交錯した過去〜出会い、そして覚醒

  しばらく湾岸線を走っていた姫萩夕は、道路に何かを見た。
  どうやら人のようである。
  その人たちは必死に道路の真ん中を走っていた。
  「なにも道路のど真ん中はしらなくてもいいのに…」
  とか思っていたら、突然、そのうちの1人が振り返り、いきなり発砲してきた!
  ばきゅぅん
  「うわぁ!」
  ききぃーーー
  そして車は、その人たちのすぐ脇に止まった。
  「おい、あんた! ちょっと乗せてくれ!」
  「へ!?」
  「いいから、早く車出して!」
  姫萩はなにがなんだかわからなかったが、とりあえず言われた通りにした。
 


  ………
  「で、あんたらどこまで行くの?」
  荷台にいた2人に話し掛ける
  「どこまででもいい。とりあえず遠くへ…」
  「あとでお礼はするから…」
  どうやら彼女達は放心状態らしい
  「なんだったんだろう、奴らは…」
  「猫、だったわよねぇ…」
  「それに、このパソコンとお札もよくわからないなあ」
  「ちょっとみせて、あたしこう見えてもコンピュータに強いのよ」
  「ほい」
  がちゃ
  ぶいいいん
  パソコンが起動する。
  ロゴみたいなのが一瞬表示され、切り替わった。
 
  ぴこ♪
  『kagura security company ...containment system ver...』
  「カグラ セキュリティ カンパニー …カグラってゆう警備会社のものね。多分…」
  「なあ、そのあとなんて書いてある?」
  「ええっとねぇ、ん? 封印システム?」
  「封印?」
  「なんなのよ、このパソコン、なんか特殊なOS積んでるわよ」
  「あ、切り替わった」
  ぴこ♪
  「選択してくださいって出たわよ。一発とタイマー。なんか爆弾みたいね」
  「選んだらなんか起こるかな」
  「さあ? 封印されるんじゃない?」
  「なにが?」
  「………」
  「………」
  「とりあえず、お札も見てみましょうよ」
  「そうだな」
  ばさばさっ
  お札は12枚あった。
  そのお札にはなにやら某製薬会社のタ○ダのマークっぽいものがでかでかと書かれていて
  下の方に、なにやらお札には似合わないコネクタがついていた。
  「あ、わかった!」
  「なに?」
  「このお札をパソコンに繋げるんだ、きっと」
  「そういえば、ケーブルが…あったあった。ほんと、ぴったりだわ」
  かちゃ 
  「で、つけたけど、このお札が、一発かタイマーで封印するんじゃないかな」
  「なにを?」
  「………」
  「………」
  「試してみるか?」
  enterを押そうとしている梅崎を蘭東が止める
  「でも、何封印するかわからないのよ!逆になにか召喚したら…」
  「う〜ん…どうしよう…」
  「あのー、お二人さん」
  「なに、運転手?」
  「後ろの人たちは、お仲間?」
  「は?」
  後ろには、何台かの車が明らかに追っかけてきていた。
  「わぁ!! 逃げて逃げて!」
  「はぁあい」
  脅迫されてるとはいえ、姫萩はずいぶん落ち着いていた。
  つーかむしろ、なんにも気にせず、ドライブしている…といった感じだ。
  「あいつら、誰?」
  「多分、鈴星会じゃあない。さっきの猫だ…」
  「え…」
  「猫?」
  そこではじめて姫萩が興味を示した。
  「運転してるのは、人だよ、猫なんていないよ」
  とバックミラーを見ながら姫萩は言ったが、特攻服を着た姉さんがすごい剣幕で叫んだ。
  「あの猫は、人間に変身してるのよ!」
  「へ!?」
  「あたしたちは見ちまったのさ、猫が人間に変身するところを…」
  ばばばばばば
  猫達は撃ってきた
  「うわぁ」
 「きゃぁ」
  「何でマシンガンもってんのよ!」
  「知るかぁ! そんなもん!」
  梅崎が応戦する。
  ずだだだだだだだ
  どごぉん

  後ろにいた一台の軽自動車が燃えた。
  「まだまだくるよ」
  「くそっ、残り弾数が少ない! あんたの爆弾は?」
  「もうないわよ、チームに戻ればまだあるかもしれないけど…」
  「いちかばちかこれ使うしかないな!」
  梅崎はお札を取り出した
  「どうやって使うかも怪しいんだから…」
  蘭東は渋る
  「大丈夫、多分…」
  「多分!? やめなさい!」
  「いや、やる!! つーかやってみたい!」
  「だめ!」
  「やる!」
  2人は荷台でぎゃあぎゃあわめきはじめた。
  「あの〜、後ろ迫ってるんですけど…」
  姫萩の声は届かない。
  「「あ!!」」
  梅崎は不意にお札を落としてしまった。
  しかしケーブルにつながれているので、事なきをえたかに見えた、が…
  「もう、あぶないわね」
  「おい、総長。ボタン押してるぞ」
  「え?」
  蘭東は、お札を取ろうとしてパソコンを引っぱっていたが、キーボードを思いっきりつかんでいた。
  「やばい!」
  「えっ!?」
  キュィィン
  ドン!!

  と、突然荷台から飛び出ていたお札が爆発した!
  それは後部荷台の屋根と壁面、さらに接近していた車の頭を消し去った。
  「なになに!? なんなのよ! このお札!」
  「すごい火力だ!!」
  「ああああ〜兄ちゃんのバモスがぁ〜新車なのに…」
  「でも、やばいことに変わりはないわ」
  「使い方がわかっただけでもいい。それより、運転手! もっとスピードあげろ!」
  「はぁ、兄ちゃんに怒られるかな…」
  「兄ちゃんはいいからスピード上げろ! 運転手は運転がお仕事だろ!」

  …運転手は、運転がお仕事…

  ぷちっ
  その瞬間、姫萩のなかでなにかが吹っ切れた。
  「ど、どうした?」
  梅崎が顔を見ようと前に乗り出した瞬間
  「運転手は運転がお仕事ぉ!!」
  と叫んだ。そしてバモスは急激に加速した。
  「うわぁぁぁぁ…」
  「きゃぁぁぁぁ…」
 


 ひとつの咆哮とふたつの悲鳴をその場に残して…
 


  第8話:決意 / TOP