交錯した過去〜接触

  「な…なんだこりゃ!?」
  梅崎真紀はその場に立ち尽くした。
  そこでは鈴星会の奴らが派手派手な族と戦っていた。
  そこまではよくあることだったが、その戦いが恐ろしかった。
  もちろん、梅崎にボコボコにされたとはいえ、腐っても裏の世界の人間たちなので、暴走族ごときに負けるわけがなかった、が…
  しかし…その相手には修羅がいた。
 


  「あーっはっはっはっは、あんた達もたいしたことないねぇ!!」
  ばきっ どごっ ぐちゃ 
  紅い特攻服を着た蘭東栄子が、一瞬で3人ぐらいを吹っ飛ばしていた。
  「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
  「うるさい! 結紀! まかせた!」
  「はーい! てやぁ!!」
  彼は懐から手りゅう弾を取り出すと、ピンを抜き、投げた。
  シュッ
  どがーん

  「ぐわぁ! 腕がない! 俺の腕がぁぁぁぁぁ!」
  「なんだこいつら! めちゃくちゃ強いぞ!」
  ばきゅーん ばきゅーん
  「そんなもんはあたらないよ! くらいな!」
  ばきっ ばっ ぶん どご ばしぃ 
  「ぐはぁっ」
  ばたん
 
  「栄ちゃん、もういないみたいよ」
  まわりにいた族がそれぞれボコボコにしていたので、もう敵は残っていなかった。
  「栄ちゃんて呼ぶな。結紀。こいつらもたいしたことないね、これであたし達がここらで最強ってわけね」
  「それはどうかな!」
  「なに!?」
  やっぱり積まれたコンテナの上から梅崎真紀が登場した。
  「そんなよわっちい組ひとつ潰したくらいで最強を語らせるわけにはいかないな…」
  「あんた、誰?」
  「ふっ、あいにくあたしは名前を捨てちまったのさ。裏の世界にはいったとき…」
  ぱきゅーん
  「おっと、なにしやがるんでぃ! ちゃんと名乗らせろ!」
  「あなた、自分で言ってて恥ずかしくないの?」
  「全然」
  「栄ちゃんは今、いらいらしてるんだよ」
  「栄ちゃんて呼ぶなあ!」
  ばきっ
  「きゅう…」
  「それで…あんたらは何者なんだ?」
  「あたしたちは日本最強をめざす、小雪ってものよ!」
  「ほう、その小雪の総長があんたってわけだ。おもしろい、この紅の流れ星が相手になってやるぜ!」
  「紅の流れ星!?」
  「血塗られた二挺のモーゼルを持ち、生と死のはざまをつなぐ紅い瞬き…そう、紅の流れ星とはあたしのことよ!」
  「ちょっとまったぁ! 白い小雪が舞う空を、紅に染まった星が駆る! …紅の流れ星とはあんたじゃなくてあたしの通り名よ!」
  「なにぃ! 名前がかぶった!?」
  そう、蘭東栄子も当時「紅の流れ星」を名乗っていたのである。
  「あなたみたいな恥ずかしい格好をしたやつに紅の流れ星は名乗らせないよ!」
  「日活のかっこよさがわかんない奴に紅の流れ星を名乗る資格はなぁい! でやぁぁぁぁぁ!」
  「とりゃぁぁぁぁぁぁ!」
  ばきゅーん どすーーん
  ばきっ がすっ
  がきっ ぱきゅん かん どごっ
  きん どかっ ばしゅっ ぱきゅんぱきゅん
  どかどかどか ばきゃ かきーーん

  赤い修羅と白い鬼の戦いは見る者を圧倒した。
  そこへ報告から帰ってきた野郎どもがやってきた。
  「おい、姐さんが戦っているぞ!」
  「ほんとだ!誰と戦ってんだ!?」
  「姐さーーーーん!」
  ぱきゅーん
  「姐さんって呼ぶなぁ!」
  「ひいいいいい!」
  かなりの距離があったが、彼女は彼らの帽子をピンポイントで狙っていた。
  「栄ちゃん、チャンス!!」
  「栄ちゃんって呼ぶなぁ!」
  ばきぃ
  右ハイキック炸裂!!
  「あうっ」
  ばたん
  「ふん、お互い呼び名では苦労するな」
  「そうね」
  とても文字では表せないハイレベルな戦いをしながら彼女達は世間話をはじめた
  「へえ、そうなんだ」
  「そうそう、それでね…」
  「姐さん、大変です! 鈴星会の『清』が、大群を引き連れてこっちにむかってます!」
  「なに!? って姐さん呼ぶなぁ!」
  ぱきゅぅん
  「スキあり! もらった!」
  「しまっ…」
  ぶん さっ
  蘭東の正拳突きを間一髪かわした梅崎は、そのまま走っていった。
  「な…逃げるのか!?」
  「あんたらは逃げたほうがいい。ここから先は表の人間のいるべき所じゃないからな」
  「なんですって!?」
  「あんたいい腕してるな、今度絶対決着をつけようぜ、小雪の総長…いや、紅の流れ星!!」
  「まて! 紅の流れ星!!」


  たったった
  「で、数は?」
  「60といったところです」
  「ふん、そんなやつらあっという間にかたしてやるよ」
  「たのんます、姐さん」
  「あとでしばく…いくぞ!野郎ども!」
  「へい!」
 


  ………
  「栄ちゃん、行っちゃったね…どうするの、これから?」
  「栄ちゃんって呼ぶな、結紀。どうせ暇だし、見ていきましょうよ、裏の世界ってやつをさぁ」
  そのとき、彼女達のところに向かって一台の車がやってきた。
  「?」
  ブロロロロロ キキー
  ばたん
  「あんたが小雪の総長さんかい?」
  1人のスーツを着た男が車から出てきて、蘭東に話し掛けた。
  「何者!?」
  その男は銀のケースを差し出しながらこう言った。
  「じつは、あんたに頼みがある…」
 


第5話:紅の流星群 / TOP