『Gift』
著者:元
「…」
「…?」
神楽のオフィス。
留守番の菊島は同じく留守番のまやをじっと傍で見つめる。
まやはそんな菊島の行動に小さく首を傾げた。
と、菊島はまやの黒い服の袖をぎゅっと抓る。
「???」
まやは不思議そうに菊島を見つめた。
「ふ〜ん…どうなんだろうなぁ?」菊島はそんなまやの顔を見て困ったように両腕を組んだ。
そして今度はまやの柔らかい頬を抓る。
「?! ふみゃぁ!!」
ジタバタ,まやは両手を振ってなんとか菊島の腕を振り解こうとするが、巧みに捕獲者はそれを躱す。
「う〜ん、こっちは痛がるかぁ」
「みぃみぃ…」
菊島に頬を抓られたまま、まやは恨めしそうに一人首を傾げたままの菊島を恨めしそうに見つめた。
バタン!
オフィスの扉が開く。
「ただいま」
「今戻りましたぁ!」
帰ってきたのは田波と柊。
「あ、何やってるんだ!!」
「やっほ〜、お帰り」
「みぃ」
田波は菊島に詰め寄り、まやを抓る彼女の手を振り払う。
「いじめちゃ駄目ですよ,社長」
「え? いじめじゃないよ」
「まやは嫌がってるじゃないか」まやを抱き寄せて田波。
「みぃ」
3人に詰め寄られ、菊島は慌てて反論する。
「この娘の服を調べてたのよ!」
「「は??」」
「ほら、まやが変身する時って服も一緒に消えるし、人型になるときは服きてるでしょ?」
「「はぁ」」
「だからこの服はまやの体の一部なのかなぁってね」
言って菊島はまやの黒い服を指差した。
「「体の一部ぅ??」」
3人はまやをじっと見つめた。困ったようにまや。
「それもそうだな、これは困った」
「そうですね,どうしましょう?」
田波と柊は大きく溜め息を吐く。
「? どうしたのよ」
「あ、いやな…」田波は困った顔のまま、手に提げた袋を前に出す。
「まやちゃんに田波さんがお洋服を買ってきたんです。さっき任務中にまやちゃんがいつも同じ服着てるねって話になりまして。帰りに買ってきたんですよ」
「無駄になっちゃったな」
田波は袋から洋服を取り出す,子供用のそれは黒とは正反対の,白い涼しそうなワンピースだった。
「そんなこと、ない」
「ん?」
「ありがとう,田波さん」
まやは満面の笑みで、田波の手にするその服を受け取った。
彼女の姿が一瞬ぼやける。
次の瞬間、まやは白いワンピースにその身を包んでいた。
「あらら、ちゃんと着れるのね。ますます分からなくなったわ」
「良く似合ってるわ,まやちゃん」柊が満足げに頷く。
くしゃ
田波は笑顔でまやの頭を撫でる。
「ん!」
今までで一番の笑顔が、まやに咲いていた。