交錯した過去〜決意

  梅崎は目を覚ました。もう朝である。
  悪夢のような夜だった…
  そう、それはまるで新幹線の速度とジェットコースターのコースを足して2で割らないような、そんな体験だった。
  隣ではもう1人の紅の流れ星を名乗る女,蘭東栄子が、パソコンをいじっていた。
  「あら、起きたの?」
  「あんた、よく耐えられたな…」
  「耐えてないわよ、さっきまで気絶してたんだから…」
  「ここは?」
  「サービスエリア。運転手が眠いってたから休憩しようって」
  「ぐー」
  「今は寝てるけどね」
  「しかし、あの運転手があんなドライビングテクニックの持ち主だったなんて…」
  「はい」
  といって蘭東はコーヒーを投げる
  「おう、さんきゅ」
  梅崎はコーヒ−を流し込んだ
  「それで、なんかわかった?」
  「そう、このパソコンをいろいろ調べたらこの会社の住所がわかったのよ!」
  「本当か! どこにあんだ! その兵器会社!」
  「警備会社よ」
  「どうでもいいって。それより、場所は?」
  「神楽警備保障。場所は綾金」
  パソコンの裏に張ってあるシールを見ながら蘭東は言った。
  「ふーん、よく知らんなぁ」
  梅崎は、場所がわかったことよりも、パソコンのデータを調べたんじゃないんかい! と突っ込みたくてしょうがなかった。
  「…で、どうする? あたしはチームがばらばらになったから、帰るついでに行ってみようかと思って」
  「あたしは別にかまわないよ、あたしは西へ東への根無し草稼業だからね。それに、あんな火力のもん作ってる奴の顔が見たいしね」
  「そう、で、この子にも聞いてみたのよ。そしたら「どうせ暇だから、慣らし運転のついでに行く」だって」
  「ふーん」
  「蘭東栄子」
  「は?」
  「自己紹介よ、あたしは蘭東栄子。あなたは?」
  「名前なんてないんだけどな…」
  「いいじゃない、ここまできたら」
  「梅崎真紀」
  「よろしく、真紀」
  「よろしくっつったって少しだけじゃないか」
  「あら、言わなかったっけ?綾金って中部地方の南よ」
  「は?」
  「千キロはあるわね、ここから」
  「はい?」
  「さあ、そろそろ出発するわよ」
  「あんたいつの間に着替えたんだ?」
  「特攻服脱いだだけよ、暑いし、臭いし…」
  なぜ特攻服の下からOL風のスーツ姿がでてくるんだ…とか心で思って口に出さなかった梅崎であった。
  「はい、夕、おきなさい! 行くわよ!」
  「はぁ〜い」
  「夕?」
  「そう、この子は姫萩夕ってゆうの」
  眠たげな姫萩は2人にたずねる
  「ねえ、煙草ない?」
  ふるふる
  2人は首を横に振る。
  「そっか…残念」
 


  そしてバモスのエンジンがかかった。
 


第9話:交錯する時 / TOP