『グレて夜露死苦』

著者:元



 「大変です大変ですぅ」
 「どうした? 高見ちゃん?」
 息を切らせながら神楽オフィスに駆け込んできた桜木を、田波は首を捻って出迎えた。
 オフィスの面々は、同僚の只ならぬ様子に次の言葉を無言で待つ。
 「姫萩さんがグレました!!」
 「「なにぃぃ!!」」




 バモスがまるでセンスの悪いデコトラのようにキラキラの照明やら何やらで装飾されている。
 天井より高く突き出ている長いものは…タケヤリマフラーだろうか?
 「一体何があったって言うんだ? 姫萩さん!!」
 「うっせ〜!! どうせアタイらは腐ったミカンなんだ,どう頑張ったって花園ラグビー場へはいけねぇんだよ!!」
 バモスの運転席に乗り込み、エンジンを掛ける彼女。
 ぐぉぉん!!
 頭の悪そうな音がする。
 「田波くん! 彼女を,夕を止めるのよ!」
 「と、止めるったって…」
 蘭東の言葉に戸惑う田波。その間にもバモスは走り出そうとする。
 「田波さん,早く! 今、田波さんが取れる行動は次のうちのどれかです!」
 「え? ええ!!」
 桜木はビッシィ,虚空を指差した。


    @   突進するバモスの前に飛び出て「僕は死にましぇん!」
        と世界の中心で愛を叫んだ獣を演じた後、轢かれて殉職。

 
    A   梅崎さんがぶっぱなした弾道に飛び出て、姫萩さんの盾になり、
        「俺に惚れるなよ(石原裕次郎風)」に不自然なほどニヒルに
        微笑んだ後、死亡。



    B   黒猫との激闘を演じて半死半生状態になった田波さんは姫萩さんの
        必死の看病の末、奇跡の復活! 最後の入江との戦いの中、実は入江
        の手先だった彼女の手にかかって死んでしまうの。
        「お前に殺られるのなら、悔いはない」とか言いながら。


 ……さ、どれが良いですか?」高見ちゃん,アラレちゃんわくわく状態で返事を待っている。
 「…全部バットエンディングなんですけど」
 そして…
 バモスが、彼らを轢いて走り去っていったとさ。


      「高見ちゃん,オチは?」
      「ごめんなさぃ〜 オチませぇ〜ん…きゅう」