月の明かりが体に心地好い。
夜,冷たい光が私を包む。
夜空が明るい晩、こうしてお屋敷の屋根の上で月光浴をするのが楽しみの一つ。
目を閉じると、不思議に手に取るように辺りの情景が見えてくる。
遠く町の香りを運んだ、森を駆け抜ける風が前髪を軽く揺らした。
風に意識を、体を委ねる。
すると賑やかな朝の市場が脳裏に見える,人々の笑い声、喧噪。
暖かな日の光を受ける草原が見える,穏やかな昼のひととき。
水平線の向こうが赤く染まる,夕暮れの海岸線。
目を開ける。
懐かしい感触,たまらない想い,そして、忘れ行く感覚。
私はそれを胸に抱きしめる、逃さないように。
日のあたる道,照らしてくれた光が変わるだけで、きっとこれからも歩いて行ける。
おっかなびっくり歩いていても良いと、あの人は言ってくれたから。
半端者でもいい,私が私でいられることが……
今は一番大切。
だから…ね?
アーカード:フン,こんな事だから半端者なのだ。
セラス:い〜ですよ〜だ!
アーカード:ならば一生、婦警と呼んでやる。
セラス:一生,ですか。…それもまた良いかも知れませんね。