交錯した過去〜伝説の紅の流れ星

  これは昭和60年代後半のある熱い夏の夜の出来事である。
 


  「ボス、大変です!」
  「うるさいなぁ、なにがあったんだ?」
  いわゆる裏の世界のある組の事務所にひとりの男が入ってきた。
  「さっき取引に出たグループが、鈴星会の待ち伏せをくらって…」
  「なに!?」
  ボスと呼ばれた男は鈴星会というのを聞いたとたん顔色を変えた
  「それで、半分以上がやられて、今もなお銃撃戦をしています。このままでは、全滅してしまいます!」
  「くそっ、鈴星会め…」
  「…ふん、鈴星会か、まだ懲りねぇみたいだな…」
  いつのまにか扉のところに、若かりしころの梅崎真紀が立っていた。
  「真紀!」
  「豊村さん、あたしが行って軽くあしらってくるよ。」
  「たのんだぞ、真紀!」
  「いくぞ、野郎ども!」
  「へい、姐さん!!」
  「姐さんって呼ぶなぁ!」
  ボコボコにされた野郎どもは援軍として出発することはなかった。
 


  ところ変わってここは、一般的に刑事ドラマなどで銃撃戦が行われる港の倉庫。
  ここではいままさに銃撃戦が行われていた。
  ばきゅーん ばばばばばば
  「くそ、このままでは…」
  ずどどどどどどど
  「がんばれ!もうすぐ姐さんが来てくれるさ!」
  ぱきゅん ぱきゅん ぱきゅん
  「…そうだな、梅崎さんがきてくれれば、あんなやつ…ぐわぁ!」
  「おい、大丈夫か!くそっ、鈴星会め!」
  ずだだだだだ
  「へへへ、これでやつらもおしまいだな。おい、金は奪ったか?」
  「それが、奴らがまだ…」
  「さっさとやれ!鈴星会の名をあげるんだよ!」
  「へい!」
 
 ばきゅぅぅぅぅん
  「うわっ!なんだ!?」
  「それは無理だな!」
  「なに!?」
  「まだ懲りねぇのか、このまえあんなに潰してやったのに」
  たくさん積まれたコンテナの上に白いスーツの女が颯爽と現れた。
  「き、きさま、紅の流れ星!!」
  「姐さん!!来てくれたんですね!」
  「姐さんって呼ぶなぁ!そんな歳じゃねえ!」
  「すいません、姐さん」
  「だーかーらー」
  ばきゅーん
  つまらない漫才に業を煮やした鈴星会が梅崎を撃った
  「へっ、いくら紅の流れ星とはいえ、たった一人ぐらい増えただけで勝負が変わるとは思えんなあ」
  「ちっちっち、甘いんだよ。このあたしと渡り合える相手は2人といねぇ。それにこっちには(竜からもらった)70発出るルガーがあるんだよ!」
  「なに!?」
  とても形容しがたい形のルガーを懐から取り出すと、流れ星はコンテナから一気に飛び降りた。
  「でやぁぁぁぁ」
  ばんばんばんばんばんばんばんばんばんばん
  ばんばんばんばんばんばんばんばんばんばん
  ばんばんばんばんばんばんばんばんばんばん
  ばんばんばんばんばんばんばんばんばんばん
  ばんばんばんばんばんばんばんばんばんばん
  ばんばんばんばんばんばんばんばんばんばん
  ばんばんばんばんばんばんばんばんばんばん
  ばん がち

  …………
  ………
  「ふっ、これでわかっただろう…」
  「姐さんすげぇ!」
  「姐さんって呼ぶな!」
  「くっ、紅の流れ星め、覚えてろよ!」
  「聞き飽きたぜ、その台詞」
  「くそーっ」
  ボロボロになった鈴星会の組員は必死になって逃げていった。
  「やりましたね、姐さん」
  「ありがとうございます、姐さん。助かりました」
  「貴様ら姐さんって呼ぶなぁ!!」
  と、その時、
  「ぐわぁぁぁぁ」
  「なに!?」
  鈴星会の逃げていった方向が妙に明るくなって騒がしくなっていた。
  「どうしたんですかねぇ、姐さん?」
  「姐さんゆうな、ちょっと見てくるから先に帰って豊村さんに報告して来い」
  「へい!」
  しかし、それが彼女の人生を大きく変えてしまうとは、本人はまったく思っていなかった。
 


第3話:当時最強 / TOP