真夏の夜の夢



 ウォルター:
 某月某日、通称「化け猫屋敷」と呼ばれる館で、パーティが開かれました。
 「祝壱万Hit」というそのパーティの参加者は、敵対する様々な面つが揃っていたとかいないとか……
 事件が起きたのはその会場内。
 次の日の朝、宿泊中だったカトリック神父アンデルセン氏が全身の血を抜かれた状態で発見されたのです。
 容疑者と思われる3名の該当者に迫ってみました。


 吸血鬼A氏:「吸う相手は、選ぶぞ」

 (一応)吸血鬼Sさん:「え…なんか臭そうだから、やです」

 吸血鬼A氏:「血も吸えない奴が偉そうなことを」

 喰人鬼V兄弟Y氏:「濃い顔の奴は、喰わないことにしてるんだ」

 吸血鬼A氏:「ほう、珍しく意見が合いそうだな」

 吸血鬼Sさん:「やっぱり濃いですよね,この人」

 喰人鬼V兄弟Y氏:「だよね,今の内に蹴っちゃえ蹴っちゃえ」

 A&S:「「蹴り蹴り……♪」」



 「と言うことです、お嬢様」
 淡々と状況報告、及び自作のビデオを見せる老獪ウォルター。どういう事なのかは結局分からないが。
 ボリボリ
 「ふぅむ」タイトな黒服に身を包んだ、淑女とも言うべき女性は、その鋭い眼光を眼鏡の奥から光らせる。
 彼女の視線の先には、全身カサカサに乾いたアンデルセンの姿があった。
 その表情からは、何故か喜びの表情が見て取れた。
 ボリボリ
 「吸血鬼でもここまで吸わんぞ,なぁ、アーカード」彼女の傍らに立ち竦む黒衣の男に尋ねる。
 「ああ、しっかし、こいつの血を吸う気にはなれんが」
 ボリボリ
 「ところで局長,さっきからどうして首筋を掻いているんです?」
 アーカードの後ろに控えるようにしていた婦警が不思議そうに尋ねた。
 「ん? ああ、どうも蚊に刺されたみたいでな」
 インテグラは首筋を見せる。と、そこには親指の爪くらいにふくれた、蚊に刺された後がある。
 「はぁ、蚊ですか,ぬぬ?!」
 キュピーン,婦警の頭の中でそんなひらめき音が鳴った。
 そんな婦警を尻目に、ウォルターがインテグラに忠言する。
 「お嬢様、犯人はまだこの屋敷のどこかにいる可能性があります」
 「昨晩の出席者の中には犯人らしき者はいないな,となると呼ばざる客か」顎に手を当て、推考する局長。
 と、婦警がアーカードのコートの裾を引っ張った。
 「ピーンときましたよ、マスター。犯人は蚊ですよ!」
 「?」
 「局長の暗黒魔導な血を吸った蚊が、怪物化したんですよ!!」マンガの見過ぎだ,セラス。
 「セラス様,それはちょっと…」額に汗のウォルター。彼の後ろの視線が怖い為か?
 「ふむ、その線で調査しよう」スパッとアーカード。
 「ア,アーカード様まで」
 「お前ら……」額に視覚化できる程、ひし形を浮かべたインテグラが爆発する寸前,
 「ふふふふふ」 何処からか響いてくる笑い声。
 「良くぞ我の存在に気がついたな! 我こそはモスキートン伯爵,怪しげな成分の混じった血によって突然変異したキング オブ 蚊であ〜る」
 プワ〜ン,耳障りな音を立てて彼らの前に飛来したのは、タキシードを着こんだ郷ひ×み,口にはストローを一本くわえている。
 「やはり!」身構える婦警。
 「気をつけろ、婦警! こいつ…できるぞ」
 「古いCMネタだからって馬鹿には出来ないと言う事ですか!」婦警はたじろぐ。
 「おいおい…」
 「貴方がアンデルセンをこんな目に…酷い事を」心にもない事をセラスは一応お約束で言い放った。
 「ふふふ,しかし残虐性という点においては、宿主の性格の1/256だ」婦警の言葉に、斜め45度の姿勢を維持して答えるモスキートン。
 「お〜い」しかしインテグラの声を聞くものはいなかった。
 ちなみにウォルターは自らの危険を察知してこの場から緊急待避していたりする。さすがは老獪な戦士!!


 おもむろにジャッカルを抜き、モスキートンにぶっぱなすアーカード。
 「無駄無駄無駄無駄ァァ!!」素手で弾丸を叩き落とす。デュオを彷彿とする。
 「マスター,このぉ!」
ドグァ!! いつの間に用意したのか、ハルコンネンを立て続けに発射する婦警。
 しかしこれもまた、素手で跳ね返されて、屋敷のあちこちを破壊する。
 「止めんかぁ,屋敷が崩れる!!」
 「貧弱貧弱ゥゥゥ!!」
 「グゥ」
 「キャ!」
 アーカードと婦警はモスキートンによって壁に叩き付けられる。
 「こんなものではないぞ,私はあのインテグラの能力が使えるのだぁ、ガハガハガハハハハハァ!!」豪快に笑う郷ひろ○。
 「な、何の能力だ?」
 「1:激辛カレーの大盛りを二分で平らげることができる
  2:のび太に勝るとも劣らない、あやとりテクニック
  3:実は少女マンガフリーク  などなどだぁ!!」

 「「む、無敵だ」」おののくアーカード&婦警。
 「どこがだぁぁぁ!! そんな趣味は私にはないわぁぁぁ!!」
 インテグラは懐からキンチョールを取り出し、辺り構わず撒き散らす!!
 「「「ぐ、ぐあぁぁぁぁ!」」」 不思議なことに3つの断末魔が、屋敷に木霊したという―――


追記1
 アンデルセンはお湯を掛けると復活したので、プロテスタント・カトリックの間の問題には至らなかったそうな。
 さらに、どうやら郷△ろみの隠れファンだったらしい。
 「I shall return!」


追記2
 ヘルシングの一般隊員に通常武器としてキンチョールが付加されたとかしないとか……?


追記3
 「いつものことですな」
 縁側で一人、お茶を啜るウォルター。
 その傍らには、蚊取線香の煙が一筋、登っていた。


おわり

これはレイニーさんへお贈りしたものです。