忘却の世界 エルハザード
Written by Uma
1. 忘却の世界へ!
良い天気だった。
今日もフリスタリカは晴天に恵まれお洗濯指数120%と言った所である。
「おっはよう! まこっちゃん! 菜々美ちゃん特製朝ご飯の出前だよ!」
「やあおはよう菜々美ちゃん。いつも有難う」
「いいってば。それより今日は最高にいい天気だよ。折角だから外で食べようよ」
「そうやな。じゃちょっと待ってってや。服着替えてくるさかい」
「というよりまこっちゃん。その服いつから着ているの?ちょっと臭うわよ」
「え〜と…、最後に風呂に入ったんは…」
「もう。まこっちゃん、服より先にシャワーでも浴びてきなさい。私部屋の中片付けておくから」
「ほんまにすまんな。菜々美ちゃん」
「いいから早く行った行った」
「おはようロンズ。今日もいい天気ですね」
「御意にござりまする。ルーン殿下」
「こんな日はピクニックへでも行きたくなりますね」
「そ、それは困ります。殿下がいらっしゃらないと…」
「ふふふ、冗談ですよロンズ。では今日の予定をお願いします」
「ははっ」
だがここに若干約一名、好天とは裏腹にどんよりしている少女がいた。
「ファトラ様ぁ」
「う〜ん…」
「ファトラ様ぁってば」
「あ〜…」
「もうお昼過ぎてますよ、ファトラ様ぁ」
「アレーレ…水を持ってきてくれ…頭が痛い…」
「もう、ファトラ様。だから昨日申し上げたではないですか。飲み過ぎですよって」
「言うなアレーレ…、わらわもちょっと昨日は度が過ぎたかなぁと思っている所じゃ」
「ファトラ様、あれはちょっとではありませんよ」
「あれは店の主人が悪い。大体このわらわに対しあのような暴言許しがたい」
「暴言、ですか」
「そうじゃ。この棚の酒全部呑めたら只にしてやる、なぞ暴言以外の何物でもないわ」
「ですがファトラ様それを受けて全部呑んでしまわれたじゃないですか。さすがに店の御主人青くなっていましたよ」
「当たり前じゃ。あのような事をいう輩に天罰を下したまでじゃ。何が悪い」
「あのぅファトラ様。やはりお財布をお忘れになった事にお気付きになられた時点で帰られた方が良かったのでは」
「馬鹿を言え。あのような店このわらわが入ってやった事だけでも有難く思うべきじゃ」
「はいはい分かりました。お水ですね。すぐにお持ちしますので少々お待ち下さい」
どうやら幾ら言っても無駄である事が分かったらしい。
「お加減はいかかですかファトラ様」
「うむ。大分良くなった礼を言うぞアレーレ」
「そんなぁ。私ファトラ様のためならぁ…」
「ふふふ、愛い奴じゃ」
「ああぁんファトラ様ぁ…」
結構回復したらしい。
「アレーレ」
着衣を正しながら呼びかける。
「はいなんでございましょうファトラ様」
同じく、いやこちらは着衣中だ。
「風呂に入るぞ。仕度せい」
「かしこまりました。直ちに」
事件の発端であった…。
「ふう、やはり汗を流した後は風呂に限るのう」
「そうでございますわね」
「さて大分アルコールも抜けたようだな。アレーレ出るぞ」
「はい!」
浴槽から出てくるファトラを迎えるべくアレーレはバスタオルを取りに行く。
ファトラはゆっくりと立ち上がる。
「う〜ん、昨夜はちと呑み過ぎたかな…、やはり棚2つ分はまずいか。今度から少しは控えよう」
怖いことを呟きながら浴槽から出ようと一歩踏み出したファトラだがその時足が滑った。
いつものファトラなら何ら問題はなかったはずである。
だがこの時のファトラはやはり酔いが抜けきっていなかった。
バッシャーン!
アレーレが聞いたのは何かが水に落ちる音である。
この場合「何か」といえばファトラ以外にない。
「ファトラ様!どうなさいました!」
慌てて浴室へ飛び込むアレーレ。
彼女が見たものは浴槽に浮かぶファトラの姿であった。
「きゃー! ファトラ様ー」
浴槽に飛び込むアレーレ。
「誰か! 誰か来てー!」
事件の始まりであった。
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