『五色戦隊 イリレンジャー』
著者:元
「うわ〜 変態だぁ!」
「化け猫よ〜」
平和な綾金市に、突如として黒いコートを纏った見た目はオヤジな化け猫が、繁華街に畏怖をばら撒きに現われた!
「うにゃにゃ〜 見ろ、見るがいい〜」
恍惚の瞳のオヤジ猫,そう、化け猫がボスの通称・黒猫だ。
バッ!
彼は道行くOLに自慢の黒コートの前をはだけてみせる!
OLの瞳に映るは全くもって粗末なもの。
「キャ〜!」
黄色い悲鳴を上げて逃げて行くOL。黒猫はその様を満足げに見送った。
「ぐふふ〜 これだから黒コートはやめられんのぅ」
何も知らずにやってくる、今度は女子高生の前に彼は立ちはだかった!
「?! 何?」怪訝な視線で女子高生。
「うはは〜」
バッ!
風に、コートが舞う。
「…フッ」
女子高生は鼻で小さく笑うと、黒猫の前から立ち去った。
茫然と黒猫…
「うがぁぁ!! なんだかとってもチクショ〜」
暴れまわる黒猫!
「「「待てい!!」」」
鋭い叱責が、化け猫に飛んだ!
「むぅ、何やつ?!」黒猫,全身の毛を逆立てて警戒態勢!
「どこの誰ぞと聞かれたら…」
ズシャ! 黒猫の目の前のビル,その屋上に赤いスーツを纏った男が現われる。
「国家権力を盾に…」
ザザッ! 何故かバクテンしながら赤いスーツの隣に現わるるは同じ顔をした青いスーツの男!!
「我が侭な正義を突き通す!」
シャキ〜ン! 日の光に輝くは銀色のスプーン。
3人目の男は手にカレーライスを持ち、黄色いスーツを着て現われた。
「それは偽善と破壊を纏った…」
ドバ〜ン! クネクネと妙な足取りでピンク色のスーツの男。
「秘密公安部隊!」
ジャキ〜ン! 手にしたナイフをいっちゃった目でその刀身を嘗め回して、黒いスーツの男が締め括る!
「な、何者?」改めて違う意味で興味津々に尋ねる黒猫。
「虚ろな熱血が使者! 入江レッド!」
「オリジナルより1.8倍ニヒルな入江ブルー!!」
「カレー大好き 入江イエロー」
「月に代わっておしおきよ〜ん,ちょっとオカマな入江ピンク!」
「不気味さ余って邪悪さ120% 入江ブラック」
「「「五色戦隊 イリレンジャー!!」」」
クィ
クィ
クィ
クィ
クィ
五人揃って眼鏡を人差し指でズリ上げた。日の光のフラッシュバックが黒猫には眩しい。
その黒猫の口端はニタリと、笑みを形作った。
「お前達が御近所でドリーっぽいと噂のイリレンジャーか。ここで私が始末してくれるわ!!」
ビッシィ! 黒猫はほとほと不気味な5人を力強く指差す。
「いいぞ、化け猫!」
「国家予算の25%を食いつぶすイリレンジャーを抹殺してくれ!」
黒猫に市民から応援の声が飛ぶ! 御近所では人気はない様である。
そんな罵声をイリレンジャーはギロリと睨み付け、リーダー格のレッドに指示を仰ぐ。
レッドは懐から何処に隠し持っていたのか,バレーボール大の球体を取り出した。
「いきなりだが、行くぞ! 必殺と書いて必ず殺したい!」
大きくその球体を上に掲げるレッド! 球体は5人の頭上に浮かび上がった。
「「「必殺! サン●ルカンボール!!」」」
5人は各々跳躍! 思いきり球体を5人の力で打った!!
ぎゅるるるる〜
球体は物凄い速度で黒猫に迫る! 黒猫、思わずレシーブ体勢。
「何でサンバ●カンなんだぁ〜〜」
ちょど〜ん!!
黒猫の断絶魔と伴に、市民の皆さんを道連れにサンバル●ンボールは大爆発を起こした。
うにゃ〜〜〜ん!!
濛々と立つ煙の中から、地の底から唸るような猫の声が聞こえてきた。
「黒猫が最後の力を振り絞って巨大化したわ!」ピンク,ぶりっこポーズ(死語)で絶句。
直径1kmに渡って廃虚となったそこには身長20mはあろうかという二足歩行の黒い化け猫が、黄色い瞳を爛々と輝かせて五色戦隊を睨み付けていた!
「どうする,レッド!」
「慌てるな,イエロー。私達には蒲腑博士の作った最終兵器がある!」
リーダーは自信ありげに懐からウルトラマンセブンが付けるような、そこはかとなく怪しい赤いサングラスを取り出した。
「そうだぜ、あれを忘れちゃイカン!」ブルーもまた、彼の色をした同じ物を懐から出す。
「そうだな,ブルー。一気に方を付けよう」
「そうね」
「ああ」
ブラック・ピンク・イエローもまたサングラスを取り出し。
「「「来い! 入江ロボ!!」」」
5人は叫び、眼鏡を外してサングラスに掛け直した!
まるでその様はバッタもののメン・イン・ブラックだ。
ゴゴン!!
「「うわぁぁ!!」」
遠くから人の叫び声が聞こえてくる。
某所の公園の噴水が2つに割れ、中から上へとせり上がってくるは全長20mのスーツ姿のメガネを掛けた3頭身ロボ。
それが五色戦隊に向ってゆっくりと歩いてくる。
「イヤァ、スイマセンネェ。急ギナモノデ。アア、たくしーヲ踏ンデシマイマシタネ。申シ訳アリマセン,請求ハはうんどマデ。ア、コリャド〜モ」
ペコペコ謝りながら、入江ロボはやってくる。
「乗り込むぞ!」
「「「おう!!」」
唖然とする化け猫の前で、五人は入江ロボに飛び乗った。
「行くぞ、皆! 最終奥義だ!」
コックピット内で、レッドは仲間達に言い放ち叫んだ!
「勇気!」レッドの声に、入江ロボが構える!
「正義!」ブルーの声に入江ロボ、化け猫の猫パンチを受け止めた!
「友情!」イエローの叫びに応じたロボは、ずり落ちそうな眼鏡をクィっと上げる。
「愛!」カマっぽいピンクの声に黒猫が怯む!
「勝利!!」ブラックの指令に、ロボの眼鏡から怪光線が放たれて黒猫を吹き飛ばす!!
「「「食らえ! 名刺型アトミック(原子力)ボンバー!!」」」
入江ロボ,懐からズバっと名刺を取り出しざま、怪光線に吹き飛んだ化け猫に叩き付けた!
ドドム!!
閃光,爆発! 後、キノコ曇。
「勝った…」
「私達の勝利だ」
「しかし勝利の後はいつも虚しい」
コックピット内で勝鬨を上げる5人の入江。
戦いは終わった。しかしこれは真の戦いの始まり…
こうして綾金市は入江ロボの放った核爆発に廃虚と成り果てたのだった。
闘え。入江ロボ,真の勝利を掴むまで!
負けるな、偽善の化身・五色戦隊イリレンジャー!!
つづく!!
「…という夢を見たんです,矢島隊長!」
「成沢」大きな溜め息を吐いて、彫りの深い皺を更に深くしながら矢島は優しく成沢の肩を叩いた。
「はい?」
「長期休暇、取らせてやる」
「…ありがとうございます」