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THE PERFECT RED
例えばよ、例えばの話。
アタシが今から一分後に鳥になってこの大空を羽ばたくっていう可能性もある訳。
こらっ、目をそむけないのっ!
だって、ユウ。アナタは一分後に何が起こるか、完璧な予測ってできるとでも言うの?
ね、できないでしょ?
未来は不確定なの。どんなにでも変化する可能性を秘めているの。
そしてそれは誰にだって予測できない。けれど確実にやってくる未来とも言えなくない?
ね、ね。これって宿命ってやつ?
あー、もぅ! だから何が言いたいのかって?
えと、あのね。
そう言うと未紅は後ろに隠し持った本を一冊、俺に手渡した。
それは英語の教科書。コーヒーと思われる液体にぐしょぐしょになった、非常に学習意欲を削がれるものだった。
その教科書に書かれた氏名は……オレのか。
「えと、だから、ね?」
「借りたものを汚した挙句、訳の分からん言い訳すな!」
このときはまだ、未来は読めないがある程度予測することは可能だと思っていた秋のことだった。
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