傾げる。
それに黒猫に替わって隣に座るやはり中年の黒猫が立ち上がり、熱弁!
「我々はあの男,田波という者に自分自身を映し出しているのだよ。見てみろ!」
再び映像が映し出される。
そこには憎き神楽の面々が映っていた。
「幼女体型の謎の社長,眼鏡っ子,気の強いOL,荒野のガンマン,眠り姫。そして主人公を慕う可憐な化け猫の少女! 萌えるシチュエーションだろう!!」
「…」
「この田波という男の人生は我々,いや世に生きる男の願望なのだよ」再び黒猫が言葉を繋ぐ。
タキはしかし、彼らのその言葉に拳を震わせていた。
「どうした,タキ?」
ダン,机を思いきり叩くタキ。
「貴方達はそんな下らぬことのために我々を操っていたのか!!」
「「何だと?!」」タキの暴言に化け猫達は椅子を蹴って立ち上がる!
「我々はB級映画とマニアックな武器の濃い話を世に広げるために戦っていたのではなかったのかぁ!!」頭を抱えるタキ。
殺到しようとする化け猫達を、黒猫が片手で制した。
「…タキよ,まだまだ青いな」
それだけを言い残し、彼らはタキ一人を残してその場を去って行く。
そしてタキは裏切った…