ここは悩める子羊達の訪れる私の教会…さて、今日の訪問者は?



アンデルセン神父の懺悔室



* 婦警のば・あ・い
 「私、今の仕事に自信がないんです。今の職場には上司が2人いるんですが、2人とも私のことを名前で呼ばないで「婦警」としか呼ばないんです。もう全然、婦警らしい仕事していないのに,あ、ごめんなさい、婦警の制服着てますけど、今はずいぶん違う仕事してるんです」
 「違うお仕事,ですか?」
 「はい、確かに私、前は普通の婦警だったんです,それが、とある吸血鬼騒動で、今の上司に吸血鬼にされてしまったんですよ」
 「…ほぅ、それは不幸とでも申しましょうか」
 「ええ,それはそれで仕方がないんですが,それ以来、部署も変わりまして…なんか銃で撃っても死なない怪物相手に大殺陣回りするんです,これが。もう、道路整理とかしてた頃とは大違いなんですよ」
 「大出世した…のではないのですか?」
 「違いますよぉ! 厳しい仕事の割にはお給料上がらないし,というか、私生活を制限されてしまってるんです」
 「制限ですか? それは一体?」
 「無理矢理、社宅に入れられましてね,その社宅は上司のそのまた上司,局長さんでインテグラさんっていうまだ若い,どこぞのお偉いさんの娘さんらしいですが、その邸宅の地下にある棺桶の中なんですよぉ! 信じられます? こんな待遇!」
 「…」
 「さらに、私生活の衣類なんかも提供されるということだったんですが、全然そんな気配がなかったんで、上司のアーカ−ドさんに頼んだんです。「今着ているこの婦警の制服、ボロボロになってしまったんで、なんか着る服を支給して下さい」って」
 「ほぅ」
 「そしたらこの制服,20着も寄越してきたんです。私は次元大助の帽子や綾波レイの制服かい,と心の中で叫んでしまいました」苦笑する婦警。
 「言い方が悪かったのでは?」
 「うう…どちらかと言うと嫌がらせかも知れないです。アーカ−ドさん,あ、この人私の直接の上司で私をこんなにした吸血鬼なんですけど,この人、私に「俺のことはマスタ−と呼べ」なんて言ったんです」
 「偉そうな人ですね」
 「でしょう? それで私、召使いじゃないんですから呼びたくはないんですけど、恐いんで「命令ならそうするわ」なんて答えたからでしょうか,もしかして?」
 「可能性はなきにしもあらず,ですね」
 「でも、人間、慣れって恐いものです。もう慣れてしまいましたよ。それよりも仕事自体が恐いんで、そんなところで仕事をしているもんですから、感覚が麻痺しちゃうんです」
 「感覚が麻痺というと?」
 「なんか,こう、血を見ると嬉しくなっちゃうんですよ,吸血鬼になったせいでしょうか? そうそう、それ以来、日光に弱くなっちゃったんです,それに私の大好きだったガ−リックを効かせたステ−キも食べられなくなってしまいまして。労災ですよね,これ」
 「一度医者に見せてもらっては? 病気かも知れませんよ?」
 「それが吸血鬼になってからは怪我もすぐに治っちゃうんです。この間も無茶苦茶、強い神父さんに7、8本の小剣で床に縫い付けられて灰燼に帰されそうになったんですけど、その傷なんて次の日には治っちゃいました。」
 「そうですか,仕事、つらいんなら辞めてしまっては?」
 「…今もそれを考えたんですけど、こう改めて考え直してみると、アーカードさんも部下にちゃんと仕事の仕方を教えてくれますし、インテグラ局長もフォロ−はしてくれるし…なんかもうちょっと頑張ってみようかなぁなんて、思えるようになりました!」
 「良かったですね,これからも頑張って下さい…と言いたいところですが」
 「はい?」

 壁の向こうの神父の手には、2〜3本の小剣が握られていたという……


* アーカ−ドのば・あ・い
 「ようこそ、悩める子羊よ」
 「別に悩んではいないのだがな。まぁ、敢えて言うのなら氷のように冷たい、行き遅れのマスタ−と無能な部下との人間関係が憂鬱なところか,フフフ」
 「吸血鬼が人間関係言うなぁぁ!!」神父の剣が再び光った……


* インテグラ嬢のば・あ・い
 「…よ、ようこそ」
 「? 良く分からんが苦しそうだな」(注:壁に仕切られている為、相手の様子は分からない)
 「相談というのは体力を使いますので…さぁ、貴方の悩みは?」
 「え? ええと、私は生まれも育ちも良家なもんで男性と話すのは慣れておらん。こんな私に良縁というのは訪れるのであろうか?」似合わず顔を赤くして俯くインテグラ嬢。
 「仕事場に気になる方はいないのですか?」
 「仕事場? 陰気な吸血鬼の男とすっとぼけた婦警だけだ」
 「あきらめるんですな,ハハハ…」
 「ほぅ」インテグラ嬢の後ろ手にはフルオ−ト44マグナムが握られていたという……


 ここは悩める子羊達の訪れる私の教会……仕事はいつも命がけです。
 貴方も悩める時には是非とも足をお運び下さい。


おわり

これはレイニーさんへお贈りしたものです。