『すもも』

著者:元



 昼下がりの神楽オフィス――
 田波は目の前の子猫を何気なく見つめた。
 子猫は彼の視線に気付き、その姿を現す。
 少女、だ。
 「なぁ、まや?」
 「?」
 まやと呼ばれた化け猫は青年の言葉を待つ。
 「今流行りのデスクトップエージェントみたいに、メールチェックとかできるか?」
 そんなふざけた彼の問いに、しかしまやは、
 こくり
 頷いた。
 「そ、そうなのか……んじゃ、俺のメールアドレス教えるからちょっとやってみてくれ」


 3分後――
 まやは唐突に立ち上がり、どこから持ち出したのか両手にタンバリンを掲げる!
 シャンシャンシャンシャン♪
 「な、何だ何だ何だ?!」
 「どうしたの、まやちゃん?」
 「また何か芸でも仕込んだの?」
 良く分からない踊りを踊り出したまやを、訝しげな視線で見つめる神楽面々。
 まやは踊りを止め、田波に向き直る。
 「メールが届きました」
 事務的に告げるまや。
 「あ、なんだ…」苦笑の田波、だが…
 「成沢 あゆみさんからです」
 「「何ぃぃぃ?!?!」」
 殺気立つ神楽女性陣,同時に顔色を無くす田波青年。
 「メールを読みます」
 「ちょ、ちょっと待てぇぇ!!!」
 「こんにちは、田波さん。昨日は喫茶店でありがとうございました。今度、映画でも…」
 と、そこでまやの言葉は田波の両手によって塞がれる。
 そして、田波の命は崖っぷちだったといふ………