交錯した過去〜当時最強

  ある夜の道を暴走族の集団が走っていた。
  ぶおおおおおん
  ぶをおおおおおん

  「ねー、えーちゃーん」
  暴走族っぽくないカブにのった少年はとなりを走っている紅い特攻服の人に声を掛けた
  「えーちゃんって呼ぶなぁ! 総長と呼べ!」
  いつもどおりの答えが返ってくる。
  言ったのはもちろん若気の至りの蘭東栄子である。
  「ここどこ?」
  「さあ? まあ、あたしらにとっちゃここがどこでもいいけどね」
  「えーちゃん、なんでこんな旗立てなきゃいけないの?」
  彼は「小雪組全国行脚中喧嘩上等紅流星…」などなど書いてある旗を背負っていた。
  「それがなきゃ、全国行脚してるってわかんないじゃないって…えーちゃんゆうなぁ!」
  そう、彼女達は夏休みを利用して全国喧嘩の旅(または全国の暴走族を配下に入れる旅)をしていたのだ。
  その旅はすでに東海、関西、四国をまわり、現在九州にいた。
  しかもそこで各方面の族をシメてまわったので、彼女達のチームは、スタートした時よりも3〜4倍に膨れ上がっていた。
  「しかし、ここの奴らも骨のある奴がいないわね〜」
  「栄ちゃんが強すぎるんだよって、あれ? 栄ちゃん、あれ見てよ、あれ!」
  「だからえーちゃんって呼ぶな! 後でしめるわよ!」
  「いーから、あれ見てよ!」
  彼が指差した方向には港にはありがちな倉庫がいっぱい立ち並んでいた。
  「あれがどうかしたの?」
  「ほら、奥のほう、なんか銃撃戦やってるよ!」
  その倉庫の広い入り口の周辺でドンパチやっているのがなんとなく彼女にも見えた。
  「へー、ちょっと見に行こうか。ちょうど大阪でポリ公から奪ったピストルもあるしね」
  「えーちゃん、こんなのもあるよ」
  どっからだしたのか彼は両手に大量の爆弾を抱えていた。
  「えーちゃんって呼ぶなぁ!」
  ぱきゅぅん
  「わっ、あぶないなぁ」
  「いい、結紀、いつも通りでいくわよ」
  「わかったよ、栄ちゃん!」
  「……覚えてなさいよ…」
  しかし、彼女もこの選択が人生を大きく変えることになるとは微塵も感じていなかった。
 


第4話:接触 / TOP