A Happy New Year!!


 「「A Happy New Year!!」」
 パンパンパン!!
 クラッカーを鳴らしながらヘルシングは局長室に殴り込むは2名の吸血鬼。
 しかし出迎えたのは黒マントにフードを深く被り、全身を包んだ一人の老人だけだった。
 「おや、アーカード様にセラス様。おめでとうございます」
 「お、おめでとうございます…」
 「…うむ」
 出鼻を挫かれたか、恐縮する2人。
 「お嬢様でございますか? アーカード様」
 「ああ、一応新年の挨拶にな」クラッカーを投げ捨ててぶっきらぼうに答える。恥ずかしかったようだ。
 「局長はどこに?」
 「セラス様もアーカード様も…私めのようになりたくなければお逃げください」にが笑いの老人。
 「? なにがあった、ウォルター?」
 アーカードの問いに、ウォルターは無言で身を隠す黒マントを床に捨てた。
 「!?」
 「…なんです?」
 ウォルターは紋付袴姿(注・1)だった。それもマゲのヅラ付き
 「どうもお嬢様はJAPANの文化に感化されたようで。逃げないと私のようになりますよ」
 「逃がしはせぬ」部屋に声が響いた。
 カシャン、カシャン
 扉と窓に鉄格子が降りる!
 「な、なんだと?」
 「刻命館?!」婦警はおののく。
 「残念でしたな」ため息のウォルター。
 セラスは格子に目をやり絶句。
 「マ、マスター!聖書が、 結界がぁ!!」格子には聖書の紙片が!
 「…13課が絡んでいるというのか?」
 「違いますよ」とウォルター。彼は鉄格子に歩み寄り、そのうち2枚をはがして2人に見せた。
 『賀正』馬鹿でかく書かれたその2文字は達筆だった。
 「かきぞめ(注・2)…ですか」茫然と婦警。
 『恋人募集』
 「切実だな」貰い泣きのアーカード。
 「こらこらこら,軽いアメリカンジョークだ、それは」
 奥の扉から現われるは局長ことインテグラである。
 赤い布地に桜の花びらをかたどった模様が施された着物を身に纏い、しずしずと歩いてくる。まるで何処かのお嬢様だ(お嬢様だって)。
 「すまん、ジョークには思えなんだ」
 「ニンニク入りのおせち料理(注・3)を食わせてやろうか?」中身はやっぱりインテグラ。
 「ところで局長,その手に持っているのは?」
 婦警の問いにインテグラの手を見遣れば、2枚の板とバトミントンの羽のようなものがある。
 「羽突き(注・4)といってな、JAPAN風のテニスボールだ」
 「へぇ」
 「これは負けた方が墨で顔に落書きをされるのだ」
 ズハァ,彼女は効果音と共にインクと羽ペンを突き出した。
 「局長にはあまり罰ゲームにはならないですね」
 「??」
 「色黒いし」
 「これか、そんなことを聞く口はこの口かぁぁ!!」
 「ご、ごべんなざい、もぅいいまぜん…」
 婦警の頬を力一杯引っ張るインテグラ。
 ウ〜ウ〜“ベイドリックにて吸血鬼発生!”ウ〜ウ〜
 と、屋敷に警報が鳴る。
 途端、一同の目の色が緊張した、プロのそれに変わる!
 インテグラは着物の懐から銃を取り出し一言。
 「さぁ、姫初め(注・5)だ!」
 「…事初め(注・6)でございます」
 ウォルターのツッコミが虚しく局長室に響き渡った。


 王立国教騎士団。
 この英国に化け物が出る限り、
 例えそれが正月であっても、
 今日も彼らは出動する!!




ルーク=ヴァレンタインの正しい日本語講座



注・1
 JAPANの新年におけるコスチューム。
 男は紋付き袴,女は着物となっている。
 得に着物の方は、脱ぐ時に男に腰帯を持たせて引っ張ってもらうと言う慣習がある。
 その際にコマのように回りながら「あ〜れ〜」と言わなくてはならない。
 また男性側は「いいではないか、いいではないか」と言わなくてはいけない(ヤバイって)


注・2
 墨と筆でその年の目標などを書くこと。あまり現実的なことを書くと先生に怒られる。


注・3
 JAPANの年始における料理。スキヤキ,フジヤマ,and so on!
 中身は神秘のベールに包まれている。


注・4
 JAPANのスポーツ。他にコマ回し、凧あげ、カルタ取り、野球拳、カバディなどがある。


注・5
 知らない人はお父さん、お母さんに聞いてみよう!(ってそれはやめなさい!!)


注・6
 年に入って一番初めに仕事をすること。
 別名、仕事始め(おおっ? これだけまじめ?!)