Diary


乾いた北風が吹き抜ける夜。
古めかしいアパートの前に、一人の女性が座っていた。
彼女の隣には一匹の猫。トラ柄の猫だ。
「クリスマスって、人それぞれの過ごし方があるものですね、ライオン丸さん」
「ふなーお」
「ライオン丸さんはどう過ごされるんですか?」
「ふな」
「そうですか、いつも通りですか。私と一緒ですね」
「ふなーぉ」
「え、私にカレシなんているわけないじゃないですか」
「ふなぉ」
「もぅ、おだてたって何も出ませんよっ」
そんな一人と一匹を冷めた目で見つめている一人の男がいた。
さすがにツッコミ所がなかったらしく、困った顔で見つめるのみだ。
「あら、亮くん。こんにちわ」
「こんばんわ、乙音さん。っつーか、頭の回路がイカレました?」
「失礼ですね、正常に稼動してますよ」
「乙音さんワールドの正常は、現実ではきっと異常です」
「褒めても何も出ませんよ」
「褒めてませんよ」
「そうですか」
「ふなーお」
「亮くん、ライオン丸さんがその手に持ったケンタッ○ーフライドチキンのファミリーパックを所望されていますよ」
「ふなーぉなーぉ」
「いつから猫語が分かるようになったんですか、乙音さん?」
「私は猫語一級なんですよ」
「何処の検定かさっぱり分かりません。それ以前にコイツの名前はライオン丸ではなく、トラですよ」
「そうなの、ライオン丸?」
「ふなーぉ」
「どうでもいいそうですよ?」
「良くないですよ。コイツ、大家さんトコの猫ですよ」
「そうなの?」
「うなーぉ」
「そうみたいですね」
「はいはい。どうでもいいですけどこんなところにいたら風邪ひきますよ」
「そうですね。私は温かいコタツを所望します」
「ふなーーぉ」
「トラさんも所望されています」
「………はぁ」
亮は溜息一つ。
「じゃ、乙音さんが後ろに隠しているシャンパンを提供していただけるのなら、我が家にご招待しましょう」
「仕方ないですね、提供いたしましょう」
「ふなーぉ」
「トラさんからは『撫で撫での権利』を提供するそうです」
「はいはい、行きますよ」
階段を登る亮の後ろを、乙音とトラはついていく。
「ふな?」
ふと乙音を見上げるトラ。
「ね、いつも通りでしょう?」
乙音はトラに、そうにっこり微笑んだのだった。

* めりーくりすます

クリスマス・イブに普通にサイト更新している自分自身が嫌いです。
皆さんは如何お過ごしでしょう?
ちなみに私のクリスマスプレゼントは、早売りしていたヘルシングの最新刊です。
カバー取ったら相変わらず笑えました。バチカンカンフージェネレーション、サイコー♪
世界のみんなが幸福でありますように(無理矢理〆)

24th Dec/2004



12月24日―――クリスマス・イブである。
街にはクリスマス・ソングが流れ、飾る彩りは赤と白。
残念ながら夜更け過ぎに雪へと変わる雨すらも降ることなく、空は清々しい混じりけのない青だ。
どこにでもあるような駅前の大通り。
流れ行く人ごみの中に、2人の姿はあった。
一人はいつもの白衣姿とは異なるが、しかし限りなく近い属性を持つ真っ白なトレンチコートを羽織った男。
もう一人は男とは対照的に、烏色のハーフコートを着込んだ女である。
「しかし毎年のことだが、基督教でもないのにこんなにはしゃぐ人間が多いのだろうね? 白川くん」
男の問いに、女は無表情のままに答えた。
「相馬さん、それが日本人の良いところとは言えませんか? どのような文化でも自らに良いように取り込み、独自のものにしてしまう。このようなお祭りならば、私も賛成ですが?」
その言葉に驚いたかのような男に、彼女は続ける。
「もしもそれが許せないとおっしゃるのなら、私は今この時点で基督に帰依することにしましょう」
「ほほぅ、これは興味深いことだね。そして翌日には神道に改宗し、正月を迎えると」
「よくご存知で」
「君の決意は良く分かった。だから無駄な宗教に身を置くのはやめたまえ。もっともダイエットの際にラマダン直前に回教に帰依するのは良いかもしれんな」
「……何気に宗教関係者に見つかったら、後ろから問答無用で刺されそうな発言ですわね」
「そうだね。それだけ自身の言葉には責任を置かねばならないということだよ、白川くん」
「私は大丈夫ですわ。目の前に反面教師がいますもの」
「なるほどなるほど、立派な教師を持って誇らしいことだね」
取り止めのない無駄な会話を交わしながら、2人はやがて公園に至る。
すでに日は傾きかけ、冬は短い日照時間と北から吹き寄せる風の持つ寒さを以って己の存在をアピールし始める。
「ところで相馬さんは大学は何処を受けるのですか?」
「ふむ、白川くんは何処を受けるのかね?」
「某有名女子大学です。推薦を頂いていますから、よっぽどのことがない限りは落ちることはないでしょうね」
「例えば試験会場でジャイアン・ソングを歌い上げたとしたら落ちるかもしれないということだね?」
「代わりに鉄格子付きの病院に、個室単位で合格すると思いますわ。そんなことより、相馬さんは何処の大学に行かれるのです?」
トレンチコートの袖を掴み、足を止める白川。
彼女はじっと相馬を見上げる。
「困ったね」
彼には珍しい、困惑の表情が生まれた。
それに呼応するように白川にも表情が生まれる。
不安の色だ。
「何故、私の行き先を訊きたいのかね?」
問いに白川は、袖を摘む指に力を込めて、答えた。
「朝は電車が通勤ラッシュですから、もしも方向が同じであれば相馬さんを人の壁にしようかと」
「はっはっは、ラッシュは我慢したまえ。何より今の時代は女性専用車両もでき始めているらしいではないか」
「そうですね。あともしも夜が遅くなってしまった場合、迎えに来てもらおうと」
「はっはっは、遅くならないように気をつけたまえ」
「そうですね。あと……あと…」
白川は眉間にしわを寄せ、三度問うた。
「相馬さんは大学は何処を受けるのですか?」
その問いに、相馬はようやく口を開く。
「米国へ留学するよ。ちょうど私の能力を買ってくれる大学があってね」
抑揚なく答えたその声に、白川から表情は完全に消える。
袖を掴んでいた指が、離れる。
「そうですか。食生活にお気をつけください」
「安心したまえ、私に好き嫌いはない」
「それは好きなものもなければ嫌いなものもない、ということではないですか?」
「そうだね、そうとも言うね」
答える相馬は「だが」と付け加えた。
「もっとも君と知り合ってからは、そういうこともないのだよ」
「?」
「全く以って身勝手な話ではあるが」
言って相馬は空を見上げる。
東の空は藍色に染まり、西に向かうにつれて日の色を加えたグラデーションを描きあげていた。
それを一望した相馬は、白川の両手を取る。
白いその手は、すっかり冷え込んでいた。
「4年ほど待っていてはくれないか?」
無だった白川の表情は一瞬、驚が広がり、すぐにいつものポーカーフェイスに戻った。
しかしそこには嬉しいような悲しいような、複雑なそれが見て取れる。
「まったく」
白川は溜息一つ。
「相馬さんの身勝手は、この3年間でしっかり分かってますから」
答える彼女の頬には涙が伝っていた。
コツン
額が相馬の胸に当たる。
「分かりました、お待ちしてますわ。何年でも」
涙をコートに残し、白川は小さく微笑む。
「代わりに、今日はずっと一緒にいてくださいね」
「了承した」
2人は公園を抜け、街へと戻る。
人ごみの中、その後ろ姿は2つから1つになり、喧騒の中へと消えていった。

* なんか朝帰りらしーっすよ、ケッ

近所のツタヤが巨大化しまして、しょぼかったCDレンタルの棚が大幅に増えておりました。
とは言っても、有名所を揃えるだけで棚は大きくなる昨今。
何気なくどんなCDがあるのかを見ていた時でした。
まずは「あ」から―――ALI PROJECTだとぉぉぉぉ!?
こんなの置いてあるの、初めて見たよっ! それもタイトル3種類。
同じような思いの人がいたのか、2枚は貸し出し中だったので残る1枚を借りてきました。
なつかしの「聖ルミナス女学院」のエンディングテーマ「LABYRINTH」が入っておりました。
某隊長のカラオケでは最近聴いた気がしますが、久々に原曲聴いて「ああ、これ聴いてた当時は今よりも深い迷路にいたよなぁ」などと感じていたり。
歳をとると、周囲の迷路が結構単純化しますね。
単に自身の活力が減って、選択肢が狭まっているだけのような気もしますが。
そんな一日。

23th Dec/2004



私は人間達には猫と呼ばれる種族だ。
本日は日が最も短い日――冬至を迎え、私としてもこれから日が長くなっていくことを考えると寒い日が減ることとなるので助かるというものだ。
「あ、ライオン丸。こんにちわ」
誰がライオン丸だ。私はそんな名ではない。
「おいで、ライオン丸。ご飯あげるよ」
そう言って人間の女は私の前に屈み込んだ。
髪の長い、どこかぼけーっとした女である。
私の居場所であるアパートの階段下の、上の階に彼女は住んでいる。
馴れ馴れしく話しかけてくるのは良いが、
「はい、よく噛んで食べてね」
コトリ
私の前に丸い金属の塊を置く。
そして彼女は足取り軽くこのアパートから去っていった。
私はいつものように置かれた金属の塊を見つめる。
人間の言葉で「ねこげんき」と書かれているそれは、固くて私が食せるものではない。
彼女は一体何を考えて、私に良く噛んで食えと言っているのだろう??
カンカンカン
私の頭上から慣れ親しんだ足音が聞こえてきた。
「ふなーお」
私は挨拶にと、一言声を発する。
「ん? どーした、猫??」
それは人間の男性だ。先程の彼女の、隣の部屋に住んでいる。
よく私に食べ物をくれる良い人間である。
「ん? なんだ、またいじめられたのか?」
彼は私の前に置かれた金属の塊を取り上げた。
別にいじめられてはいないが?
カシュ
気持ち良い音とともに、良い香が漂ってくる。
「ほら、食べな」
彼は言って、私の目の前に美味しい食べ物を置いてくれる。
「ふなーぉ」
お礼を一言。
「ったく、誰だよ。毎回毎回フタを開けないで猫にエサを置いていく奴は」
ないやらぶつぶつと言って、彼は私の背中を撫でてくれる。
「おっと、電車に遅れちまう。じゃあな」
彼は腕時計を見て、立ち上がると駆け去っていった。
「ふなーお」
その後姿に私はいってらっしゃいと見送る。
やがて食べ物をきれいに平らげた頃、聞き覚えのある足音が聞こえてきた。
「あ、江戸家だ、江戸家だ」
バカに明るい少女の声。私の天敵である。
っつーか、貴様が言いたいのは『江戸家子猫』ではないか??
「こんにちわ、江戸家」
手を伸ばしてくるので、
「ふなっ!」
ばり
引っかいてやる。
「もぅ、照れちゃって」
相変わらず諦めずに、今度は両腕を伸ばしてきた。
「ふなっ、ふなーーーっ!!」
無理矢理に抱きかかえられ、頬擦りまでされる。
訴えるぞ、訴えてやるぞ!!
少女はさんざん私をいたぶった後、ようやく飽きたのかポイと放り出し階段を上がっていく。
「じゃあね、江戸家」
疲れ果てた私にそう言って彼女は、先程やってきた髪の長い女の部屋へと姿を消した。
全く、子供の相手も疲れるものだ。
だが私はここにいなくてはならない。
私の主人であるところの老人は、このアパートの大家なのだから。
旅行好きな彼は、今は「えべれすと」とやらに出かけているそうだ。
主人の留守を守るのは私の仕事である。
手間はかかるが、棚子を見守るのは大家の仕事。
少しばかりは我慢しなくてはならない。
まったく難儀な仕事である。

* 猫の事情

出張から戻りました。
山形→大阪の飛行機では、ジェット気流を正面に向き合いながら飛んでました。
いやぁ、揺れる揺れる。
人の「空を飛ぶ力」というものは、実際のところ充分なまでに伸びていることを知った次第であります。
ちなみにジェット気流は時速百数十kmの速さらしいです。

21th Dec/2004



「ねぇねぇ、知ってる?」
お昼休みだった。
外の陽気は良いとは言え、さすがに12月。
冷え込んだ屋上や中庭でお昼を摂る生徒は皆無だ。
雪音と恵美にしても、教室で席を合わせてそれぞれに弁当をつついている。
「ん、何が?」
恵美は卵焼きに箸を伸ばしながら、雪音の言葉に反応。
「学校の裏山にあるおっきなモミジの木の噂だよー」
「ん、知ってるよ」
ほくほくと卵焼きを頬張りながら、恵美は応える。
「あ、知ってたんだ。モミジの葉っぱの赤さ加減は、下に埋まってる人の数だって噂」
「ぶぴっ」
「にょわわわっ?!」
恵美が思わず噴き出した卵焼きを慌てて避ける雪音。
「な、なによ、その噂はっ!」
ハンカチで口を拭いながら、恵美は雪音を睨んだ。
「え? 恵美ちゃんの知ってる噂と違うの?」
「全然違いますっ!」
「っかしいな、イチマツに嘘教えられたかな?」
ブツブツ呟く雪音に、恵美は溜息一つ。
「舞い落ちるモミジの葉に願いをかけると、叶うっていう噂でしょ?」
「え、そうなの?!」
「そうなの!」
断言する恵美。
「でも随分前の噂。今では裏山に行く人自体少ないし」
「ね、恵美ちゃん、行ってみようよ」
ああ、やっぱり……恵美は思った通りの雪音の提案に2度目の溜息を吐いた。
「ダメ。案外道は険しいし、それに」
「それに?」
言い澱む恵美に、雪音は首を傾げた。
「んーと、実はお兄ちゃんに行っちゃダメって言われているの」
「どうして?」
「なんでもあの裏山に関しては私達のテリトリーじゃないんだって。絶対に変なことに巻き込まれるから近づくなって言われてるの」
「へぇ」
「……一人でも行くつもりでしょ。雪音ちゃん」
「行かないよ」
「目が泳いでるよ」
「さぁて、ジュースでも買ってこよーっと」
「ダメだよ、絶対に許しませんからねっ!」
「そこを何とか、お代官様」
「ダメじゃダメじゃ!」
もっとも放課後にはすっかりと忘れている雪音だったそうです。

* 製作中のゲームです

くぅぅ! やっとこさ『もみじひとひら』の基幹部分が完成です。
あとは気になっている部分に修飾を加えて、かつ全体のストーリーの締めくくりを加筆するのみ!!
問題は背景画像の撮影。
なるべく圧縮はしたのですが、どうしても必要なものが数枚。
それがまた、なかなかありそうでない画像。
ともあれ頑張って撮影してきます〜〜♪

19th Dec/2004



クリスマスを象徴する赤と白で彩られた商店街。
結構人通りの多いそこを、2人の女子高生が歩いていた。
そのうち、髪をツインテールにしている方が上機嫌で鼻歌を歌っている。
どこへいったら あるのかな♪
おかしやさんにも うってない♪
デパートみたって うってない♪
みかくにんおかしぶったい♪
パップラドンカルメ
「雪音ちゃん、何、その歌?」
「んー、恵美ちゃん、知らないの?」
ポニーテールの少女の問いに、彼女は逆に問いかける。
「うん、知らない」
「あれー、姉上は有名な曲だって言ってたんだけどなぁ」
うわさによれば♪
パップラドンカルメというものは♪
クリームみたいに まっしろで♪
カステラみたいに しかくくて♪
「変な食べ物ね」
雪音のちょっと音程の外れた、かなり間が抜けた歌に恵美はくすりと笑う。
うわさによれば♪
パップラドンカルメというものは♪
プリンみたいな あじもする♪
ケーキみたいな あじもする♪
なんてあのこが いっていた♪
「雪音ちゃんは食べたことあるの? その…」
「パップラドンカルメ?」
「うん、そう」
「ないよー。だから次の実習では……絶対作り上げるっ!」
決意の炎を背中に燃やした雪音に、恵美は引きつった笑いを見せる。
「あー、だから今日の料理実習で『あんなもの』作っちゃったんだ」
恵美はつい数時間前に行った料理実習を思い出す。
ケーキが料理課題だったのだが、雪音の作り上げたものは、その、なんというか……。
「やっぱり醤油はさしみ醤油だった方が良かったかな」
「そーいう問題じゃないと思うよ?」
放課後、どういう経緯か分からないが無理矢理雪音の作り出した物体を食べさせられた男子を恵美は思い出す。
彼――市松くんは青い顔をして保健室に走りこんでいたっけ。
”でも完食してたのよね。案外良い人かも”
「んじゃ、ソースをブルドックにした方が良かった?」
「あー、全然違うと思う」
恵美は隣を行く雪音に苦笑い。
「そもそも雪音ちゃんは私より料理は上手いんだからさ、ちゃんと課題通りのケーキを作れば良いのに」
「違う、それは違うよ、恵美ちゃん」
雪音は首を横に振る。
「生活のかかっていない料理で、普通に料理してどうするの? 人生、常に挑戦あるのみ!」
「そーなのかなぁ」
「そういうものよ。そんなことより恵美ちゃんはおいし〜いケーキを作ってさ」
ニヤリと微笑む雪音。
「だーいすきなお兄ちゃんに喜んでもらわなきゃ、ね」
「もぅ、違うったら!」
恵美は頬を膨らませて、スタスタと先へと進んでしまう。
「わー、ごめんごめん!」
恵美の歩速は緩まない。その後ろを雪音が小走りについてゆく。
「次の実習で美味しく仕上がる秘伝のレシピ、教えてあがるからっ!」
「じゃ、許してあげる」
立ち止まり、振り返る恵美。その表情にはすでに怒りはない。
「でもね」
念を押す。
「パップラドンカルメのレシピはいらないよ?」

* 食べてみたい?

mixiの日記とシンクロな小話でした。
っつーか、パップラドンカルメを知っている年代の人って、かなり人数限られるような??

18th Dec/2004



HPをお手軽なクリスマス仕様に。
気分だけでもーー!

近況をば。
ボーナス出ました。
買ったものは年末ジャンボ……夢を買うよっ。

満員電車の中での時間の過ごし方を教えてください―――

16th Dec/2004



今日の風の王国では、接続者には見知った名前が多かったです。
皆さん、戻ってきてる?!
んでもって、今日の夜想さんは―――

忍者屋敷十


門派員が久々に多く揃ったこともあって、軽く屋敷→忍者屋敷と遠足。
G狩りはやはり楽しいのぅ。

さて、本日は前のエピソードのオチでも。

目の前を通り過ぎたその上級生は、普段なら彼女にとって「うわぁ、キレイな人だなぁ」と一言で済まされる人物だった。
同時に彼女とは明らかに住む世界の違う―――しいて言うならば上流階級?な場所にいると思われていた女性だ。
しかし。
呆然と見送った雪音の目には、間違いなく彼女の頭にネコミミが付いているのを見逃さない。
あまりにも、あまりにも不自然な光景だ。
だがポーカーフェイスの彼女の様子からは、別にふざけているような感じは受けない。
むしろそのネコミミがごく普通のアクセサリーに見えてくるから不思議だ。
「あ、あれー??」
雪音は首を傾げる。
その横で同じように彼女の同級生であるところの相馬恵美も、こちらは唖然とした表情を浮かべていた。
「白川先輩、どうしちゃったのかな?」
「むしろネコミミが流行ってるとか……時代の最先端とか?」
「………そうなのかな?」
雪音の言葉に恵美は否定をしない。
同じような呟きが、廊下で白川を見送る女子,そして男子の間でも交わされる。
もしかしたら、アレ(ネコミミ)は流行っているんじゃないか、と。

白川はいつにもまして自分に送られる周囲の視線に内心首を傾げていた。
そして階段に差し掛かったときだ。
「白川先輩!!」
馴染みの声に振り返る。
そこには全力疾走をしてきたのか、息も荒く髪の乱れた下級生の姿。
「あら、北上さん。ごきげんよう。廊下を走るのはどうかと思いますよ」
「せ、先輩、それは…それはなんなんですか!!」
北上はビシッと、白川の頭に揺れるアクセサリーを指差した。
「似合いますか?」
小さく首を傾げて問う彼女に、思わず北上は力強く頷きそうになって、慌てて首を横に振る。
「どこの悪魔が先輩にそんなモノをつけるようにそそのかしたんですかっ!? 天誅です、天誅モノです!」
「似合いませんか?」
「いえ、似合うと言えば似合いすぎて、とゆーか、一般庶民に先輩のネコミミ姿なぞもったいなくて見せられません! むしろ私専用にしたいくらいです」
「?? 相馬部長と今井くんは、とても似合うとおっしゃってくれましたが?」
「まーた、あーいーつーらーかぁぁぁ!!」
北上は敬愛する先輩にまとわりつく2匹のハエを顔を思い出し、背に憤怒の炎を浮かび上がらせる。
「ダメですよ、先輩! アイツらのこと鵜呑みにしちゃ! 特に祐二のアホには耳を貸しちゃいけません」
「祐二?」
「あ、今井のことです」
「まぁ、名前で呼び合う仲なのね」
「ち、違いますっ!」
意外な攻められ方をされ、慌てる北上。
「家が隣で、幼馴染みなだけです」
「あら、幼馴染みだなんて、今井くんが萌えそうなシチュエーションね」
「先輩、お願いですから祐二みたいに『萌え』なんてオタクな単語を使わないでください」
大きく溜息一つ、北上は言う。
「あのバカとはアメリカとキューバ,イギリスとアイルランド並みの関係ですから」
「そう? 残念ね」
「残念じゃありません! それはともかくっ」
北上はネコミミを白川から奪う。
「欲しいの、北上さん?」
「……先輩がこんなのを付けて歩くくらいなら、私が付けます!」
言って彼女は己の頭に装着。
「似合うわよ、北上さん」
「似合いませんっ!」
「きっと今井くんも北上さんを見て萌えるわよ?」
「先輩をそんな目で見られたくないんですっ!」
こうして次の休み時間からはネコミミを付けた北上が構内で確認されることとなる。

「いやぁ、相馬先輩。白川先輩のネコミミは似合っていましたね」
「ふむ、君の言う『ネコミミ萌え』というのが少し分かった気がするよ」
「あれはしかし、白川先輩だから似合うんです。藍さんが描かれた白川先輩のイラストからも分かりますが、耳を隠すことができるくらい髪がある方が似合うんですよ」
「なかなか奥の深いものだね。しかしあんな物、どこで調達したんだね?」
「なんと廊下に落ちてたんです」
「不思議な拾い物だね」
「まるで天が我々に与えた様に思えますね」
ごす!
廊下を歩きながら談笑する今井の首が、あらぬ方向へとへし曲がる。
それはジャンピングニーパットを放った北上によるものだ。
「な、何をする、裕子!! って、貴様?!」
おかしな方向に首を曲げつつ、今井は廊下に仁王立ちになる北上の頭を指差した。
「貴様のような穢れた人間が、ネコミミなぞ付けやがって! それは白川先輩にこそ似合うものっ」
「私の白川先輩を汚すなっ! このオタク魔人が」
「フフフ、それは誉め言葉だよ。そんなことより裕子、そろそろそのレズっ気を直したらどうだ?」
「私と白川先輩はそんな関係じゃないわっ!」
言い合う2人を眺めながら相馬は一人、呟いた。
「仲が良いね、2人とも」
「「どこをどう見てそうなるんですか!」」
間髪入れずに2人からツッコミが入る。
「気も合うようだね。まぁ、ごゆっくり」
相馬は2人の背を向ける。
キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン♪
絶えることのない言い争いを背に聞きながら、放課後が終わり帰宅を促すチャイムに、彼は帰路へ付いたのだった。

夜半。
2階建ての古いアパートの一室で、ようやく原稿を書き上げた男の前にネコミミをつけた女性が現れた。
「あー、なにやってるんですか、乙音さん?」
「似合うでしょー? 今、女子高生の間で流行っているそうなんですよ」
「嘘をつけ」
一蹴した彼に、乙音は俄然反論。
「嘘じゃありません! 雪音の高校ではネコミミブームだそうですし」
「どんな学校ですか、それ?」
そもそもの発端である彼は、呆れ顔でそう呟いたのだった。

* これにて〆!

13th Dec/2004



上を見上げれば、そこに広がるのは青い空。
果てなどありはしない。
神の御言葉によれば、死んだら子の空の先にある世界に行けると言う。
だが、僕は。
「この空を飛んでやる」
幼い頃からの目標だ。
鳥達がこの大空を自由に舞うことができるのだ。人間であるこの僕が同じことができないはずがない。
だから僕は翼を願った。
悠然と空を舞う、鷹のような力強い翼を。
だが、いくら成長しようとも僕の背に翼が生えることはなかった。
神にいくら願っても、翼が生まれることはなかったのだ。
ならば作れば良い。
僕は古代のイカロスの様に、鳥の羽を編みこんだ翼を背負って場に臨む。
ここは街を一望できる塔の屋根。
街の真ん中に居を構える、神の住まいし場所。
教会の尖塔の一つだ。神に至る道にもっとも近いこの場所からならば、僕も空を舞えるに違いない。
眼下には街に人々が集まっている。
口々に僕の行為を止めさせようとする単語が吐かれているが、彼らには僕の目標など分からない。
ここからは彼らが、見慣れた街が小さく見える。
穏やかな南風が僕と背の翼を撫でていく。
心に生まれるのは僅かな恐れ。
もしも飛べなかったら……
きっと僕はこの体を伴うことなく、この空を舞い上がり神の御許へと旅立つことになるだろう。
それは僕の望むところではない。この体のままに空を舞い、そしてこの地に舞い戻ることが僕の目標なのだから。
これが果たされれば、僕達人間は地を這いまわりつづける必要がなくなるのだ。
希望と使命感で恐怖を打ち消し、僕は一歩を踏み出す。
ここで死ぬのなら、僕はそれだけの人間だったと言うことさ―――
浮遊感が、僕を襲う。
ざわめきと悲鳴が眼下で沸き起こる。
風を切る音が僕の耳を通りすぎ、その音の中でバキっという破壊音が混ざる。
視界の片隅を、折れた翼が風に舞った。
「あぁ」
落胆の溜息は中途。
僕の視界は全身を襲う衝撃に、暗転した。

目を覚ませば、そこには青い空はなく白い天井がある。
全身はギブスで巻かれ、身動きが取れない。
「むぅ」
唸りは間違いなく僕の耳に届く。
生きている。
「神のご加護だよ」
傍らに腰掛ける神父が告げた。
「君は境界の傍らのイチョウの木に落ちたんだ。もっとも全身打撲だがな」
困った顔の彼は、たしなめるように僕に言う。
「そうか」
だから僕は確信する。
「確かに神のご加護だよ。僕は空を飛べるまでは死なない」
「違う」
「いや、違わない」
神父の言葉を否定する。
「僕は神に生かされた。しかし神は僕に空を飛ぶ力を与えなかった。すなわち」
僕は断定する。
「神の力でなく、人間の力で空を飛べと、そういうことなんだ」
「残念だか」
神父は心底言葉通りの面持ちで呟く。
「私には君の言っていることが分からない」
「だろうね」
僕は満足に頷いた。
「だから君は神学者で、僕は科学者なのさ」

* 魂は折れることなく

年末ですねー。
ごたごたしているところで、息抜きにと久々にゲームしましてね。
そんな訳で今日の夜想さん―――

屋敷でごりごり


叫びで前衛さん募集しまして、狩りさせてもらいました。
計2回、3時間ほど狩って7.5億ほど。
中まで@30〜40億です。相方さえ見つかれば、すんなり行けそう。
あ、あと暇ね。時間があればイケる!

12th Dec/2004



「えーっと、コレを付ければ良いの?」
「そうだ、それを頭につけてみてくれ」
彼女は恐る恐る、手にしたヘアバンドで――それも大きな猫のような耳がついた――を己の髪に触れる。
ふっさりしたツインテールが揺れ、その結った二束の髪の前に猫の耳のついたヘアバンド、すなわち通称ネコミミが装着された。
それをまじまじと眺めるのは一人の男。
机の前に置いたノート型PCの電源を入れたまま「うーむ」と唸る。
「そしたら『ネコミミモードでーす』と言ってみてくれ」
「はぃ?」
「『ネコミミモードでーす』だっ!」
「は、はぃぃっ!」
少女は男の迫力に押されて、慌てて叫ぶようにして言った。
「ネ、ネコミミモードでーす!!」
「もう一度っ!」
「ネコミミモードでーす!」
「もう一度!」
「ネコミミモードでーっすぅぅ!!」
「分からん!」
ドン
「ひぃ!」
思いきり机をたたく男に、ネコミミ少女はビクリと体を震わせた。
「オレにはこれのどこが萌えなのか、さっぱり分からん! 編集長のヤツ、オレにこんなの書かせやがってぇぇ!!」
ノートPCの画面にはワープロソフトが起動されている。
書きかけの文章の題名は『巷に蔓延るネコミミ現象とその萌えについて』。
「あ、あのー、亮お兄ちゃん? 帰って良いかな?」
「ダメだ、もう一度っ!」
「ひーん」

―――ってことがあってね。普段は優しいお兄ちゃんなんだけど」
「……若桜さん、その人に変なことされなかった?」
「へ、なんで?」
「あ、いや……大丈夫なら良いんだけどね」
困った顔で呟き、相馬恵美は何気に耳をそばだてている、若桜の隣の席の男に声をかける。
「市松くん、ホッとした? それとも残念?」
「? 何がだ、相馬」
無愛想に顔を向ける男は目つきが鋭い。
それに気を臆することなく、相馬は続ける。
「若桜さんのネコミミモード、見たくなかった?」
「え、見たいの、イチマツ?」
若桜は懐からネコミミのついたヘアバンドを取り出し、おもむろに自分の頭に装着。
「どう、ね、どうよー?」
「……なんか痛々しいな」
興味ない、そう全身で表しながら彼はそっぽを向いた。
「む」
そんな彼の頭に、若桜は自分の頭につけていたネコミミを取り付けた。
「あーっはっはっは! ネ、ネコ、ネコミミイチマツだ、ぶひゃひゃひゃ〜〜」
大爆笑をかます若桜と、困った顔をしながらも笑いをこらえる相馬。
クラスの他の連中も、ニヤニヤと笑いながら成り行きを見守っていた。
そっぽを向きながら、しかしふるふると震える市松。
「いやぁ、萌えるね、うん、萌える」
「ゆ〜き〜ね〜〜ぇぇぇ!!」
ガタン、椅子を蹴って立ち上がる市松。
笑いながら逃げる若桜、それを彼は全力で追いかけていく。
こうして教室を出ていった2人を眺めつつ、相馬の脳裏には一つの歌が流れていたのだった。

お魚くわえたドラネコ、おっかけ〜て♪
裸足で、駆けてく。陽気なサザーエさん♪

「あ、ネコとサザエさんが逆ね」

* ネコミミモードでーす♪

取り敢えず年末まで、何かの歯車が狂ったかように忙しくなりそうです。
先週も本州をまるまる一周してきたような感じでして。
肉体的な疲れよりも、むしろ精神的な疲れに参っております。クレーム関連多くてねぇ……。
風呂入って睡眠とるのが一番、かな?
何かいいリラックス方法ありましたら求む!!

5th Dec/2004



「おはようございます、白川先輩」
「あら、北上さん。ごきげんよう」
朝の登校シーン。それはどこにでも非常にありがちな絵だった。
北上が見つめる先にいる敬愛すべき先輩は、いつもながらに可憐だ。
生徒手帳に描かれているそのものの見本のように制服を着こなしつつ、細い首を黒色のマフラーで覆い隠している。
同様に冬の冷機に晒された両手には……
「あれ、先輩。手袋はされないんですか?」
「しません」
にっこり微笑み、白川は告げる。
「あ、じゃ、じゃあ! 私、クリスマスプレゼントに先輩に手織りの手袋を…!」
「遠慮しますわ、北上さん。さ、いつまでも話していては遅刻しますよ」
言って早々に背を向ける白川を、北上は慌てて追ったのだった。

12月1日。
実はこの日は白川の誕生日なのであるが、アピール能力皆無&個人情報を漏洩させない彼女のこと、気づく者は誰もいないのが常であった。
の、だが……
その日の放課後のことである。
「お誕生日、おめでとう。白川くん」
帰路、唐突に彼女の隣を歩く男が言った。
「……部長。ご存知だったのですか?」
「部下の心を掴まずして部長は名乗れぬよ、白川くん」
あっはっはと笑いながら、彼は白川に30cmほどの平たい箱を手渡した。
きれいに包装され、赤いリボンがかかっている。
「これは?」
「誕生日プレゼントに決まっておるだろう」
「……開けてよろしいですか?」
「ああ、存分に開けたまえ」
開け方に存分も何もないのだが、白川は立ち止まり封を解いた。
包装紙を破らずにたたんでしまうところが割と几帳面である。
「あら、これは」
中には一組の手袋。
黒い絹地でできたそれは、手の甲から腕にかけては薄い皮で仕立てられている。
普段はあまり趣味はよろしくないと思われがちな相馬にしては、なかなかに上品な代物だ。
「君はいつも手を寒そうにしておるからな。どうかね?」
手袋を見つめる白川は、嬉しいような困ったような複雑な表情だ。
「しっかり見ていることは見ているのですね」
「はっはっは! 当然だろう。着眼点は常に鋭くあるべきなのだよ」
(貴方と手をつなぎたいから手袋をしていなかったのに。心は読めないんですね)
「何か言ったかね?」
「いえ、何も。あ」
白川は手袋を落としてしまう。
慌てて拾おうとする彼女は、しかし先に相馬に拾われてしまった。
「? どうしたのかね」
首を傾げ、彼は彼女の手を取る。
「!」
「ふむ、かじかんでしまっているではないか」
言って相馬は白川の両手を己の手で包み込むようにして握り直した。
彼女の手に、相馬の体温が染み渡って行く。
「たまにはハンドインポケットというのも良いものだと思うが?」
「そうですね」
白川は薄く笑って続ける。
「けれど部長から手袋いただきましたから。明日から使わせていただきますわ」

―――っていう現場を見ちゃったんだけど、うわっ!」
一部始終を報告した若桜 雪音は、友人であり間違いなくブラコンである相馬 恵美のこの時の表情を二度と忘れない。
後に曰く、
「いやぁ、血の涙ってホントあるんだね、怖いよ、マジで」

* みんな滅べば良いと思うよ?

とうとうコートを出しました。
朝と夜が寒くてねぇ。昼はいらないんですけど。

29th Nov/2004



某氏の紹介で『mixi』を始めてみました。
紹介がない限りは登録ができないシステム。
なるほど、なかなか凝っている。
しかしこれって卵が先か、鶏が先か……どうやって広まっていったのだろう??

ところで皆さん、幼い頃に家には入れなかったことってありませんか?
家の者が留守だったとか、鍵を落としたとか。
ちなみに私は社会人になってからもありますよ?(答え:鍵を会社に忘れた)
本日はそんなお話―――

呑み過ぎた。
彼は腕時計を眺めつつ、千鳥足で帰路に就きながら思う。
すでに時間は深夜1:30。
「いくら新刊本の原稿がアップできたからって、9時間は呑み過ぎだ…」
出版社の人間と、彼と同じフリーライター達と一緒に呑みに繰り出したのはまだ日が出ていたはずだ。
「ゆっくり寝よう」
酒臭い吐息を一つ。
それは夜の冷気に白く立ち昇る。
やがて彼は見慣れた二階建ての木造アパートへ。
階段を上り、角部屋である自分の部屋の前に。
「ん?」
玄関前に何か大きな物が落ちている。
それはしゃがみこんだ……人間?!
「ぬお、乙音さん?!」
彼の声にひざを抱えた人影は顔を上げる。
それは紛れもない、彼の隣人であるところの若桜 乙音嬢。
「亮くん……」
消え入りそうな彼女の声、そして月明かりに映えるその表情を見て彼は絶句した。
呆然とした、今にも泣き崩れてしまいそうな顔だ。
さらに彼女の着こんだスーツはあちこちドロに汚れ、胸のボタンにいたってはほつれてしまっている。
白い頬はその右側が、なにか擦ったようにうっすらと血に滲んでいた。
亮の脳裏に、暴漢に襲われて汚される隣人の姿が浮かび……いやいやと頭を横に振った。
その間にもよろめきながら彼女は立ち上がるが、バランスを崩して倒れそうになる。
左足のヒールの踵が折れていた。
慌てて亮は彼女の右手を取った。
「!」
細い乙音の指は、すりむけて血に塗れている。
左手も取ると、同様に自身の血にぬれていた。
「ど、どうしたんですか、乙音さん! 誰かに…誰かに襲われたんですか?!」
「ん……実は」
「実は?」
「……部屋の鍵を会社に忘れてしまって」
「忘れてしまって?」
「雪音は昨日から修学旅行だし」
「はぃ?」
「管理人さんも奥さんと旅行行っちゃったみたいで」
「はぁ」
「仕方がないから1階から塀を伝ってベランダから窓を破ろうとしたんですけど」
「ほぅ」
「落ちちゃいまして。と言いますか、侵入無理でして」
「スパイダーマンじゃありませんしね」
「他の皆さんも今日に限ってだーれも帰って来ませんし」
「運がないですね」
「こうして途方に暮れていたんです」
「馬鹿ですね」
「亮くんのバカーー!!」
すっかり酔いが覚めて冷静に答えた亮に胸に飛び込んで、乙音はぐすぐす泣き始める。
「ああ、もぅ。とりあえず僕の部屋へどうぞ」
酒以外の要因で痛い頭を押さえ、亮は部屋の鍵を開けたのだった。

「シャワーまで借りちゃって、ごめんなさいね」
「はいはい」
亮の大きめなパジャマを羽織った乙音は、コタツを挟んで彼と向かい合っていた。
その細い両手を解放した亮は、彼女の頬に手を伸ばす。
ぎゅっと目を瞑る乙音。
「っ!」
「無茶するからですよ」
右頬に消毒液と、そしてバンソーコーを貼られた乙音は頬を膨らませる。
「だって仕方ないじゃないですか。最悪、ピッキング術を使って鍵をこじ開けようと…」
「そんな技能ないでしょうが」
一蹴。
「夜も遅いですし。乙音さんは僕のベットを使ってください」
「亮くんはどうするの?」
「僕はコタツで寝ます」
「ダメ」
乙音の力強い拒絶に、亮はニヤリと笑って続けた。
「じゃ、一緒に寝ますか?」
「何を甘えたことを言ってるの」
「はぃ?」
少しも甘くくすぐったいシチュエーションにならないことに亮は諦めを覚えつつ、乙音の行動を見る。
彼女はコタツの上にドデンと、2本のビンを置いた。
「こ、これは」
それは赤い液体の入ったビンだ。
ラベルにはフランス語らしきものが見て取れる。
「そう、ボジョレー・ヌーボーよ。今日は飲み明かすわよー♪」
「……勘弁してください」
「亮くんらしくないわよ。さて、コルク抜くやつはっと」
キッチンへ行き、道具を取ってくる乙音。
「人んちなのによく道具の場所知ってますね」
「さー、酒宴よ、酒宴♪」
「まじに勘弁してください」
勘弁されなかったそうです。

* 合掌

北野武監督の映画『座頭市』が日曜洋画劇場でやっていたので観てしまいました。
いやはや、テンポよくて面白いですな。
息抜きになるシーンにはしっかりと笑いも取っていて、楽しませていただきましたよ。
殺陣のシーンなんかは外人、喜んだんだろうなぁ。

28th Nov/2004



思った通りといいますか、風邪ひきましてね。
しかしながらこの季節は多忙の為に寝込んでもいられないのです。
「アルコール消毒!」と称して酒を呑み、「汗をかく!」と思い至ってジムで運動してきまして。
悪化。
調子の悪いときは素直に寝ていたほうが良いですね(鼻水垂らしながら)。
さて本日は、我が家の近所に出た人魚とロリコン教師の話。
真実か否かは君の心の内に……

人魚がこの街に出るという、そんな子供たちの噂がたっていたのは知っている。
これでも教師生活15年。子供たちの状況を掴むのは慣れている。
だから私のクラスにはイジメはない。断言できる。
さて、それは兎も角。
冬も始まったこの季節、私は宿直として学校を回っていた。
懐中電灯を手にしてはいるが、夜空に煌煌と輝く満月の冷たい光に辺りは非常に明るい。
ちゃぷん
音を聞いたのは、プールの前を通った時だった。
ちゃぷん
間違いない、プールから聞こえてくる水の音だ。
アオミドロが生え始めた水の中で遊んでいる生徒がいる?
いや、この寒い時に遊ぶ馬鹿などいないだろう??
私はプールの鍵を開け、中へと踏み込んだ。
ちゃぷん
水面が揺れた。
月の白光に照らされた水面には、胸から上を出した女性が一人。
「誰だ!」
じゃぱん!
彼女は『跳ねた』。
下半身はまるで魚のように尾びれがついていた。
「人魚……?」
「その通りっ!」
私の呟きに、彼女は大きな胸を張って答える。
ちなみに私は15歳以上は範囲外なので、この人魚にはなんの感慨も持たないことを付け加えておくことにする。
「まずはこの小学校のプールを拠点に、ワタシは世界を征服するっ!」
私は馬鹿に大きな声で宣言する人魚を視界の端に、プールの制御室へ足を運んだ。
「ゆくゆくは魚市場には貴様ら人間を並べてやろうではないか、ハハハハハハ〜〜〜あああ〜〜〜ぁぁぁ〜〜〜」
馬鹿笑いは次第に小さくなっていく。
制御室から出た私は、水が流れて空になったプールを見下ろすだけだった。

翌年の夏は例年以上の暑さだった。
子供たちもプールの時間を待ちわびているようで、そして私としても若々しい彼女(彼も)達の肢体を眺めることができるこの時間が大好きだ。
「はーっはっはっは! このプールはワタシが占拠した!」
どこかで聞いた声がプールのほうから聞こえてくる。
「お、お前は…」
それは昨年、プールに住みつこうとしていた人魚にそっくりだった。
たしか腐った水と一緒に排水溝送りにしたはずだが。
「ワタシ達はこの姿をアオミドロに変え、翌年に水が入るまでじっと静かに眠ることができるのだ」
「それってシーモンキー?」
一人の生徒の指摘に、人魚は硬直した。

以来、我が学校のプールにはシーモンキーと同等の地位に鎮座する人魚が住んでいる。
ヤツの馬鹿でかい笑い声が聞こえるたびに私は毎年、夏を感じるのだった。

* とりあえずこの教師は思想的に問題が。

ドラクエ武器占いを真面目にやってみました。
結果『ドラゴンキラー』……微妙(ぶっちゃけ使えない武器だろう?)。
おふざけモードで解答してみました。
『もろはのつるぎ』
これだよ、求めたいた解答は!(いや、ダメだろう?)

27th Nov/2004



風邪の予感。
微妙に喉が痛いですよ?
関節が痛いですよ?
いや、これは多分、昨日のゴルフ打ちっぱなしの筋肉痛ですよ、うん。
喉も筋肉痛だよね、うん。
そう言い聞かせている自分がいました。
ともあれ本日は『架け橋』な一場面を(↓)。

1年生の教室の前に彼は足を運んでいた。
右手には弁当箱。
それは部活で早出だった妹が家に忘れていったものだ。
お昼休みの今、きっと彼女は腹をすかして机につっぷしていることだろう。
「む?」
教室の引き戸に手をかけて、彼は中で怒鳴り声が聞こえてくるのに気が付いた。
どうやら男女で言い争いをしているようだ。
「元気なことは良いことだ」
一人呟き、戸を開ける。
「あ、相馬先輩」
彼には見知らぬ女生徒の顔が視線の先にあった。彼は知らなくとも、彼女は彼を知っているようだ。
「ふむ。恵美はいるかね?」
「あ、は、はい。メグちゃん、お兄さん来たよっ!」
「え? あ、お兄ちゃん!」
パタパタと駆けてくるのは長年見知った顔だった。
「うっかりにもほどがあるぞ」
小さく微笑み、彼は弁当箱を渡す。
「ありがとー! もぅ、どうしようかと思ってたの。今月金欠だから購買のパンも買えないし」
「無駄づかいばかりするからだ。しかし…」
相馬は妹の向こうで繰り広げられる1組の男女の壮絶な口喧嘩に顔をしかめた。
「なんだね、あれは?」
「あー、若桜さんと市松くん?」
「いつものことです、相馬先輩」
彼に妹を取り次いだ女生徒がここぞとばかりに、二人の間に割り込んだ。
「いつも喧嘩してるんです、あの2人。仲が良いほど喧嘩するって言いますけど」
「ふむ。しかし更衣室のノゾキやらなんやらと、なかなか物騒なことを言っているようだが?」
聞こえてくる罵詈雑言を要約すると、こうだ。
昨日、女子更衣室でノゾキが起こった。それに対し男子生徒が「見ても減るもんじゃなし」と言った事が口論の始まりのようだった。
「先輩はご存じないですか? 昨日校内に不気味な影が徘徊してたって噂」
「不気味な影……か」
相馬の記憶の片隅に、思いっきり引っかかる物件があったのだが都合の良い彼の脳みそはそれをあっさりと消去した。
「噂なんぞは3日もすればなくなるものだろう」
「そうですね♪」
しきりに同意する女生徒に彼は一礼。
「恵美、ちゃんと噛んで食べるんだぞ」
「分かってるよっ! もう子供じゃないんだからっ」
妹にそう言い放ち、彼は教室を後にした。
「弁当忘れるような奴は、まだまだ子供だろう……」

弁当を開けた恵美の目の前では、相も変わらず口論が続いている。
「はっきり言わせてもらうがな、雪音ぇ」
「なによ、イチマツ!」
目つきの悪いイチマツと呼ばれた男子生徒は、ツインテールの少女にはっきりくっきりこう言い放った。
「胸のないお前なんぞ、覗く価値もありゃしねぇだろうがっ!!」
その一喝に、2人を取り巻いていた男子生徒たちの中から喝采が上がる。
「確かに若桜の着替えを覗いてもなぁ…」
「一部マニアしか喜ばないっていうか?」
そんな追随する声に、雪音の肩がふるふると震える。
「反論はないのか、雪音?」
問うイチマツを、雪音はキッと睨みつけた。
いつもにはない迫力に、思わず市松は息を呑む。
そのまま彼女は席を立って走るようにして教室を出て行った。
なりゆきを見守っていた女生徒達は、なんと言って声をかけようか分からずに、その後姿を見送るしかできない。
「勝ったぜ、ついに」
口論での初めての勝利を味わいつつ、しかしながら市松は胸の片隅に小さな罪悪感を抱いたのだった。

翌日――
「おはよ、イチマツ」
「おぅ…っと、なんだと?!?!」
昨日は何事もなかったように挨拶をしてきた雪音を見て、市松は愕然とした。
思わず口をバカみたいに半開き状態で数分固まってしまったほどだ。
それは彼に限らず、クラスメート全員に言えることだった。
ダメージ量としては男子の方が女子よりも大きそうだったが。
そして男子女子ともに、驚いた後には非難の視線を市松に向けている。
「お、俺が悪いのかよ、くそっ!」
全く普段通りに席につく雪音の『胸』は明らかに『大きかった』。
Aにも満たない彼女の胸が、明らかにCほどに育っている。
いや、間違いだ。育っているのではない。
何かを『入れている』。
その姿たるや、頭髪に悩んでいた上司が翌日に何の前触れもなくふさふさになって出勤してくるようなもの。
そしてその姿を目の当たりにして、何も言えない部下の気持ちにクラス全体が陥っていた。
「お、おい、雪音」
「なに?」
「あー、えっと……」
(言え、イチマツ。指摘しろ!)
(触れちゃダメよ、市松君。その話題はふっちゃだめ!!)
(ダメよ、彼女のハートはグラスハートばりに粉々なのよっ、香の心臓の移植が必要なほどに!)
クラスメート達が思い思いの気持ちを抱いて2人の会話をチェックする。
方向性は様々だが、指向性は同一だ。
「あー、えっとな……元気か?」
「ええ、元気よ」
(くぁー、つかえねぇぜ、イチマツ!)
(案外度胸ないのね、市松君)
ギャラリーは勝手だった。
その後、見えないプレッシャーに負けた市松が『ヌーブラ』を着用してきた若桜 雪音に土下座を実行し、事なきを得たという。

* ヌーブラに詳しい会社の同僚がいます(♂)

某氏に薦められておりました『Bad! Daddy(ファミ通文庫/野村美月氏)』全4巻を読了。
ぶっちゃけ、魔法少女の戦隊モノのお話。ある意味で異色。
さらに読み解くと実際は、悪の組織の司令官である、娘一筋の親バカオヤジ(三十路手前でかなり美形、しかし性格破綻)の娘LOVEなお話。
ってか、多分オヤジが主人公。間違いない。
世の中の「くそオヤジの靴下と同じ洗濯機でアタシの下着洗わないでよね!」と娘に怒鳴られるお父様方に読んでいただきたい。
読んだ後に何が起こっても当方は関知しませんけど。
お話的には、クセはあるものの非常にきれいにまとめれていて、良シリーズではないかと。

24th Nov/2004



気が付くと、彼には『影』がなかった。
「影というものは物体が光に当たった際に、光の放出方向に対して物体を挟んで反対側に生じる光が及ばない部分を言う」
「そうですね。それがないっていうのはどういうことでしょう、相馬先輩?」
「良い質問だ、今井くん。原因としては物体が『ない』というケースがあげられる。または物体が光を遮らないというケースも考えられるな」
「ホラー話なんかでは、影が抜け出して人のように振舞って、いつしか本人と入れ替わる…ってのがありますけど」
「それはあまりにも科学的ではないな。オカルトの領域であり、それは理系の私には通じない事象だ」
「でも先輩のおっしゃったケースも、今この事体に当てはまるとは思えませんけど?」
「当てはまるどうこうは良いのだよ、今井くん。大切なのは『何が起きているか』であり、『その理由は何なのか』だ」
「はぁ、とりあえずヤバいんじゃありませんか?」
溜息とともに今井は相馬の足元を見た。
リノリウムの廊下には天井の蛍光灯と窓からの日の光によって今井自身の影が伸びている。
しかし相馬の下にはそれがない。
影が、ない。
「いつからですか?」
「さぁな。君に指摘されて始めて気が付いたのだよ」
「……あの、もしかして白川先輩から何か薬とか飲まされませんでしたか?」
「彼女からはお昼に弁当をいただいたが。それだけだな。それが何か?」
「チクショー、手作り弁当かよっ!!」
一人地団駄を踏む今井。それを不思議そうな目で見つめる相馬。
そんな2人の後ろから1人の女性が現れる。
「どうかしましたか、2人してこんなところで」
「おや、白川君。文芸部の方は終わったのかね?」
「ええ。これから化学部の方で今研究中の…あら?」
白川は途中まで言いかけて相馬の足元に視線を落とす。
「部長、お影が見当たらないようですが」
「ああ。そのことで今、今井君と話していたのだよ。いったい何が起こったのかと、ね」
「…あ」
「白川先輩、今の『あ』ってなんすか?」
「しゃっくりの一種よ、今井くん」
涼しい顔で応える白川。
「部長。どうやら私は、今化学部の方で研究している物件については継続が不可能になってしまったようです」
「うむ、どうかしたのかね?」
「はい。途中まで合成した試薬をどうやら誤って使ってしまったようです」
「それはそれは残念なことだね。どこに使ってしまったのかね?」
「部長のお弁当にですわ」
「なるほど。君の研究の苦労は分かるが、今更返してくれといわれても返しようがないな」
「そうですわね、残念です」
「こらこらこら、そーじゃないでしょうがっ!」
今井がどうもスレた二人の会話に割り込んだ。
「相馬先輩の影はどうなってしまったんです、白川先輩?」
問われ、白川は「ふむ」と吐息を一つ。
バイナリィランドってご存知ですか?」
「懐かしいな。ハドソンから出た2匹のペンギンが主人公のファミコンソフトではないか」
「はい。画面が左右に分かれ、左右正反対に動く2匹のペンギンを同時に画面上のゴール地点に到達させるというパズルゲームです」
「……僕は時代が違うので良く分かりませんが、それがどうしたんですか?」
「部長の『影』は今、部長の動きとは正反対の動きをとって存在しています」
「は?」
今井は首を傾げる。
相馬は「ほほぅ」と楽しげだ。
「部長はお昼以降はこの学校から出ていませんね?」
「ああ。ということは私の影はまだこの学校にいる可能性が高いな」
「はい。元に戻るには影と交差すれば完了です」
「なるほど。では今井くん、私の影を探してきてくれないかな?」
話を振られた今井は「え?」と困った顔をする。
「私がこの場で止まっていれば、影も止まっているはずだ。一旦、影のいる場所を把握してから行動する」
「その後は?」
相馬は軽く笑う。
「簡単なことだ。影のいる場所へ向かえば良い」
「へ?」
「影は私とは反対の動きをするのだろう? すなわち鏡の中の動きと考えれば良い。ということはだ、私が近づけば近づき、遠ざかれば遠ざかるということだ」
「……はぁ」
分かったような分からないような顔で今井は頷き、とりあえず廊下の向こうへと駆けていった。
その背が見えなくなってから、白川は小声で呟く。
「ごめんなさい、相馬さん」
「いや、なかなか楽しめたよ、白川くん。君は私の論理の範囲をいともたやすく超えてくれる」
「褒められている、んでしょうか?」
「最大限の褒め言葉だよ、白川くん」
言って相馬は、穏やかに微笑んだ。
翌日、学校中に『怪しい影が更衣室やロッカーを徘徊する』という怪談じみた噂話が流れたとか。

* 懐ゲー

近所のゴルフの打ちっぱなし行ったんですが、打ち方が悪かったのか左手の親指の皮が剥けまして。
何をするにも痛い(T_T)

今日の風の王国―――
夜想さんにて屋敷で4億ほど稼がせてもらいました。
あと30億くらいで中仙人です。
湖の卦だけがない……売りに出ないかなぁ。

23th Nov/2004



Passed Log ...