『帰ってきた伝説』

著者:元



 「よぉ、田波はん」
 「げ…」
 神楽オフィスにて、彼は硬直する。
 悪夢が、再び始まる…


 えらく多忙な年末年始,単独行動にて化け猫を3匹封印を終えた田波は、疲れ切った身体を引き摺って無人の神楽本部たるオフィスへとようやく辿りついた。
 扉を開け、待っていたものは…
 やけに陽気な、垢抜けた笑顔にしましま模様の腹巻。そこに手を突っ込み、つまようじを一本、口に咥えた目つきの悪い少女だ。
 その子の名を『まや』という。
 「ま、まや?」田波青年は怯えと恐怖、そして何より信じられないものを見る目つきで彼女を見つめる。
 「? そや? どうしたん? 田波はん??」首を傾げるまや。
 そう、彼女は『まや』ではあるが、田並の良く知るまやではない。
 かつて彼を不幸のどん底に落とし入れた『おやじまや』である!
 「どうして…誰かが磁石を近づけたとでも…」
 ふるふる震える指で田波は彼女を指差す。
 と、気付く。パソコンが一台、起動したまま放置されている事を。
 瞬間、彼の脳裏に次のフレースが浮かんだ。
 『ディスプレイの上に物を置かないで下さい。電子機器などを狂わせる恐れがあります』
 そしてディスプレイの上は放熱で温かい。
 今は冬…猫は寒い所が苦手。
 田波の中で全てがつながった。
 「田波はん,ウチ腹減ったわぁ,串カツでもおごってやぁ」
 グィ、田波の腕を掴む『おやじまや』,その力は当社比125倍は強く彼はずるずる引き摺られて行く。
 「待て、まや、待ってくれぇぇ!!」
 悲鳴を上げながら、田波は彼女に引き摺られてオフィスを後にした。



つづく!(?)