I know you.
Do you know me ?

 

 深夜1:45――
 「君は時間稼ぎをしているつもりの様だが」
 海斗は言って、ただ一つの机に向って歩く。重厚な木の机である。
 「ソレは全く無駄だよ」
 コンコン、彼が叩くは机の上に置かれたCD−ROMドライブ。
 それが誰も使っていないはずなのにアクセスランプが明滅していた。
 「今頃、君のお友達は私特製のウィルスでHDDを初期化されていることだろう」
 ピクリ、スプーキーの右手の指が動く。
 「皐のマスターディスクを探している様だったが、それは無駄なことだよ」
 「無駄?」
 「そう、皐にはマスターディスクは存在しないのだから」
 にっこりと、海斗は彼には全く似合わないさわやかな笑みを浮かべた。
 「なん…だと?」
 「皐は雅の自動アップデート機能を用いて導入されるのだよ」
 「………」
 信じられないものを見つめるように、スプーキーはファウストを見つめた。
 「無理矢理通信ポートを開放させて導入する、それは君のかつての論文による技術だよ、珪?」
 「しかしその為にはとんでもないマシンパワーが必要なはず…っ!」
 そこまで言って、スプーキーははっと息を呑む。
 思い当たる節はあるのだ。
 「それは君の敬愛するシャーウッドこと魔術師・梅崎が開発してくれたじゃないか、アクア オブ ソウルを、さ」
 「まさか……そうよね、橘の財力があれば不可能じゃない。やってくれるわね、ファウスト」
 ギリ、とスプーキーは唇を噛む。
 「そして君を今宵ここに招いたのは、皐がこの世を席巻する瞬間を共に分かち合いたかったから。さぁ」
 海斗は腕時計を見て、言った。
 「あと15分だ」


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不連続設定

Part.17 風に散る金の粉



≪Site of Camera≫

 「うっ、これって一体…」
 「なに、これは!!」
 市村と若桜はノートパソコンの液晶画面を凝視しつつ、唸る。
 「皐はこの中に存在する」
 若桜は目の前のアクア オブ ソウルの塔を見上げて唇を噛む。
 市村は確認する様に、彼女の言葉を続けた。
 「そしてそれは雅のアップデート機能によって導入される。それだけじゃない,皐は近くにある機器に関して繋がりを求める。異なるOSであっても…それはつまり」
 「伝染病の様ね、皐の相互リンク機能は今の世の中じゃ、またたく間に広がるわ」
 「同時に盗聴機能も網の目の様に広がって行くってことか」
 「このPCなら可能ね、生体ベースである巨大なCPUを積んだ、このPCならば」
 どちらともなく、息を呑んだ。
 PCの稼動音であるゴゥンゴゥンという音だけが部屋を一時支配した。
 と、
 「誠一さん!」
 「ん?」
 血相を変えた若桜が彼の腕を引っ張ってその場に座らせる。
 「なになになに??」
 「額から血が出てるじゃない!!」
 見ると市村の右寄りの額は割れ、血が頬を伝って流れていた。
 先程の警備ロボットとの一戦で掠ったのだ。
 「…って気付くの遅いって」
 「誠一さんも少しは騒いで欲しいわ」
 若桜は懐からハンカチを取り出し、きつく彼の額に巻いた。
 ジワジワと赤黒く染まっていくが、目に入る事はコレでなさそうだ。
 彼の額に手を回しながら、若桜はボソリ、呟いていた。
 「皐はもぅ、止められない」
 「そうかな?」
 「え??」
 明るい声に驚き、若桜は彼を見つめる。
 「盗聴機能のソースだけを排除できないかな?」
 「でも…」
 若桜は時計を見る、この巨大アクア オブ ソウルを調べるうちに分かった事だが、本日2時に皐は発信されるのだ。
 それを止める為に物理的に阻止するという方法もある、つまりはこの装置を破壊することだ。
 しかしアクア オブ ソウルには発火性があるらしい。どの程度か分からないが量が量だ、危険極まりない。
 「プログラムの解放まであと…10分よ」
 「そうだね、10分もある」
 ニッコリ微笑む市村に、若桜は上目使いにこう問うた。
 「…ご報美に何をくれるかしら?」
 「学食で何でもおごって上げるよ、一食だけね」
 「おけ!」
 若桜の指が再びキーボード上で踊る。
 そんな市村は、己もまた気付くのが遅かった。
 彼女が彼のことを呼ぶ名が変わっていることに。
 その時、警備灯が点灯した。
 そう、アリスの行った警備システムのハッキングがとうとう解除された瞬間だった。


 ピーピーピー
 「ん?」
 海斗は警告音に首を傾げる。そして机に歩み寄りその内容を知ると驚きの表情を顔に現した。
 「スプーキー,君はまだ切り札を持っていたのだね」
 パチン
 彼が指を鳴らすと、天井から大きなスクリーンが下りてくる。
 映像が映った。
 そこはまるで巨大な研究室。部屋の中心には巨大な円筒が立ち、その下には男女の姿があった。
 「あれはセージとアリス…かな?」
 問うファウストにスプーキーは軽く舌打ち。
 まさか彼女は二人がここまで侵入してくるとは思っていなかったのだ。
 いや、そもそもセージは部屋で乙音によって昏倒させられたのではなかったのか?
 アリスがここにやってきて警備システムの支配権を奪うのは予測していた。
 それによってパワーにマスターディスクを電脳世界側から奪取するように依頼したのだから。
 しかしここまでやるとは思いもよらなかった。
 ”セージか……不確定要因ね”
 二人はモニターを見つめる。
 果たして残された僅かな時間で、どこまでできるのかを試す様に………


 市村は研究室の扉を閉め、机やら椅子やらでバリケードを作っていた。
 扉の外には警備ロボットが多数。
 侵入者である二人を排除し様とうごめいているのだ。
 ここでリトルバードが現在手がけているSECOMの監視が回復したとしたら、完全に終わりである。
 「あと10秒!」
 扉の前で身を以って塞ぎながら、市村は叫ぶ。
 ノートパソコンに向って両手を動かす彼女に対して。
 「あと5秒」
 4
 3
 2
 1
 深夜2時だ。
 「リターン!!」
 叫ぶアリス。
 彼女の改変した皐は、同時に世界へと発信された!



 深夜2時、梅崎邸――
 「ん?」
 圭は膝の上で寝息を立てる沙菜の髪を撫でつけながらTV画面に見入っていた。
 と、その画面が僅かにぶれたような気がしたのだが…
 どうでも良いことだった。



 「やったか、玲?」
 「ええ………んなっ!」
 アリスの表情が喜びから驚愕へと変わる。
 そう、盗聴機構だけ削除したはずの皐は……


 「クククッ、ハッハッハ!!」
 モニターの前で笑うは海斗。
 「皐は自己修復プログラムがあるのさ。欠損した機能を自ら修復する機能がな」
 そんな彼の姿を横目で見ながら、スプーキーは拳を力強く握り締めていた。


 キーボードを叩くアリスの表情は青い。
 「ダメ、皐は流動性のある暗号と化していてもぅ中身を読むことができない!!
 「暗号化する前のバックアップは?」
 「そんなの取ってる暇はありませんよっ!」


 「暗号化……これは私の技術だったね、珪」
 「そうね、そして絶対に誰にも破る事は出来ない。一億人に一人生まれるかどうかの、先天的暗号解読者でない限り」
 と、モニターが淡く輝き出した。
 否
 モニターに映るアクア オブ ソウルの塔が淡く輝き出したのである!


 「「?!」」
 目の前の水色の塔が淡い光を放ったかと思うと、次の瞬間にはその光は収まった。
 そして市村と若桜は驚きに声が出ない。
 アクア オブ ソウルの塔の内部に、人影が映っていたのである。
 白い磁器のような肌をした巫女の少女,片手には抜き身の刀。
 瞳は細長いサングラスのような物で覆い隠されていて見る事はできなかった。
 「ツメが甘いよ、若人諸君」
 そう、赤の巫女は目の前の二人に言う。
 彼女は伝説のハッカー『赤の巫女』,この姿は単なるイメージ。
 しかし不安定な電脳空間においてこれほどまでにはっきりとした自我として姿を保てることは、彼女のハッカーとしてのピカイチの腕を証明していると言える。
 「そもそもバックアップは何にも先んじてやっておく作業よ、アリス=リデル」


 「赤の巫女だと!」
 初めて海斗の顔に動揺が浮かんだ。
 赤の巫女――ほとんど都市伝説と化している伝説の特A級ハッカー。
 かつてはこの世界を統べるほどの力を以ってして、政府関係者を恐れさせたという。
 「また出たか、気紛れ屋が」
 スプーキーは忌々しげに呟いた。だが彼女の声は今は巫女には届かない。
 赤の巫女はセージとアリスに先輩然としてこう告げた。
 『相互リンク機能を逆手に取れば良いだろう』
 『あ』そんな声がアリスから放たれていた。
 『相互リンク機能を用いて盗聴機能を取り除くウィルスを散布するのね』
 『そう、ウィルスは欠損ではないからね。そして暗号化されたOSには一旦取りこまれるとそれを取り除く術は残されていない』
 言って巫女は両手を胸に。
 そして広げた。そこには金色の粉がある。
 金色の粉はまるで風に流れる様に彼女の手の中から零れ、散る。
 それは赤の巫女によって創り出されたウィルスだった。
 盗聴機構のみを封鎖する、彼女特製のウィルス。
 皐が広がったのと同様に、網の目と化したネットワークを介してウィルスは皐月と一緒に家電へと浸透して行く。
 『セージにアリス,そしてイリーガルコネクション諸君。卿らの協力には感謝する。そしてファウスト,皐の暗号化前のソースコードは私が責任以って保管する。次なる努力に期待するよ』
 にっこり微笑み、赤の巫女は言った
 「ま、待て!」
 聞こえる訳もない海斗の言葉。
 消え行く赤の巫女は目の前の二人に優しく告げた
 『このビルのセキュリティは私がしばらく預かろう、早く離脱なさい』
 モニターの中の二人は慌てて立ちあがると扉から走り出て行く。
 音からも分かる,あれほど扉の外で騒いでいた警備ロボットが完全に沈黙しているのだ。
 「赤の巫女か……是非とも仲間に欲しい人材だ。そう思わないか、スプーキー?」
 振り返るファウスト。
 しかし声をかけたはずの相手は、すでにこの部屋にはいない。
 彼はふと窓へと歩み、外を眺める。
 すると赤いMR.2が発進するのが見て取れた。
 「まったく、君には敵わんよ、珪」
 一人となった橘ネットワーク社社長室でしばらくの間、自嘲気味とも思われる笑い声が響き渡っていた。



≪Site of Seiiti Itimura≫

 車のエンジン音が聞こえ、それは目の前を通り過ぎて行った。
 「お姉ちゃん!」
 「うまく脱出できた様だね」
 俺達は赤いMR.2を見送りながら息を整えると、再び全力で裏門目指して駆け出した。
 やがて見えてくるべスパ。
 と、
 「ニャア」
 「ん?」
 俺は足を止める。
 「どうしたんです、誠一さん?」
 「んー、なんか聞き覚えのある声が」
 「ニャア」
 それは頭上からだった。
 ビルを取り囲む様にして立つ樹木の枝の間に何故かミィがいたのだ。
 「なんでこんな所に?!」
 思うも束の間、
 「その声は…誠一さんですか?」
 「乙音か?!」
 やはり頭上からの声に俺は目を凝らす。
 「はぃ! あ、きゃ、きゃーー!」
 ザザザザザ!
 枝を突き破って何かが落ちてきた。
 サッカーボール大のソレは尾を引いて俺の手の中に収まる。
 「ナイスキャッチです」
 それは喋る、乱れた髪の女の生首だった。
 「うぎゃーーー!」
 思わず玲にパス。
 「キャー!」
 彼女も泣きながら叫び、再び俺に投げ寄越し、
 「アタック!」
 「ぶべ!」
 地面に叩きつける……って?
 「あれ、乙音??」
 「痛いです〜〜」
 鼻を赤くして涙を流すのは紛れもなく乙音の……首だった。
 「「恐っ!」」
 「仕方ないじゃないですかぁ、シャーウッドさんと戦ってこうして壊れていないだけでもラッキーでしたよ」
 シャーウッド――有森というその男を思い出す。
 アレはそう…俺の予測が正しければ、人間ではない。
 「…そか、勝ったのか?」
 「はい!」
 力強く頷く乙音を抱き上げて、俺は玲に向って微笑む。
 「さて、帰ろうか」
 「「はい!」」
 「にゃー」
 きっと家に着く頃には空も白み始めているだろう。
 そしていつもと変わらない日々が始まるに違いない。
 ”それでいい”
 漠然と、そう思う。


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〜 Staff Roll 〜

Story Written By Gen


 「セイちゃ〜ん! 遊びに行かへんか〜〜」
 声に起こされたのは午前9時。
 セミの声と夏の日差しが暑すぎる、それでいて眠くて仕方のない時間だった。
 「プール行こうで、なー」
 コイツを部屋に上げた母親に殺意を覚えたりもする、よりによってコイツを…
 「市村さん、寝てばっかりいちゃダメですよー」
 こちらは沙菜ちゃんのようだ。
 ”そう言われても、昨日の今日でまだ全然寝てないんですけど…”
 「市村くん、泳ぎに行きましょう」
 「あれ?」
 そこには白いワンピース姿の玲の姿。
 「夏はあっと言う間に過ぎてしまいますよ」
 眠気など全然見当たらない彼女の微笑み。
 それを見ていると、俺の体から眠気と疲れが消え去って行った様に感じた。
 「そだね」
 身を起こす。
 「先に外行ってるで」
 「あ、待ってよ、お兄ちゃん!」
 慌しく部屋を出て行く二人。
 俺は欠伸を一つ、大きく背を伸ばして彼女を見上げた。
 「おはよう、玲」
 「おはよう、誠一さん」


 Support Project Name ―― Otone Project

 Illust ― Y,C.
 Voice ― Serene Hanetuki


 亜門は帰ってきた。
 全身に刻まれた浅い傷跡と破れかけの衣服は、修行が結構ハードであった事を物語っていた。
 ほんの数日だというのに、彼は妙にこの北野天神社を懐かしく感じる。
 夏の日差しを受けて、彼は目を細めながら母屋へと足を踏み込んだ。
 「ただいま」
 「おかえりなさい」
 彼の声に対して返事がある。一人留守番していた乙音の声だ。
 亜門は玄関に腰を下ろし、靴を脱ぐ。
 同時に背負い袋の中から包みを取り出した。
 背後に気配、彼は振り返る。
 「おみやげ、買って来たんですけど………」
 「まぁ、ありがとうございます」
 亜門の動きが硬直していた。
 彼の目の前にいるのはいつものたおやかな物腰の乙音ではなく…いや、本人ではあるのだが、
 「どうしたんですか? 亜門さん??」
 まるでガンタンクの胴体なしの状態の――首の下にキャタピラがついた――生首な乙音に真っ白になる亜門だった。
 ガラリ
 再び玄関が開く、そこには那智老の姿。
 「おお、亜門も帰ったか。ん? 茶菓子か??」
 那智老は動きを止めたままの亜門の手から包みをひったくり、家に上がる。
 「乙音さん、お茶にしますかの?」
 「そうですね、今お湯を沸かしますわ」
 「どうやって沸かすんじゃ?」
 「あら、それもそうでした」
 ハッハッハ,笑いながら乙音と那智老は部屋の奥へと消えて行く。
 後には未だにショックで動けない亜門の姿があった。
 どうやら修行の成果は余りなかった様である。


 Guest Acter and Actress

 Ogata Mutumi (From last kiss)
 Endou Akira (From last kiss)
 Emperor (From leaflet)
 Aka no Miko (From leaflet)


 くぁぁぁ……ふぅ
 ミィは大きく欠伸をする。
 世間では夏休み。
 日の暮れた境内にはいつものメンバーが集まっていた。
 ”眠そうですな、ミィ殿”
 ”いつものことさね”
 そんな猫に話しかけるは誠一の弓――那須与一の弓だ。
 ”今回はともあれ、大事にならずに良かったですな”
 木に立て掛けられた弓は、同じモノである乙音を眩しそうに見つめた。
 彼女は初めて手にした花火を振りまわしてキャーキャーと騒いでいる。
 ”充分大事じゃなかったかの?”
 再び欠伸,ミィは面倒くさそうに誠一を見つめた。
 彼の隣には若桜の姿がある。屈託のない微笑みがミィの内心をホッとさせる。
 この微笑みが誠一の周りにある限り、彼は彼の祖父が望んだ通り幸せであれるだろう。
 そしてそれはミィが託された唯一の繋がりであり、呪いでもある。
 ”まぁ、このまま続いて欲しいものじゃて”
 ”その通りですな”
 猫と弓は言って、境内を見つめていた。


 World Based on Virgin Kiss (Ao Ogata Produce)


 ぽとり、線香花火が落ちた。
 「結構もつね」
 「そうですね」
 玲と微笑み会う。
 「なにをちちくり合ってんのよ!」
 げし!
 「蹴るな!」
 振り返るとそこには、北見嬢と隠れて三郎の姿がある。
 「こらこら、らぶらぶ〜な二人を邪魔しちゃあかんで」
 ひゅばひゅばひゅば!
 「「ぎゃーー!!」」
 言いながらロケット花火で二人を狙撃するのは圭だ。
 「だれがらぶらぶ〜だ!」
 ロケット花火を圭に打ち返しながら俺。
 そんな様子を玲はしゃがんだままクスクス笑って見上げていた。
 ――師匠の弓の指導の後、遊びに来た梅崎兄妹が持ってきた花火セット。
 今、それで盛りあがっていたりする。平和な光景だ。
 ヒュン
 パン
 小さいながらも打ち上げ花火もある。
 点火したのは那智師匠,それを沙菜ちゃんと、修理をようやく終えた乙音がはしゃいで見上げていた。
 その周りでは亜門がぶつくさ言いながら花火を終えたごみを拾って歩いている。
 いつもの、光景だ。
 「玲」
 「ん?」
 俺は彼女に右手を差し出す。
 「俺達も打ち上げの花火をしようよ」
 「うん!」
 掴んだ彼女の手を引っ張って起こす。
 その時だった。
 ドン!
 音と共に夜空に光の花が咲く。
 ドンドンドン
 次々と咲く打ち上げ花火。
 「隣町の花火大会じゃな」
 師匠の声が聞こえてくる。
 この神社は小高い山の上に建つ。ここから見下ろす街並みも美しいが、同時にそれは絶好の花火スポットでもあった様だ。
 ドン!
 ひときわ大きく咲く柳。
 手を強く握る玲を感じながら、俺は花火を見つめる。
 今、この時この時を大切にしたい、そぅ心から、想う………


2001 えれくとら


 「今回のところは皐という下地を作ってしまった手前、引き分けだな、ファウスト」
 彼女は自宅の窓から空を見上げる。
 その機械の瞳にはっきりと花火を映して呟いていた。
 生身の瞳にはその花はおぼろげにしか映っていなかった事を……彼女もまだ気付いてはいない。


〜 THE END 〜



あとがき

 秘境とか冒険の場って、今この時代はそう目の前にあったりするもんじゃないと思う。
 どこか身近にないか? そう考えた時、電脳世界こそ全く異なる理で動いている世界だと思うのですよ。
 電脳世界には魔法もあります、究極の破壊魔法なら核施設をクラックして爆発させるとか。
 そんな、現在にある身近な異世界を書いてみたくて作り上げたのがこの世界です。
 それに付随して色んなキャラを出しまくってみたいというのがこの「不連続設定」という題名から来ています。
 それぞれのキャラごとに話の設定を変えて―――と、結局その野望は話が暴走するので半分しか達成できませんでしたが。
 ともあれ、貴方の記憶にこの話の一部でも残っていただけると、これに勝る嬉しさはありません。


 2001.9.2.

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