『vs メガネっ娘ガンマン』

著者:元



 チャリっと取り出すは100円硬貨×2
 帽子の縁をクィっと下げ、彼女は続けざまにコインを目の前の機械に投入。
 広がる2m角の液晶プロジェクターのモニターに向かって、デバイスである光線銃を2丁、引きがねを引く。
 バゥン
 スピーカーからの銃声。
 モニターには『2P』の文字。
 「さて」
 彼女は二丁の銃を構えてモニターへ一言。
 「紅の流れ星、参る!」



 綾金市のしがないゲームセンター。
 閑古鳥の鳴きそうなその場で、彼女は屈辱に打ちひしがれていた。
 流行の過ぎた『バーチャ○ップ2』。
 そのモニターの前で、彼女・梅崎真紀は唇を噛みしめる。
 目の前で流れるハイスコアランキング。
 その3位に『M.U.』の名があった。
 しかし1・2位には…
 2位 ルガーR  95.5%
 1位 T.S.  99.5%

 「まちがいない」彼女は呟く。
 「竜のやつだ、2位は…」
 チャリ
 再びコインをポケットから取り出す紅の流れ星。
 「この世にナンバー1は2人もいらねぇんだ!!」
 3人いるぞ、梅崎…



 「だ、ダメだ…」
 彼女はがっくりとその場に膝をついた。
 2位 M.U.  98.5%
 どうしても1位になれない。
 「一体何もんだ? この一位っていうのは!!」
 「ひぃぃ! 何すんです!!」
 丁度通りかかった店員の首を絞め上げる彼女。
 「この1位の奴だ、どこの殺し屋だ? 傭兵か? もしかしてシティハ×ターか?!」
 「く、首絞めないでくださいぃぃ。確か普通の女の子でしたよぉぉ! OL風の…」
 「何だって…」
 「うわぁ!」
 店員を投げ捨て、梅崎は息消沈。
 「あの…お客さん?」
 「フッフッフッフッフ…」
 「もしもし?」
 「あたしや竜をそんじょそこいらのOLが超えただって! こんな機械、壊れちまえ!!」
 取り出すは二丁のルガー。
 ドドドドオドドド!!
 モニターに、機械本体にぶち放つ! 直後、火を吹くゲーム機。
 「ひ、ひぃぃぃ!!」
 「どちくしょ〜!!」最後に店員に蹴りを一発。
 「け、警察呼んでくれぇぇ」
 泣きながら梅崎は、ゲームセンターを駆け出ていった。



 数時間後。
 「田波さん。ついさっき綾金のゲームセンターで発砲事件が合ったみたいですよぉ」
 「ふぅん」
 携帯ラジヲのイヤホンを耳に入れてパソコンに向かう桜木は、向かいの席に座る青年にそう声を掛ける。
 「なんでもこの間、私がハイスコア出した『バーチャ×ップ2』の筐体が壊されたんですって」
 「いいスコアが出なかったから八つ当りかな? 物騒なヤクザもいたもんだね」
 「容疑者はでも、白いスーツの女性ですって」
 「…そういう格好の人、どこかで見たことあるな」
 「う〜ん、私もそう思ってたんですよ。どこででしょうね?」
 考え込む二人。こうして神楽の穏やかな一日は過ぎ行く。