DAより


* 聞くな……
 「正真正銘100%処女の血だ、幾らかでも楽になったか、婦警?」
 葉巻をふかしながらのインテグラの言葉に、
 「インテグラ様、歳おいくつでしたっけ?」
 ドゲシィ!
 「余計なお世話だーーー!!」
 インテグラの蹴りで、セラスは夜空に消える。
 「ウォルターさんが泣いてましたよ〜〜〜〜」
 そんな叫び声を残して...



* 侵入を阻止せよ!
 カッ
 空母イーグル上にソイツは降り立った。
 黒ずくめのその姿の中に唯一光るは二本の牙。
 肩に猟銃の中でも長い銃身を持つモノを担いでいる。
 胸に月明かりを受けて輝くペンダントはハーケンクロイツ。
 眼鏡の奥の瞳で空母全体を眺めながら、ニヤリと微笑む。
 「かくして猟場は猟師の手の中に、有象無象の区別なく、私の弾頭は許しはしないわ」
 満月の下、空母にはそこかしこに海の男達の悲鳴が響き渡っていた………


 場所は陸と海の差はある。
 だが同じ『国家』のとある屋敷だった。
 「装備を整え待機せよ、婦警」
 ヘルシング機関長インテグラの鋭い言葉に、セラスは姿勢を整えて次の言葉を待つ。
 「ウェールズ沖洋上にて空母イーグルが連絡を途絶えた。おそらく奴らだ」
 ゴクリ,唾を飲むのは聞くセラスだけでない。
 言葉を放つインテグラもまた、額に汗している。
 セラスはこの英国への上陸を虎視眈々と狙っているその組織の名を我知らずと呟いていた。
 「奴ら……ホモ集団・ミレニアムッ!!」
 「何十年も女性と話したことのない、ムサイ男達の集団だ,奴らはこの伝統ある英国を汚そうとしているッ」
 バン!
 インテグラが机上に叩きつけたのは1冊の雑誌。
 「沈黙したイーグルから唯一送られてきたものだ、挑戦状とばかりに、な」
 「これはっ?!」
 婦警は絶句。
 雑誌の名は『さ●』。
 「こんな…こんなっ,▲ぶはマズイですッ,こんな文化を…こんな文化を上陸させる訳にはいきません!」
 「その通りだ,アーカードやウォルターがこんなものにでも目覚めでもしたら…」
 「!! セラス=ヴィクトリア,敵勢力を…空母イーグルに巣食う海の男達ごと殲滅します」
 「元仲間であった同国人を始末するのは苦痛だと思うが……頼むぞ、婦警」
 インテグラに背を向け、退出するセラスの瞳は戦士のそれ。
 「この作品にホモを登場させるくらいなら、私は吸血鬼にでも受け手にでもまわります」
 ハルコンネンを肩に担ぎ、セラスは攻め手であるインテグラの前を後にした。
 闘え、セラス,挑め、インテグラッ!
 君達に明日があることを皆は祈ってるぞッ!!



* 欲しい(ネタ提供 サカヱダ氏)
 「ハァハァ」
 荒い息がセラスの唇から漏れる。
 「ハァ…」
 最後に大きな溜息一つ。
 色の薄い唇を血の赤に僅かに染めセラスは舌を絡めた上司の指を、己の意思とは別に名残惜しそうに離した。
 「正真正銘100%処女の血だ、幾らかでも楽になったか、婦警?」
 葉巻をふかしながらのインテグラの言葉に、
 「あ、う、その……す、すいま、せん」
 恥ずかしいような、困ったような顔で俯くセラスであった。


 数日後…
 「ハァハァ」
 再び荒い息がセラスの唇から漏れていた。
 「くぅっ!」
 思わず伸びてしまった己の右手を、左手で押さえる!
 彼女の目の前の机の上には、血液パック……ではない。
 インテグラの葉巻の入ったケースだ。
 それを前にセラスは涙すら浮かべて己を制御――できなかったっ!
 「もぅ、ダメ!!」
 セラスの手が葉巻ケースに伸び、中から一本葉巻を取る。
 先端を噛み千切り、傍らに置いてあったジッポで火を灯す。
 たゆたう煙を胸一杯に吸い込む婦警。
 「ハァ…」
 満足げな溜息一つ。そして―――
 涙。
 「私の体、いったいどうなっちゃったんだろう??」
 インテグラの血を飲んでニコチン中毒になってしまったとは、血液の本人は気付いていても言えなかった。
 禁煙したくなかったから……


おわり