『その名にまつわるエトセトラ その3』

著者:元



 夕暮れの路地。
 「お前の名前、考えたんだけどな」
 「…!」
 青年は隣を付き従うように歩く少女にそう、声を掛けた。
 少女は不思議そうな顔で彼を見上げる。
 「その恰好の時、猫だの三毛だの呼ぶ訳にはいかんだろうが」
 まるで弁解するように彼は続ける。
 「そんな訳でおまえ今日から”まや”って名前な」
 「まや?」少女はキーワードを反芻。
 「−−−沖縄だかどこだかじゃ猫の事そう呼ぶんだってよ」
 「まや…」
 青年・田波の説明に少女は己の名を再び声に出した。
 しっかし田波君,結構、博学なんすね…
 「どうして?」しかし少女は疑問を口にする。
 「どうして沖縄なの? 私が歌とダンスがうまいから? 例えば埼玉じゃいけないの?」
 「…変な名前で、良いのか?」
 その時のニヤリとした田波の顔を、まやは入江と錯覚したという…・・