ヴェアヴォルフ
誰が為に戦う?


戦鬼出動>>
 ヘルシング邸へと向かう一台のバス。
 小さくなって行くその後姿を見送る映像を眺めながら、飛行船の中で小太りの男は傍らに立つ白衣の男に問うた。
 「これであの男のいるヘルシングの実力を見ることが出来るわけだな、博士?」
 「はい。そして我々の開発したゾンビの機能性も図れるわけです」
 「そうか。しかし出来損ないと言えども今回仕向けた彼ら兄弟はヴェアヴォルフ。どのような『機能』があるのだ?」
 小太りの男は続けて問う。
 ヴェアヴォルフ―――それは吸血鬼であり、かつ特殊な能力を持つ戦鬼。
 例えば『伊達男』の異名を持つアルハンブラはトランプを操る能力を。
 『魔弾』と呼ばれるリップバーンはその名の通り、決して外すことの無い射撃能力を。
 では今回仕向けた兄弟の戦鬼にはどのような能力が?
 博士は小さく含み笑い。
 そしてもったいぶったようにこう、告げた。
 「弟のヤンは血を吸った相手の尿酸値を知ることが出来ます」
 「……ほぅ」
 「兄のルークは血糖値を知ることが出来るのです!」
 「…なるほど」
 小太りの男は頷き、そして、
 「それに何の意味があるのかね?
 だから捨駒になったのであろう。


戦鬼考察>>
 「へー、吸血鬼にも色んな人がいるんですねぇ」
 婦警ことセラスは、たった今ウォルターから聞かされたヴェアヴォルフについての説明に深く頷いていた。
 「セラスお嬢様にもそのような能力があってもおかしくないはずですぞ」
 「そんなー、ウォルターさんったら」
 おちゃらけて笑うセラスをしかし、ウォルターは真剣な目で見つめている。
 「なにしろ吸血鬼の王たるアーカード様の僕。むしろないはずがございません」
 「え、えっと……」
 セラスは逃げ場を求めるかのように左右を見まわし、
 逃げ場を見つけた。
 「あ、マスターぁぁ!」
 「何だ、婦警?」
 たまたま通りかかったアーカードを見つけて捕まる。
 「私の、私に特殊な能力なんて……あるんですか?」
 「あるぞ」
 「「え??」」
 セラスのみならずウォルターも驚きに目を丸くした。
 「ど、どんな能力なんですかぁぁ!?」
 「そりゃ、お前」
 アーカードはウォルター、セラスと視線を走らせ、
 「暗闇の中をおっかなびっくり歩く能力だ」
 「「そんな能力、いらねーーー!!」」

おわり