人はそぅ、簡単に変わるものじゃないって思ってた。
 もちろん、だから私も変わらないと思ってたんだ。
 でも…
 私は自分自身、確かに変わっているのに今、気が付いた。
 そうだ。
 この人に会ってから,会った瞬間に私は変わったんだ……そう、思う。



Pride


 満月がキレイだったって、この人が言っていた『あの日』まで、私は暗闇がキライだった。
 何でキライだったかって?
 …どうしてだろう??
 でも確かにキライだったの。
 孤児院にいる間は、寝る時はいっつもライトスタンドをつけたままで寝ていたもの。
 闇の中から手が伸びてきて、私を掴んで引き擦り込んでしまう…そんな恐さをいつも私は感じていたと…今思い返せばそんな説明がつく。
 だから真夜中の星空なんて、しっかりと見たことがない。
 吸いこまれそうな真っ暗な夜空は、私を知らない世界につれて行ってしまいそうだったから。
 でも、今は違う。
 この人に『噛まれた』瞬間に、私は『変わった』。
 それに気付いたのは、夜空を見上げている今この時。
 戸籍上は、私は死んでいる。
 人間も、ヤメている。
 けれど。
 そんなものは私自身が変わるということじゃあ、ないと,そぅ思ってた。
 「人間の頃のクセは全て忘れろ」
 この人はある時、そんなことを言った。それに私は生返事。
 私のことは、私自身が良く知っているって思ってたけど、そうじゃなかったんだって今、同時に気付く。
 私は再び顔を上に。
 夜空に、三日月が輝く。
 そこに在る暗さに私は心からの落ちつきを,冷たい光には冴えるような活力を感じる。
 私は、変わってしまった。
 実感する。
 まわりの全てが変わっていこうが、私は変わらない,そう思っていたのに。
 私は何を信じて生きていけば良いのだろう?
 見上げる夜空は、満天の星空だった。
 無数の光が闇に負けじと、己をアピールしているかのよう…
 そぅ、夜空には星という輝きがある。真っ暗なわけじゃぁ、ない。
 それに気付いたから、恐くないのかな?
 私は変わったんじゃなくて、強くなって恐いモノに顔を向けることが出来たから…なのかな?
 でもそれもやっぱり、私が変わったってことだよ…ね?
 私は私のままでいられるのかな?
 私は無数の星々に、願う。
 ”私が、私であれます様に…”
 「婦警ーー! 何ぼさっとしている? 行くぞ」
 「あ、はぃ〜!!」
 唐突な声に私は我に返って、この人の真っ黒な背中を追う。
 もう一度だけ、夜空を見上げた。
 金色に輝く冷たい三日月。
 私は月に今の想いを、祈る。
 ”この人への私のキモチ…これだけは変わりませんよ〜に”
 祈りと言うより、誓い。
 今のところ、このキモチこそが私が私であるための、Pride...

BGM 〜 Pride -- Miki Imai 




これはレイニーさんへお贈りしたものです。