『その名にまつわるエトセトラ その2』

著者:元



 桜散る,その木の幹に背を預け、彼女は一人、佇んでいた。
 彼女は上を見上げ、散りゆく桜色のそれを掌に掴む。
 と、その後ろから一人の男が湧く様に現われた。
 黒コートに黒帽子,愛称は『黒猫』と呼ばれている大物だ。
 「計画より5分遅れてしまったな,大して影響はないだろうが。すまんな,『うめ』」
 「ヴァシュカと呼べぃ!!」
 どげしぃぃ!!
 桜の木の幹に顔面ごと叩き付けられる黒猫。
 ヴァシュカが人に飼われていた頃、飼い主に『うめ』と名付けられていたことを…
 知る者は結構多い。
 飼い主は明治生まれの方だったという。