『クリスマス・ナイツ』
Present for You
著者:元
活気のある商店街を、ジャンパーを着た冴えない青年と一人の少女が歩いていた。
商店街は赤と白の装飾が目立つ。どこもこの昭和の大不況の中、客を引き込もうと必死なのが分かる。
「ええと、シャンパンとフライドチキンとケーキと…納豆? たくあん??」手にした紙片に書かれたメモを読みながら、青年は首を傾げる。
「ったく,何でオレが買い出しに…」
と、愚痴る青年の鼻の上に小さく冷たい白いものが落ちてきた。
「寒いんじゃないか? まや」
青年は天から次々と舞い下り始めた白い天使を見遣りながら、付き従うように歩く少女にそう声を掛ける。
「…」
コクリ
無言のまま、頷く。
「犬じゃなくて猫だもんな,無理して付いてこないでコタツでまるくなってれば良かったのに…」
青年はそう言って苦笑し、彼女の首筋を掴む。
「?!」
少女は驚きの表情のまま、途端に一匹の小猫の姿になった。
青年は小猫をそのまま自分のジャンパーの中,懐に入れる。
「にゃ?」
ジャンパーの中,青年にしがみつくような恰好で小猫の目が彼を見上げる。
「オレも寒いしね。しばらくカイロ代わりになっててくれ,クリスマスプレゼント買ってやるからさ」
「…」
微笑む青年に小猫は無言。
しかし青年は、知らない。
この時、彼女にあげたクリスマスプレゼントの存在を…