『柊 巳晴 検算(?!)』

著者:元



 「田波君。先輩としてこの子の面倒はあなたに一任します」
 「宜しくお願いします〜〜」
 「え、俺?!」
 蘭堂の一言で彼は新入社員教育までやらされる羽目になったのである。それは同時に彼のオフィスライフをさらに過激にするものであった…


 神楽新オフィス、柊嬢入社当日。
 「じゃ、2人とも。その机は2階に運んでね」蘭堂がテキパキと引っ越しの指示をする。
 「はいはい」
 「分かりました」
 田波と新入社員・柊は馬鹿でかいオフィス用の机を持って、腐りかけた階段をゆっくりと上って行く。
 「はぁ〜」階段の下側で、田波は本日何度目であろう、大きな溜め息。
 「どうしたんですか、田波さん? さっきから溜め息ばかり」
 「一人の将来のある少女の人生が棒に振られたのを目の当たりにしちゃったからね〜」
 「へぇ、なんか良く分かりませんがすごいものを見たんですね〜」
 「君のことだよ、巳晴ちゃん!!」思わず叫ぶ田波。
 「はい?」
 ドスン
 驚いたのか、思わず手を放してしまう柊。
 ガコン!
 「!!」
 机の全重量が階段の下側で支えている田波の腕に掛かる,無論あまりの重さに手が離れてしまう!
 めきょ
 田波の足の上に、机の脚が落ちた。田波,痛さに声にならない。
 ズガン!
 そのまま階段の板が抜けた。
 「う、うわうわうわ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 階段を破壊しながら落ちてくる机に、田波は下敷きどころか階段の床板とともに落下。
 1階の床板すら突き抜けて、木の割れる破壊音がオフィスに響き渡った。
 ズズン…
 濛々とホコリがたつ。
 「あ…」
 柊は途中からなくなった階段の下を呆然と眺めた。
 穴の下には机と腐った木に埋もれた田波が小さく痙攣していたりする。
 「こら! 田波ぁ! 修理費アンタの給料から天引いとくからね!!」
 遠くから蘭堂の叱咤が響いてくる。
 「修理費って…私、選択を間違えたかも…?」
 額に汗する柊。彼女がそれをしみじみ思うのはまだまだ早いということは言うまでもない。
 「巳晴ちゃん…どうでも良いけど助けて…」
 田波の声、未だ届かず…