交錯した過去〜プロローグ

  「ふう、今日も一日大変だったわね」
  仕事を終えた神楽社員がどかどかと帰ってきた。
  「そうですねぇ、あ、お茶入れますね」
  「ありがと、高見ちゃん」
  「そういえば、蘭東さんと梅崎さんは同期ですよね」
  田波が自分の席に座るなりいきなり尋ねた。
  残務処理をする蘭東は、いきなりの質問に戸惑った。
  「ん?そうだけど。どうしたの、いきなり」
  「いやぁ、今日のクライアントの会社、僕の同期の奴がいたんですよ。それで懐かしくなっちゃいましたよ」
  さっそく今日使ったモーゼルの手入れしていた梅崎が言った。
  「田波は神楽に来る前、あそこにいたんだな?」
  「ちがいますよ、ただ僕らがいた会社が潰れて、バラバラになっちゃったんですよ。でも同期っていいですよね」
  「そうかな?」
  蘭東がそっけなく言う。
  「ただの腐れ縁だ」
  ばしぃ
  そういった梅崎は床に沈んだ。
 
  「お茶が入りましたぁ。あれ、梅崎さんは?」
  「高見ちゃんの下」
  「ああ!!」


  ぷるるるるる
  ぷるるるる
  がちゃ

  「はぁい♪神楽総合警備でぇす!」
  いつものように社長が電話を取る。
  「…どうやら、懐かしんでる暇はないみたいだな…」
  「そうね。」
  「はい、じゃあ、今すぐそちらに伺いまーす。どーもー」
  がちゃ
  「仕事よ!クライアントは綾金電気。まあ、この程度なら3人で十分ね」
  「………」
  「………」
  「「「じゃーんけーーん!!」」」


  「「いってらっしゃーい!」」
  ガレージで手を振る2人が妙に明るい。
  「はーい…」
  「出張君3号発進よ!!」
  ぶろろろろろろ
  社長の号令で3号は出て行った。


  「ふぅ、これでゆっくり休めるわね」
  「たまにはガレージでゆっくりするのも悪くないな」
  蘭東と梅崎は、姫萩が寝ているソファーの隙間に座り、お茶をすすり始めた。
  「そういえば、あの時の三人だな」
  「そうね、田波君があんなこと言い出すから思い出しちゃったわよ」
  そして彼女達は話し始めた。
  あの人生をひっくり返した暑い夜のことを…
 


第2話:伝説の紅の流れ星 / TOP