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クリスマス
寒い。
オレは寒いのが苦手だ、むしろ暑い方が全然マシ。
寒いだけで気が滅入ってくる。
雪が降りそうな曇天の下、オレは駅前の繁華街を歩いている。
クリスマス・イルミネーションに装飾された街並みは綺麗だが、コタツの方が何倍も魅力的に見える。
普段は流行っていないケーキ屋ですら、店主自らサンタのコスプレをして声を張り上げるこの状況。
「何、暗い顔してるのよ、ユウ」
不意に問うのは隣を行く女の子。
「別に」
「模試の成績が悪かったの?」
「はっはっはー、それなりに勉強しているのですよオレは。未紅とは違うのだよ、未紅とは」
「じゃあ何よ、隣にこんな可愛い子を連れて歩いてるのに、暗い顔してさ」
「可愛い子? はてどこにいる、ぐっ!」
右足をおもいっきり踏んづけられた。
「可愛い子を隣に侍らせて、甘くて美味しいケーキも買って、模試も…ユウだけだけど成績は良くって」
ビシッと未紅はオレに人差し指を突きつけて、微笑みながらこう言った。
「幸せじゃん?」
オレは一瞬考え、ほっとため息一つ。
「それもそーだな、ケンタッキーでチキンでも買って、さっさと帰ろうか」
「そうね!」
未紅はオレの腕を掴むと、人ごみの中に飛び込んでいく。
そんなオレ達を、今夜一晩だけの巨大な駅前のツリーが電飾を瞬かせながら静かに見送った。
あれ?
オチがないぞ??
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