Diary


小話が長文化の傾向に……もっとこじんまりとまとめないとなぁ……。

今日は私、稲荷昇格初心者の日常をお送りいたします。
私の朝は場合によってまちまちですが、今日は早いんです。
なんと朝6時。でも都心へ働きに出かけるサラリーマンさんたちもコレくらいの時間には起きてるんですよね。
起きる時間はバイト先である神戸屋さんのシフトによって変わってくるんですよ。
イートインのできるここ神戸屋さんの営業時間は8時から21時まで。
でも前後2時間づつ開店準備だとか片付けとかがあるので、店長さんはいつも大変だと思います。
今日の私はちょっと頑張っちゃいまして、7時から16時までの担当です。
交通手段はもちろん徒歩。
神戸屋さんが居を構える駅前までは歩いて20分。
そのうち、貯めたお金で自転車を買いたいと思います。
さて、その神戸屋さんですが、駅前の通りに面した壁は総ガラス張り。
朝日が優しく店内を照らしてくれるんです。
またそのガラスの壁に沿ってイートイン用のカウンターが並んでおり、その造りはとても人が入りやすくなっています。
もともとこの街は都心のベットタウンであることもあって、朝食を摂られて行くサラリーマンさんやOLさんは多いです。
お店が忙しいのは、この朝の通勤時間とお昼、そしておばちゃん達が一休みする3時と、学生さん達が寄り道をする夕方、そして晩御飯にと軽食を取られる女性の多い夜です。
………案外、息つく暇がないのが現実だったりします。
店長さんはバイトの子達がみんな可愛いからだとヨイショしてくれますけど、多分立地が良いんでしょうね。
そんなこんなで今朝も商品陳列を終えて、入り口を箒で掃いて、さぁ開店です!
「「いらっしゃいませー♪」」
4月から大学生だという同僚の女の子と一緒にレジに立ちます。
朝一番からやってくるお客さんは常連さんが多いんです。
慣れた手つきでトレイを持ち、陳列棚に並べられた様々なパンをセレクトしていきます。
そして常連さんたちはそれぞれに好みのパンがありまして、何度か顔を合わせているうちにある程度覚えてしまったりします。
「これと、コーヒーをホットで」
ちょっとくたびれたスーツを着込んだ20代後半のサラリーマンさん。
パンを2つといつものホットコーヒーです。いつもの通り。
「アイスティーをつけて」
次のお客さんは30代後半の女性。多分隣接する百貨店の店員さんです。こちらもいつも通り。
「いつものアイスコーヒーね」
そう告げるのは、起伏のあるプロポーションにフィットした黒いスーツを纏う妙齢の女性。
長い黒髪を軽く揺らしてサングラスを取ります。
現れる瞳は僅かな笑み。
最近常連となった、嫌がらせとしか思えない私のお姉ちゃんです。
「780円になります」
私は他のお客さんに接するのと同様に営業スマイルで答えました。
「いつも可愛いわね、お嬢ちゃん」
お姉ちゃんは私にそう言って、ウィンク1つ。
トレイにアイスコーヒーとパンを乗せて、陽だまりのカウンター席へ向かいます。
何故か予約席と化しているいつもの席で、駅前通りを眺めながら傍らに抱えていたノートパソコンを開いて何やらカタカタと打ち込み始めました。
なんでも最近は「かぶしきとーし」というものを始めたらしいのです。
お姉ちゃんは今までは人間社会から離れようとしていたのに、最近は積極的に溶け込もうとしている。
何か心境の変化があったみたいだけれど、私にはよく分からないです。
ただ悔しいのは、そんなお姉ちゃんはこうして見ると妙にカッコ良く見えること。
現に私の隣の同僚は、お姉ちゃんのファンだったりします。だから、
「ずるいなー、私も可愛いって言われたいなぁ」
「あー、えーっと、いや、言われてもねぇ」
ほら、こうなる。
お姉ちゃんの存在そのものは嫌がらせ以外の何者でもありません。
ふとそんなご当人に視線を移すと、こちらを見てニヤニヤしていました。
一度コイツとは、小一時間ほどガチで話し合う必要があると思いました。

朝の混雑の一段落。
小休止を挟んで今度はお昼の混雑が始まります。
お昼は基本的にはイートインのお客さんよりもテイクアウトの方が多いので、楽だといえば楽ですが。
「いらっしゃいませ」
「あ…」
私の挨拶にお客さんが声を漏らしました。
パリっとしたスーツを着込んだ、金色の髪をした外人男性です。
何故か首輪をしているのがミスマッチでした。
「あー、う、うぇるかむ?」
「あ、いや、そうではなくて」
手をパタパタ横に振る彼。
改めて良く見ると、それは先日お姉ちゃんと戦った(?)犬神さんでした。
「アルバイト、かい?」
「はい。貴方は?」
レジを打ちながら私は訊きました。
「オレは…ちょっと野暮用だ」
気になります。
「アンタと同じだよ。何か仕事をしないと¥が、ね」
「そうですか、頑張ってください」
おまけで私が後で食べようと思っていた売れ残りのパンを何個か、彼のテイクアウトの袋に入れておいてあげました。
お仲間サービスです。
「ありがとう。アンタも頑張れよ」
「はい♪」
そして彼はちょっと早足で駅前通りの人ごみの中へ消えていきました。
「ねぇねぇ、今の人、知り合い?」
お昼から入った同僚の女の子が尋ねてきます。
「んー、そんなところ」
「カッコイイ人ねぇ、紹介してくれない?」
「あー、えっと、色んな意味で難があるから、やめた方が良いと思うよ」
「そんなこと言わずにさぁ」
「はい、仕事仕事」
「ちぇーっ」
面倒なことはゴメンです。

お昼が過ぎ、またまた小休止。
そして戦いは次なる3時となります。
「いらっしゃいませ」
高校生、大学生の入りの多いこの時間。
今日に限って見た顔の来店が多いようです。
「あら、貴女」
「いらっしゃいませ」
私は営業スマイルのまま、同級生らしき女達数人を連れたソイツと対峙します。
そう、忘れもしない。
私のカレシの後輩とやらを名乗る、今どき流行りもしないメガネっ娘です。
彼女はメニューを眺めながらこう言いやがりました。
「ココアと、そうね。ジャぱん8号を貰おうかしら」
「ミドリ亀パンはローソンで買ってくださいね」
大人ダネ、私っ!
どうでも良いですが、食べ終わってるのに長時間おしゃべりの為に居座るのは迷惑です(この女に限り)。

今日の私のお仕事はこの忙しさが一段落した頃。
「店長、お先に」
「お疲れ様、またよろしくね」
「はい」
着替えた私は急ぎ足で裏口から出ます。時間は丁度夕方4時。
裏口から駅前通りの裏通りをちょっと行ったところに小さな公園があります。
一つしかない自販機の前。
自転車を止めたカレが待ってくれていました。
「ごめんなさい、待ちました?」
「いや、今来たところ」
私をホッとさせる柔らかな笑みを浮かべているカレは、手にした缶コーヒーをゴミ箱にダンク。
カランと音を立ててそれは収まります。
ホットでしか売っていないそのコーヒー。
私のカレは猫舌です。
「さ、行こうか」
「うん」
荷台に横座り、私は彼の腰に腕を回します。
「どこか寄っていく?」
「どこでも付いて行くよ」
回した腕にギュっと力をこめて。
私だけの時間は終わり、ここからは私とカレの時間が始まります。

* 伏線というわけではないのです

池袋の映画館で、現在放映している映画の大きな垂れ幕がビルにかかっておりまして。
三つほどのホールがあるらしく、三つそれぞれの宣伝がなされておりました。
その中にはAIRもあったのです。神尾観鈴が微笑んでいる大きな垂れ幕。
巨大なイラストでもある彼女の微笑みの、その下には映画の題名が黒バックに白文字で描かれていました。
『呪怨』と。
いやいやいやいやいや! 呪怨ちゃうやん!! おしろい塗った美凪とかが出てくるのか?!?!
正確に申しますと、そのさらに下にAIRの文字がありました。
同じホールで上映されているとのこと。
ってーか、垂れ幕に書かれた題名のそれぞれの位置関係、間違ってるだろ、これって。
雑踏の中、一人ツッこむ冬の空の下。

15th Mar/2005


稲荷な舞台でのホワイトデーなお話でも―――

学生賑わう授業終了後の講堂。
学生達が敬遠しがちな前列で、一組の男女が話していた。
男は女に手のひらに乗るほどの大きさの、可愛らしく放送された小さな包みを手渡す。
「ありがとうございます、先輩」
「いや、大した物じゃないし」
「そんなことありませんよ。こうしてわざわざ頂けるっていう、気持ちがこもっているのが良いんです」
「んー、そんなもんかなぁ」
「そうですよ」
「そっか」
眼鏡の奥の瞳を笑みの形で描いた女の言葉に、彼は「なるほど」と頷きながらカバンを手にする。
「じゃ、僕はコレで」
「え? 研究室には寄らないんですか?」
「ああ。ちょっと今日は、ね」
「あ…」
彼女が呼び止める間もなく、彼は講堂を早足で出ていった。
残された彼女は手にした小さな包みを胸に抱く。
「この義理堅さは、時に残酷ですよ。先輩」
呟きは雑踏の中に消えた。

カノジョの目の前には、仙台は定義山の名物「三角あぶらあげ」が山のように積まれていた。
「え? こ、これは??」
思わず耳と尻尾を出してしまったカノジョに苦笑いを浮かべつつ、彼は告げる。
「ほら、一ヶ月前のバレンタインのお返しだよ」
「あぁ、そっかぁ。ありがとう!」
カノジョの満面の笑みに、彼は満足げに頷いた。
わざわざ遠出して買ってきた甲斐があったというものだ。
これ以上もなく至福の笑みで、あぶらあげを美味しそうに頬張るカノジョを幸せそうに眺めていた時だった。
コンコン
アパートの玄関がノックされる。
「はい」
彼が答えると同時、がしゃりと鍵のかかっていなかった扉は開く。
「こんばんわ。あの娘、いる?」
カノジョの姉が首だけをひょっこりと覗かせると、部屋の中をキョロキョロと見まわす。
大して広くもない部屋の中、目的の人物とはすぐに目が合ったようだ。
「今日の晩御飯はどうする? カレと食べてくる?」
「んー。そうする」
カノジョの姉は一瞬だけ妹の口にしたあぶらあげに視線が合うが、すぐにそれを彼へと変える。
「じゃ、ごめんね。あの娘にあんまりつまみ食いさせると晩御飯食べなくなるわよ」
「そうですか」
彼が忠告に従い、あぶらあげの積まれた皿を取り上げようとするが、もろくもカノジョにブロックされた。
「………あ、そうだ。お姉さんにもお返しがあるんです」
「お返し?」
首を傾げる玄関先の姉に、彼は赤い包装紙で包まれた小さな箱を手渡す。
「バレンタインの時のお返しです」
受け取った彼女は整った鼻を一瞬ひくつかせて嬉しそうに頷いた。
「おや、香水だね……フェラガモの『サブティール』か。良いセンスしているね」
「よく分かりましたね」
「そりゃ、狐だし」
苦笑いを浮かべるカノジョの姉はそれを大事そうに両手で抱く。
「ありがたく使わせてもらうよ」
「はい」
と、その2人の間にカノジョが割り込んだ。
「むー! どうして私があぶらあげで、姉さんが香水なの?」
「どうしてって……あぶらあげじゃ、嫌だった?」
「嫌じゃ…ないけど。でもなんか…むー!」
そんなカノジョの頭を、姉はクシャっと撫でる。
「まだまだ子供ね。それじゃ、先に帰ってるよ」
背を向けてカノジョの姉は部屋から出ていく。
バタンとしまった玄関の扉に、カノジョはおもいきりアカンベーをする。
「子供だなぁ」
「なんか言った?」
「いや、何も」
どこか納得いかない顔をしているカノジョを眺めつつ、僕は今夜の晩御飯のおかずにあぶらあげの味噌汁を追加することに決めたのだった。

* 君は準備OK?

この土日は我が家族内にて「そろそろ新車を買おう」と話になりまして、色々なディーラーさんにお邪魔しておりました。
我が家は両親と私の三人が運転するので、選ぶのが大変です。
新車の条件としては、
 @ ミッション(MT)であること
 A 価格は200万前後
 B 新車であること
 C 色は黄色
 D 「カッコイイ」に分類される車であり、少なくとも「4人乗れる」こと
というものでして、はっきり言って「んなもん、ねーよ」とぶつくさ言いながら探していたわけで。
数々の車の中からチョイスしたのはマツダの「MR-8」、そしてトヨタの「セリカSS-1」。
で、多分後者(車)になりそう。
そこで想像してみた。
黄色いセリカSS-1を乗りこなす60歳を過ぎた我が両親―――うはぁ、なんかビジュアル的に怖ぇぇ!!

近頃はサターンの積みゲーだった「ドラゴンフォース」をやりこんでいます。
スペクトラルフォースを踏襲した単純な戦略シミュレーションなのですが、これがなかなかハマリます。
一度攻めこむと、そこを支点にさらに他国と接することになり、そして戦闘が始まりそれを終えるためには他国を滅ぼすしかなく。
そして滅ぼすとさらにそこを支点として他国と接し……の繰り返しです。
「嗚呼、戦争とは無常なものだ。この無限とも思える連鎖を断ち切るためには、このオレ様が世界を征服してやればいいのだ、ヒャーッハッハッハ!」
そんな訳で、世界征服中でございます。
完了まで後一歩なんですが、ゼノンという無敵キャラがいて先に進みません。
っつーか、奴は存在自体が反則だよ?

【更新】雪音の2月下旬分更新しました。

13th Mar/2005


「ふぇ…」
”ふぇ?”
市松は背後からの小さな声に首を傾げる。
場所は教室。時間は一時限目。
授業は退屈極まりないともっぱら評判の古文であった。
しかしながら最近、彼にしては珍しく出席率が高い。
留年する訳にはいかないというのが彼の言い訳だが、実際のところは後ろの席に座っている少女に会うためであると陰ながらの噂だ。
窓から見える空は雲1つない青空。射し込む日差しはすっかり春のものである。
「ふぇ」
”?”
再び聞こえた後ろの少女の妙な声に、彼はついに振り替える。
「ふぇっくしょん!」
まるで待ち構えてたようなタイミング。
豪快なクシャミを放ったのは若桜雪音。
それをモロに顔面で受けとめてしまった市松は、雪音の鼻水まみれの顔で苦い表情を浮かべている。
その出来事に、クラスの空気が凍りつく。
狂犬の異名を持つ男と、キックの鬼と呼ばれる女の2度目の対決か、と。
「あ…ごめん」
ちりがみで鼻をかんだ雪音は、懐から出したハンカチで彼の顔をぬぐった。
「……花粉症か?」
「んー。なーんかクシャミが出て、目がかゆくて、頭がぼーっとするのよね」
「それを花粉症っていうんだ、バカ」
「なによ、バカって言う子がバカなのよ…くしゅん!」
再び鼻水の洗礼に合い、さすがに市松は、
「お前なぁ…ぶはっくしょい!!」
豪快にクシャミ一発。
「へぇ、花粉症ってうつるんだ。くしゅん!」
「風邪じゃあるまいし、うつるか…って、はっくしょい!!」
春の到来を感じさせる、天気の良い3月のある日。
新たに2人の花粉症患者がここに生まれたのだった。

* 目が、目がぁぁぁぁぁ…かゆいのですよ。

一番良く使うものってありますが、それについて性能が良いに越したことはありません。
しかしながら「使い慣れたモノ」と、それよりも「性能が良いモノ」のどちらかを選べと言われると。
昔は自分自身を使うモノに「合わせて」いたこともあり後者だったのですが、最近はどうも前者。
っつーか、本当の意味で「慣れた」モノならば他がどんなに性能が良くとも結局のところは「性能が良い」モノではなく「慣れた」モノの方が作業が早い。
でもこの「慣れる」の最高レベルに達するまでには時間が必要なんだと思います。
なんでこんなことを書いているのかというと、これが私が未だにWinCEの1.0で動いているカシオペアを使っている理由であり、↑の日記とかを書く分には全く支障がないということをアピールしてみたかったから。
うん、「まだまだイケる」という声が、君のすぐ傍でも聞こえませんか?

8th Mar/2005


コタツの前で、乙音は腕を組んでいた。
「うーん」
「姉上、どうかしたの?」
「いぇ、ひなあられ、どうしようかと思って」
見れば、コタツの上には山のように雛あられが積まれている。
「ひな祭りも一昨日だったし、食べきれなかったのよ」
「どーしてこんなにたくさん買ったの??」
「私と雪音がそれぞれ買ってきたでしょ?」
「うん、そういえばアタシも買ったっけ」
「それに亮くんからの貰い物とか、先日帰国された大家さんのお土産が雛あられだったりとかでね」
「……そうだ、これを使って別の料理にしてみるとか!」
ポン、と手を叩いて雪音。
「雛あられで別の料理?」
「うん。例えばカレーをかけて食べてみるとか」
乙音は想像する。
ライスの代わりに雛あられが皿によそわれ、豪快にカレーがかけられた料理を。
「ちょ、ちょっと遠慮するわ」
「んー、それじゃ、イカメシの具にするとかは?」
「………美味しいと思うの?」
「うん! じゃ、早速色々作ってみるね。お料理お料理♪」
足取り軽やかに、雪音はキッチンへ向かっていく。
乙音はそんな妹を止めることすらできずに、
「あー、亮くんの部屋にでも逃げ込もうかなぁ」
「姉上、せっかくだから亮お兄ちゃんも晩御飯に呼ぼうよ」
キッチンから聞こえてきた声に、乙音は無言で胸の前で十字を切ったのだった。

* 案外美味しかったそうです。

全然認識しなかったENVY24のサウンドカードがようやくWINXPで認識。
製品と一緒に封入されていたデバドラがどうやらバグっていたのかどうなのか、最新の物にしたらすったもんだの挙句、音が出ましたわ。
T−ZONEで購入した際、但し書きに『お徳品。サポート・返品は受け付けません。15個限定販売』と書かれていたのでもしも認識しなかったら完全にお蔵入りでした。
ちなみにお値段は¥1980.-。VIA製ENVY24HT-Sチップを搭載し、7.1ch対応。光入出力端子付き。
動かなければゴミだが、動けば思わぬ掘り出し物。
自作PCの当初から搭載していたSoundBlasterLive!と音質を比較―――
……素人の私では分かりませんでしたー!

セガサターンでちょこちょこと続けていた「ゼルドナーシルト」をようやくクリアー。
すんごい面白いんですけどね、ただ戦闘に時間がかかるのです。
フェンリルエンディングを見終わり、ようやくホッと一息。
アレですね、戦いってのは空しいものですな(遠い目で)。
最後にコレだけは言わせていただきたい。
『ルイーザ萌え!!』

今日のにゃんこ―――
普段は私の顔を見ると、即戦闘態勢に移行して爪と牙による斬撃を加えてくるのですよ。

眠たげ


ですが時々、ちょこんと膝の上に足を乗せたりして遠慮がちに甘えてくることがあります。
……これが昨今、巷で噂のツンデレってやつか?!
も、萌えっ!!

5th Mar/2005


稲荷話の最終章です。
落ちているようで落ちていないような?

「勝負だ!」
犬神の彼はスーツの懐に右手を入れる。
対する稲荷の彼女もまた、スーツの胸ポケットへ手を忍ばせた。
犬神は懐から何かを取り出し、こう叫ぶ。
「デュエル、スタート!」
手にしたものは数十枚で形成されたカードの束――デッキだ。
対する稲荷の彼女も同じ物を携えている。
同時、2人は何処からか取り出したダイス(サイコロ)を宙に放る。
二つは石畳に落ちて、止まる。
犬神は5、稲荷は3だ。
犬神はデッキから5枚のカードを引き抜き、己の胸の高さに並べる。
それは驚くべきことに、まるで見えない机があるかのように宙に浮いた。
同様にして稲荷の方もまた、自らの前に5枚のカードを並べた。
こちらも胸の高さで裏を向いて浮いている。
「まずは俺のターン!」
ニヤリと犬神は笑みを浮かべ、目の前に浮いた真ん中のカードをめくる。
カードの絵柄はアメコミチックに狼男が満月に向かって吼えているものだ。
「俺は『半妖態』のカードを使い、妖力を解放する!!」
叫んだかと思うと、彼のスーツの上半身が内側から破けて散った。
代わりに毛皮に覆われた筋骨隆々な体があらわになる。
それに伴い、彼の口は大きく裂け、やがて犬頭を形成する。
「ウォォォォォン!」
満月に向かって咆哮する犬神。
彼の胸の辺りにはこんな文字が浮かび上がった。
『犬神:攻撃力1200 防御力800』
「今夜は満月! 俺達犬族は満月の夜には全ての能力が30%増加するっ!」
ぴこーん
そんな電子音が聞こえたかと思うと、彼の前の数字が変化する。
『犬神:攻撃力1560 防御力1040』
「そしてこのカードを使用する」
続いて一番左のカードをめくった。
4本の刀が交錯するイラストの描かれたカード。
「『剣聖の四刀流』だ。これを俺自身に付加!」
カードが淡く光ると、犬神の姿が変化する。
両手の爪がまるで剣のように伸び、それぞれ一振りづつ。
そして犬歯が左右とも伸び、これもまた剣となる。
まるでワンピースのゾロみたいな今までに見たことがない新しい剣術!?」
ギャラリーと化した稲荷の妹が驚愕。
それを横目に、余裕の笑みを浮かべて彼は呟く。
「ターンエンドだ」
彼の終了宣言に応じ、稲荷もまた目の前に並んだカードを一枚引く。
それは狐火が描かれたカード。
「私は『狐火で照らせ』を用い、お前のトラップカードを見抜いて破壊する」
カードが消え、代わりに生まれた狐火が犬神の5枚並んだカードへ。
内、裏を向いた一番右のカードが消滅した。
仕込んでいたトラップカードを破壊され、小さく舌を打つ犬神。
「私のターンはこれで終わりだ」
言って彼女はデッキからカードを一枚抜き、消えたカードの場所へ置く。
「俺のターンだな」
デッキからカードを一枚抜き、先程消えた一番右にカードを置くと、彼は中央から右に2番目のカードをめくった。
「まずはお前を討つために用意したこのカード!」
描かれているのは阿修羅の腕を持つ少女。
「それは剣系の斬撃力を40%向上させることのできる『紺壁のルシール』。レアカードだな、しかし」
「そう、発動までに2ターンが必要だ。俺はこれをフィールドに出し、オープン。そして」
中央から左に2番目のカードをめくる。
それには猟銃を構えた猟師の姿か描かれていた。
「『ハンターの千里眼』、か」
「そう。これは狐系、鳥系に対し2ターン間、行動を不能にさせるカード。これを発動させる!」
宣言直後、青白い光が稲荷の身を束縛した。
「なるほどなるほど。向かってくるだけのことはあって、丸腰という訳ではないようだな」
満足げに頷く稲荷。
「その余裕はいつまで続くかな。ターンエンドだ」
「そして私のターンだが、カード効果により行動できずか」
「その通り。そして俺のターン。先程引いたカードをオープン」
めくられていない、一番右のカードをめくるとそこには小さな悪魔が描かれている。
「『貪欲な悪魔』か」
「貪欲な悪魔を攻撃表示。行け!」
カードから子供のような、餓鬼のようなコウモリの翼を持つ悪魔が生じた。
その胸のところには『貧欲な悪魔:攻撃力300 防御力200』と書かれている。
それが稲荷に襲いかかった。
なお稲荷の胸のところにも数値が書かれており、『稲荷:攻撃力600 防御力600』とある。
数値の高い稲荷を前に、悪魔は必死の形相で正拳突きの一撃をお見舞いした。
ひ弱なパンチは、稲荷の大きな胸にぶち当たり、そして弾力で跳ねかえった。
「……これはこれで」
小さく呟きつつ、ダメージらしいものを与えることもなしに悪魔は虚空へと消える。何故か嬉しそうに。
そして何もできずに消滅したかに見えた、が。
「悪魔の初撃を受けた対象は、魔界から力が抜きとられ、毎ターンごとに攻撃・守備力ともに100づつ減少する」
『稲荷:攻撃力500 防御力500』と数値が書きかえられた。
「お姉ちゃん!」
稲荷の妹が叫ぶ。
それに返すことなしに、稲荷の姉はただ現状を見守るだけだ。
「ターンエンドだ」
犬神が告げる。
「私のターンだな。しかしながらカード効果で動けず、か」
「俺のターン。ルシールの発動で俺の攻撃力は一気に跳ねあがる!」
『犬神:攻撃力2150 防御力1450』
「行くぞ! これで終わりだっ!」
攻撃力が2000台に乗り、4つ星モンスターと化した犬神は無防備な稲荷に襲い掛かった。
彼が攻撃表示に移った、その瞬間。
「トラップカード、オープン!」
「なんだと?!」
稲荷は手持ちの一番左のカードをめくった。
そこは大きな関所が描かれたイラストが見て取れる。
「『代官の関所』。攻撃力2000以上の敵に対し、現行ターンを強制終了させることができる」
「ぐっ」
「ターンエンドだな。ようやく私のターンだ」
稲荷はまず、一番左のカードをめくった。
白い狐が頭の上に葉っぱを置いて、回転しながら化けるイラストだ。
「私もこの『半妖態』のカードを使い、妖力を解放する」
ざわり
彼女の髪が、影が、体の輪郭が揺れる。
静かに、そして確実にその人型であったその姿が異形へと変形していく。
「まずは満月の夜には、全ての妖は5%の能力向上の恩恵がある」
告げる間にも、彼女に表示された数値はぐんぐんと上昇していく。
「次にフィールド効果。ここは私の結界内であり、狐族に等しく恩恵のある稲荷神社の敷地内。これにより私の攻撃力・守備力ともに60%上昇する」
ざわざわざわ
「見せてやろう、狐族の闘争を。妖力開放!」
彼女の口が裂け、端正だった人の顔は狐面となる。
そして犬神の視界を巨大な白い尾が9本、まるで壁のように立ちはだかった。
コーン!
木を断ち割るような狐の咆哮が、夜空いっぱいに鳴り響く。
『稲荷:攻撃力2800 防御力2400』
最終的な数値は、犬神のソレを大きく上回っていた。
「クッ、こんなにも簡単に5つ星モンスターになれるとは……」
ぎりっと奥歯を噛み締め、しかし犬神は決心したように顔を上げた。
「だからどうした! 犬神スキル『鉄砲玉』発動!! 俺は死すら恐れないっ」
デッキのカードをランダムに10枚消費して、彼は己の能力を発動させる。
その様子に稲荷もまたカードを10枚消費して迎え撃つ!
「では君の本気に、誠心誠意応えよう。稲荷スキル『一族郎党皆殺し』発動!!」
濃度の濃い死を予感させる波動に犬神は息を呑み、稲荷の妹は危うく気を失いかける。
「本気になった私の一撃は、貴様のみならず貴様に縁ある全ての者どもに等しく死に近い不孝を与えよう」
犬神を見下ろすように稲荷。
「俺は…」
犬神は自然と己の首に触れた。
そこにあるのは、まだ新しい首輪。
感触を確認したその瞬間、はっと彼の瞳に正気が戻った。
「くっ」
俯き、彼はデッキを横にして置いた。
それの示すところは、
「サレンダー?!」
稲荷の妹が驚愕を伴って叫ぶ。
途端、犬神の姿が元のスーツを着た人の姿に戻る。
「今日のところは……」
彼は呟くようにして、そして顔を上げて叫ぶ。
「今日のところは俺の負けだ! だが次は、次は負けん!!」
走り去る犬神。
それを呆然と見送る稲荷妹と、そして同じく姿を元に戻す稲荷の姉。
「あー、えっと」
妹は彼の置いていったデッキを手に取りながら、姉に問う。
「どうでもいいけど、どうしてこんな戦いになったの? ってか突っ込むに突っ込めなかったんだけど、何故にカードゲーム??」
「おや、知らないのか?」
彼女は怪訝な目で妹を見つめ、言葉を続けた。
「私達くらいの神がまともに喧嘩すると、この付近が焦土と化すからね。勝負は勝負でも拠り代を用いた勝負にすることって、稲荷の昇格試験で習ったと思うけど?」
「あ……そうだった、ね」
愛想笑いを浮かべる妹の表情から、取り敢えず個人的に再教育してやろうと内心決める姉。
「で、でもでも、どうしてカードゲームなの??」
「んー、最近、近所の子供と遊戯王カードで遊んでてね。それだけさ」
「ふーん、でもそんなのに付き合ってくれたなんて、ノリがいい人(犬神)だね」
「昔からあんな感じだよ。今回は私の結界内だったから私が決めたけど、アイツの結界内だったら多分ドンジャラとか人生ゲームじゃないか?」
「緊張感ないね」
「ふむ。しかし今回はアイツの負けは負けだよ。妖力もごっそり奪ってやったから、しばらくまともな術も使えまい」
鼻で笑う姉に、妹は小さく溜息。
「お姉ちゃん、相変わらず意地悪だね」
「生かしておいてあげただけでも優しいと思ってくれないかね?」
「思わない思わない」
ぶんぶん首を横に振る妹に、姉は不敵に微笑む。
「殺っておいてくれればよかったのに、と思うかもしれないよ?」
「え、ちょっと、どういうこと?!」
「さぁ? じゃ私は帰るよ。貴方はどうするの? 今日もお泊り?」
「今日もって、いつ泊まったって言うの! 私も帰りますっ」
「じゃ、私がお泊りしてこようかな」
「ダメっ!」
夜の闇の中、2人の稲荷は社へと帰っていく。
遠く、犬の悲しい遠吠えが響いていた。


翌日の夕方。
「あ、ちょっと! 急に走らないの! こら!!」
リードを手にしつつ、元気に走る犬に引きずられるようにして走るのは眼鏡をかけた女性。
ここ最近、この辺を散歩のコースとしている彼女は、いつもとは違う方向へ引っ張られて慌てていた。
問答無用で彼女を引きづりつつ駆ける犬は、街中を流れる川の堤防へ。
そこで足を止めた。
息を切らしながらも眼鏡の彼女も足を止める。
「あ……」
犬を叱り付けようとした彼女の行動が止まる。
何故なら彼女の視界に、見知った人影が映ったからだ。
「先輩、こんにちわ」
丁度前からやってきたのは彼女の通う大学の、研究室の先輩だ。
その彼の右腕には、おまけのように少女と言って良いような女性がまるで彼を取られまいと腕を抱いている。
だがしかし、眼鏡の彼女の視界には少女の姿は意図的に映っていない。
「こんにちわ。今日も犬の散歩?」
「はい。犬は毎日散歩させてあげないと、ノイローゼで死んじゃうんですって」
「へぇ、そうなんだ」
「あのー」
「あ、もし良かったら途中までご一緒しませんか?」
「あの!」
「あら、いらっしゃったんですか?」
「くっ、コイツ……」
「そうだ、先輩。今日のケーキ、美味しかったですか?」
「ん、あ、ああ」
「ケーキ?」
「明日はクッキー焼いてきてあげますね♪」
「あ、いや、その…」
「結構です! 私達、急いでますんで。それじゃ!」
無理矢理視界に割り込んできた少女は、引きずるように先輩を連れて夕日の向こうへと消えていった。
それを見送って、私は足元の愛犬に視線を向ける。
「ふふふ……、面白いね」
「わん?」
胸に手を当て、自分の鼓動を聞きながら私は多分、自分自身に呟いた。
「こんな私も、ここにいたんだね。あの子がいるから、私もこんなに積極的になれるみたい」
「わん」
「変かな、こんな私?」
「くーん」
「ん。ありがとね」
彼女は愛犬の頭を軽く撫で、散歩を再開する。
この日のルートはいつもよりもちょっと長かったそうな。

* お付き合いありがとうございました。

今月のアワーズ―――
リップたん復活! リップたん復活! リップたん復活っ!! 
と、脚で地面を打ち鳴らしながら叫ぶ烈海王の如く。
これに終始するかと。

4th Mar/2005


最近仕事の影響で精神力を食われており、様々な更新等が滞りがちになっています。申し訳ありません。
っつーか、ゲームのように精神力回復の薬草とかあったら便利なのになぁ(体力は飯食って寝れば回復します)。
稲荷話も佳境ですが、ここで息抜きの為にエルハの小話でも―――

それはある晴れた日のロシュタリア城でのこと。
「ファトラ様に菜々美殿、ご機嫌は如何ですかな?」
城の廊下で話をしながら歩いている2人の少女に声がかかる。
「あ、こんにちわ、博士」
「おや、ストレルバウではないか。しっかり研究は進んでおるか?」
「もちろんでございます。それはそうとファトラ様。今月14日はホワイトデーでございますな?」
「そうじゃな。わらわはお返しでヘトヘトになりそうじゃ」
「ヘトヘトって、アンタ……」
ジト目でファトラを睨む菜々美。
「ふぉっふぉっふぉ、お若いことは良いことでございますな」
「博士……」
「ところで何故ホワイトデーはホワイト、つまり白の日というか、ご存知ですかな?」
「それはもちろん」
と菜々美が答えるより早く、ファトラが口を開く。
「それはもちろん、汁が――」
ごす!
問答無用のエルボーアタックをファトラのこめかみに加える菜々美。
「な、菜々美殿?!」
ギロリと睨まれ、ストレルバウは身を縮めた。
「ったく、さっさと行くわよ」
彼女はぐったりとして動かなくなったファトラの襟元を引きづりながら、ガクガクブルブル震えるストレルバウの前から消えたのだった。


それはある晴れた日のロシュタリア城でのこと。
「おや、アフラ様、ご機嫌は如何ですかな?」
城の廊下で歩いている1人の少女に声がかかる。
「あ、こんにちわ、ストレルバウ博士」
足を止めるのは風の大神官アフラマーン。
「そうそう、今月14日はホワイトデーですな」
「ほぅやね。ウチにはあまり関係ない日おすが」
「ところでアフラ様。何故ホワイトデーはホワイト、つまり白の日というか、ご存知ですかな?」
ストレルバウの問いに、アフラは天使のような微笑を浮かべてゆったりとこう答えた。
「セクハラで訴えますぇ、博士」
ほんのりと風のランプに光が灯っている。いつでも老人の命の一つや二つ、殺れる力だ。
「ごめんなさい」
こんなに素直に謝った博士は初めて見たと、物陰からたまたま覗いてしまっていた誠は後に語ったそうな。
また、こうも彼は述べている。
『2人の言葉のやりとりは、今思えば非情に高度な会話だったと思います。アフラさんが博士の質問のどこにセクハラを感じ、博士は博士でそれを認めて謝っているのですから。これを見て僕はまだまだヒヨッ子だと思いましたわ』

ファトラとアフラのどちらのエロ度が高いかをここから判断すると、間違いなくアフラだと思うに一票です。
ちなみにホワイトデーとは、2/14に殉教したバレンタイン司教に祝福された男女があらためて永遠の愛を誓い合うという話に由来した日です。
欧米をはじめ、世界中の多くの人々に語り継がれており、「ポピーデー」「フラワーデー」「クッキーデー」「マシュマロデー」となどとも呼ばれています。
まぁ、私には縁のない日ですけどね………。

* 上を向いて歩くと涙がこぼれないよ?

3rd Mar/2005


偶然にもこの日の夜は、満月の美しい夜空だった。
満月の下では、我々犬神の力は最高潮を迎えることができる。
それ故、昼間のあの男女の匂いを追うことなど、目を瞑っても可能なくらいだった。
家の皆が寝静まったことを確認した俺は、人の姿に戻る。
「ふむ」
首につながれたリードを外す。首輪は……
「まぁ、いい」
そのままに、俺は川辺りへと向かった。

時刻は丑蜜時。
川面は月光を浴びて金色に輝いている。
やがて俺は夕方に4人が会した場所へと到着。
そこから追跡を開始する。
2人の匂いは堤防を下り、住宅街へと伸びている。
俺はその軌跡をゆっくりと追った。住宅街から商店街へ、そして街区の異なる住宅街へと。
「む」
風が香った。女の方の匂いを運んでいる。
古い匂いではなく、今その時の匂い。
俺は風の吹く方向に目を向ける。そこは一軒家の屋根の上。
満月を背に、昼間の女が立っていた。
目が合う。表情は逆光のために分からない。
彼女は屋根の上から向こう側へと飛んだ。
俺はそれを追う。一跳躍で屋根の上に駆けあがると、道を走る彼女の姿が見つかった。
俺は同じようにして屋根から飛び降り、その後を追う。
彼女はこちらをチラリと振り返ると、大きく跳躍して小さなビルの屋上へ。
まるで追って来れるかどうかを試しているようだ。
「犬族の追跡を甘く見るなよ」
俺はさらに足を早めて追った。対象もスピードを上げたようだ。
真夜中の街中で、狐と犬の追走劇が展開する。
「??」
だがそれもやがて終焉を向かえる。彼女が足を止めたその場所で。
「ここは…」
小さな社の前だった。そう、この日本では神社と呼ばれる場所。
いや、この規模ではどちらかというと祠に近いのかもしれない。
”誘い込まれた、か”
そこで狐の女はこちらに振り返る。
「ようこそ、私達の領域へ」
彼女のものではない言葉に、空気が変わった。
祠のある夜の闇の中から、もう一人が現れたからだ。

稲荷姉妹見参


匂いを思い出す必要もなかった。
強力な妖気という圧力を纏って現れたそいつは、俺の追いかけていた女狐。
「ようやく、見つけたぞ」
犬歯を剥き出しに、俺は歓喜に打ち震える。
「あ、やっぱりお姉ちゃんの知りあいだったんだ」
昼間の少女の方が、彼女に和やかに言った。
「んー、知り合いというか。なんだ、生きてたのか。まぁ、喜ばしいことだ」
どちらかというと無関心な感じで彼女は答える。
「当然だ! 俺は貴様のやったことを忘れない,こうして復讐するまでは!!」
びしっと指差す。
「…何をやったの、お姉ちゃん?」
ジト目で彼女の妹であろう、睨まれて「ふむ」と彼女は答える。
「前に話してやったことがあるだろう? 昔、一緒に色々やったことのある犬神だよ」
「あ、この人が?!」
妹の方は驚きに満ちた目で俺をまじまじと見つめる。
「でも、亡くなったんじゃ?」
「そう思ってたんだけどね」
「へぇ。でもそうすると」
妹さんはニヤリと奴に笑いながら肘を突ついた。
「ロマンス再燃?」
何故そうなる??
「……ちょっと待て。貴様、俺のことを妹さんにどんな風に話しているんだ?」
俺の問いに、妹さんも小さく首を傾げて問うた。
「お姉ちゃん。もう一度、お話してよ。結構好きなんだ、犬神さんとお姉ちゃんのお話」
せがまれ、彼女は「ふぅ」と溜息。
「そうだな。私も忘れかけてるから、思い出す為にももう一度話そうか」
”…忘れるなよ”
「そう、あれは第2次世界大戦中のことだったな。私とコイツは、それぞれ日本と独の調査員としてある軍事施設のある孤島へと忍び込んでいた―――

調査の任務が終わる頃、日は水平線の向こうに沈み始め、東の空が深い群青色になっていた。
周囲を海に囲まれた小さな島の一角で、私達はついに足止めされてしまったんだ。
地下12階にまで及ぶ軍事施設の、ここは地下1階。
地上まであとホンの少しの場所だ。
銃弾の嵐が曲がり角の向こうに吹き荒れていた。
「まいった、この装備ではここを突破できない」
私は最後の銃となった6連式リボルバーを右手に構えつつ、そう愚痴る。
すでに装填した銃弾は2発だけとなってしまっている。
「いや、そうでもないさ」
私の隣では、こちらは完全に徒手の青年が自信たっぷりに笑って言った。
なお、この頃の私達には力はほとんどなく、能力的に人間よりやや勝っている程度だ。
当然、稲荷特有の基本能力である幻術はこんな多勢に対してまでは効果を発揮できるほど私は強くなかったし、犬神の特殊能力である咆哮による戦意喪失なんてのも彼は習得できていなかった。
「そうでもない、とは?」
私の問いに彼は親指を立て、
「こういうことだ!」
銃弾飛び交う通路に踊りこんだのだ!
「んなっ」
「さっさと行け、ここは俺が食い止める!」
銃弾をかいくぐりながら敵兵士達に飛び込んでいく犬神。
「バカ、戻って来い!!」
「良いからさっさと行け!」
こちらに振り返ることなく叫び、彼は数発の銃弾をその身に受けつつも敵兵士網に到達,自慢の爪と牙を振るい始める。
「こっちだ!」
「いたぞ!」
その後ろからさらに増援される敵兵士達。
それを威風堂々と迎え撃つ犬神。
「行け、そして生きろ。一回くらい俺の言うことを聞いてくれ」
叫ぶ彼に、私は唇を噛む。
そして……背を向けて駆けた。
「日が落ちるまで待っている、必ず戻って来い!」
私の悲痛な叫びに、彼は敵の悲鳴を以って返したのだった。

日はすっかりと水平線の向こうへと沈み、西の空には黄色の残滓が僅かに残るだけとなった。
「もう少し、もう少し待ってくれ!」
私の言葉はしかし届け入れられることはない。
結局、彼は海岸で待っていた脱出艇に来ることはなかった。
「奴を置いていくつもりか!?」
エンジンが始動し始めた脱出艇。
叫ぶようにして言う私を、屈強な同僚3人が押さえつける。
「残念だが」
船長は言う。
「出航だ。これ以上ここにいる仲間達を危険に晒すわけにはいかん」
「し、しかし!」
足元が揺れる。私は3人の拘束を解こうとするが、全く外れない。
そのうちに、窓から見える視界は次第に島から離れて行く。
「そんな……」
次第に小さくなっていく島を呆然と見つめつつ、私はこう呟くしかなかった。
「すまない」
と―――

「良い話ね」
「そうだろう」
頷き合う姉妹に、
「ちょっと待てぇぇ!!」
思わず俺は叫んでしまっていた。
「え、どうしたんです?」
戸惑う妹さんに俺は首を必死に横に振った。
「それは違う、全く違うぞ! 実際はこうだ―――

あの日あの時、俺達は脱出口を目の間の前にして、絶体絶命に陥っていた。
出口に通じるT字路で、敵の銃弾幕によって足止めされてしまったのだ。
「なんとかならんか?」
俺の隣で彼女が問う。
日本側から派遣された彼女は、この数年ともに行動してきたがどうにも予測できないところが多い。
だがこれまで任務を必ず達成させているその実績は、俺としても一目置いている。
「どうにも、な。俺の得物はすでに弾切れだ」
言って俺は銃を投げ捨てる。
「一つ、良い方法があるのだが」
「なんだ?」
「それは、な」
切れ長な目をさらに細め、彼女は俺の耳に唇を寄せる。
かかる吐息に、場違いだが思わず背筋が震えた。
「こうするのさ」
耳に届く言葉の意味をこのときの俺が理解するのには、一瞬の間を要した。
どん!
俺は彼女によって押し出された。
T字路の向こうへ、と。
「んな?!」
「おとりを頼む」
憎らしいほど魅力的に微笑み、彼女は俺に背を向けて駆け出した。
「な、なんだとーーー!!!」
悲鳴をあげる俺に、容赦ない敵の銃弾が弾幕となって襲いかかってきたのは言うまでもない。

しかしながら俺はこの危機を乗り越えた。
今思うとどうやって乗りきったのか、覚えていない。
島からの脱出艇の出発時刻は日没だ。
日は水平線の彼方に消え様としている。
俺は急ぐ。犬神に脚を以ってすれば、間に合う時間だ。
生い茂る木々を掻き分け、俺は指摘された海岸線に辿り着いた。
目の前に広がるのは、僅かに日の光の残った水平線。
それだけ、だ。
「何故だーーー!?!」
いや違う。
水平線の彼方に、一隻の船が見て取れた。
脱出艇に相違ない。
まだ、そうまだ時間ではなかったはずだ。
俺は足元に、石に押さえられた一枚のメモを発見した。
それを呆然と手に取り、広げてみる。
そこには見知った女の文字でこう書かれていた。
『二階級特進、おめでとう』
「絶対、殺す!!!!」
沈み行く夕日に、俺は固くそう誓ったんだ―――

「そうだったか?」
首を傾げる彼女に、
「そうだよ!」
俺はキレかける。
「ま、想い出は美しくなるものだし」
「人はソレを『捏造』というよね」
妹さんのツッコミに、彼女はそ知らぬ顔で言った。
「で、どうやってあそこから抜け出したのだ?」
「犬掻きで、だ。おかげで犬掻き技能のレベルがアップしまくりだ」
「ならば感謝こそされ、恨まれる道理はあるまい」
皮肉が通じないのは、相変わらずのようだ。
だから。
俺は爪と牙の妖力を解放する!
俺の殺意に妹さんの毛が逆立った。
「ほぅ、私と殺り合うつもりか?」
澄ました顔で彼女は俺を睨む。
「当然だ。俺はその為に、今日まで力をつけてきたのだ」
さらに今日は満月。時も俺の味方をしてくれている。
「随分と思いあがりも過ぎたものだな」
彼女は冷たく微笑むと、妹さんを後ろにやり、一歩こちらへと足を踏み出した。
「お前の程度の犬神の能力が、私の主領たる稲荷の能力に通ると思うたか!」
同時、まるで雪崩のように彼女の妖力が押し寄せた。
立っているだけで、ただそれだけで並みのモノならば気を失ってしまう程だ。
なるほど、彼女にしても今までのんべんだらりと過ごしてきたわけでもないということか。
「相手として、不足なし!」
叫び、俺は夜空に向かって咆哮した。

* 次回、ラスト!

藤ゆたかさんから↑のイラストをいただきました、ありがとうございます♪
姉と妹の属性の違いを上手く描き出してくださっております。
皆さんはどちら属性ですか?(^^)

日常、様々な疑問が存在しているけれど、あまり解決せずにそのままスルーしてしまうことって多いと思います。
けれども疑問は何処かしら、心に引っかかっていて。
そんなものが放置しておくとチリが積もっていくように、やがて山となるのです。
疑問の山はしかしながら、時として共通点を持つこともあるんですよ。
ある『分からなかったこと』が発端となって、疑問の枝が伸びていた、というケース。
こんな時、その『分からなかったこと』が分かることによって一切合財、ソレに関連した疑問が解決するってことがありまして。
まるで「ぷよぷよ」の6連鎖が成功したみたいに、ね。
ハートマン軍曹
それが先日、私の中に育った疑問を崩すキーワードでした。
うーん、嫌なキーワードだ(^^;;

27th Feb/2005


「さぁ、散歩にいくわよ」
「わん!」
あれ―――

「エサよ、たっぷり召し上がれ♪」
「わん!」
あれれ―――

「行ってきます。お留守番お願いね」
「わん!」
いってらっしゃい―――

って、ちょっと待った!!
俺は1人になり、ようやく我に返った。
なんでいつの間に飼い犬になっている??
それも結構居心地が良いのは何故だ?!
イカン、このままではイカン!!
…とはいえ。
行き倒れの俺を助けてくれた彼女に、何の恩も帰さないで出て行くなんてことはできない。
それも助けてもらってから、すでに3日も過ぎてしまっている。
あまりにも居心地が良くてなんの疑問も持たなかったくらいだ。
そこまでしてもらって、黙って出ていってしまっては犬族末代までの恥である。
とにかく今は、留守を任されたのだ。
しっかりと任務をこなさなくてはいけないな。
俺は芝生の茂る庭で、大空を見上げる。
晴れ渡った綺麗な青空だ。
彼女の住まうここは、閑静な住宅街。
それもそこそこ裕福な層の住む地区と思われる。
一戸建てのこの住まいには、彼女の他に両親と、祖母が住んでいる。
皆、この俺を可愛がってくれている。
”なんていうか、こんな生活も悪くないなぁ”
お日様に当たりながら、そんな考えが浮かんでくる。
「いや、イカンイカン!!」
ぶんぶんと首を横に振る。
しかしながら、さんさんと照り注ぐ柔らかな日の光は、満腹な俺にとっては必殺の光であって……。
結局この日は睡魔と延々と戦いつつ、うとうととしながら夕方を迎えてしまったのだった。

玄関の前の道。
その遥か彼方からすっかり覚えてしまった足音が近づいてくる。
彼女の帰宅だ。
真面目な彼女はこの時間まで、大学でみっちり勉強していたのだろう。
昨夜の家族の食卓での話を聞くところによれば、その上の大学院を目指しているようなことを言っていた。
俺はようやく弱まった睡魔を払い、帰って来た彼女を迎えるべく身を起こす。
ほどなくして、
「ただいまー」
「わん!」
「すぐに散歩に連れていってあげるね♪」
「わん!」
彼女は手にしたカバンを玄関に置き、その足で俺のリードを取って来る。
それを俺の首に巻かれた新品の首輪にかけ、
「さ、行きましょう」
「わん!!」
出発だ。
彼女と俺はゆっくりした足取りで住宅街を抜け、この街を流れる川の堤防へ辿り着く。
夕日が水面を赤く染め上げ、暖かな南風が優しく吹き抜けていく。
「んーっ」
彼女が隣で大きく背伸び&深呼吸。
リラックスした雰囲気が足元の俺に伝わってくる。
が、それも一瞬。
「っ!?」
深呼吸した彼女の吐息が止まった。
それは驚きによる停止。
不意に風向きが変わる。
同時に俺の鼻に飛びこんでくるのは、一つの匂い。
それこそが、俺が捜し続けていた匂いだ!
彼女の視線の先と、俺の鼻が嗅ぎ付けた匂いの元が、一致した。
堤防の向こうからやってくる2つの人影。
一つは男。彼女と同年代くらいの青年。
もう一つは女。彼よりも年下の、もしかすると妹にも見える少女だ。
だが今の俺には少女の正体が一目で看破できた。
『狐!』
「わんわんわんわん!!」
「先輩……あ、こら、ちょっと!!」
リードを掴む彼女は小さく声を上げたが、申し訳ないことに興奮してしまった俺を押さえつけるのに必死になってしまっていた。
俺は彼女に頭を押さえられ、問答無用にお座りをさせられる。
「ダメよ、人に無闇に吼えちゃ」
「わぅ……」
「あれ? 犬、飼ってたんだ」
「あ、えと、はい。先日ちょっとした縁で」
いつの間にか彼女の後ろに来ていた青年が、ひょいと俺を覗きこむ。
間違いない。
俺の探しつづけるあの女狐の匂いがする!
何も知らなそうな彼の後ろには、まるで隠れるようにして彼のTシャツの裾を掴む狐の少女。
彼女の匂いは俺の探していた匂いと似てはいるが、異なる。
もしかして……姉妹か??
俺は少女に問い掛ける。
『貴様、何者だ』
「うーーー」
「あぅ…」
青年の真後ろに引っ込む少女。
「こら、ダメよ」
コツンと頭をこづかれ、仕方なく俺は黙った。
「あの、先輩?」
「ん?」
彼女の様子が、おかしい。
何故か緊張しているように見える。
「あの、後ろの子、どちら様ですか?」
青年の背中に隠れるようにしている狐の少女……もっとも彼女には普通の人間にしか見えないのだが、彼に問う。
それにあっさりと、彼は答えた。
「僕のカノジョだよ」
「!」
「?」
さらに緊張した面持ちになった彼女に、青年は首を傾げている。
「そう…そうですか」
彼女は最後に、こちらというか俺をおそるおそる見つめる狐の少女を一瞥し、青年に頭を下げる。
「じゃ、私、散歩の途中なんで。先輩、明日は私の作ったお弁当、食べてくださいね♪」
その笑顔の下に敵意が詰まったセリフに、あからさまに険しい表情をするのは今度は狐の少女の方だった。
「あ、ちょっと! 弁当って一体?!」
青年の声を背中に、彼女は逃げるようにして駆け足で堤防を立ち去った。
当然俺は彼女を先導するようにその先を速度を合わせて走る。
やがてそのスピードのまま、小さな公園へ至る。
「ふぅ」
荒い息で彼女は溜息。
そして俺の前にしゃがみ、軽く頭を撫でてくれた。
「ホントはいけないんだけど、吼えてくれてちょっと嬉しかったよ」
「??」
「でもあれが先輩のカノジョかぁ。年下属性なら、私も負けてないと思うんだけどなぁ」
「?」
どうやら彼女は、先程の青年に好意を持っているようだ。
しかし彼には狐の少女がついている、と。
……彼は少女が狐であることを知っているのだろうか??
「どう思う? 私、あの子に負けてるかな??」
俺は自身の思考を停止。問いかけに答え……ることはできない。
「わん」
「そう、ありがと」
俺の鳴き声をどう取ったのか分からないが、彼女は再び軽く俺の頭を撫でてくれた。
帰路、俺は考える。
彼女への恩返しと、俺自身の目的を。
俺の探す女狐の匂いを纏った、あの狐の少女を青年から引き離すこと。
そして、狐の少女から目的のアイツへとつながって、引きずり出すことができれば……。
なんだ、一石二鳥ではないか!
俺は青年と少女の匂いを覚えたことを確認し、今夜にでも探し出すことを決めたのだった。

* 多分あと2回くらい。

疲れが取れず。
ただ死んだように眠るのみ……。

23th Feb/2005


お稲荷様話の新章突入〜〜〜♪

そこは国の玄関の一つ。
セントレア中部国際空港。
八百万の神が住まうとされる土地に足を踏み入れることのできる、公的な入り口の一つである。
『来日の目的は?』
表情の薄い女性入国管理官が、たった今香港から到着したばかりの乗客の一人に問うた。
言語は英語。彼女から見えるのはパリっとした灰色のスーツを着込んだ男性である。
窓越しに彼女に提出された英国を示すパスポートには、金色の髪の青年の写真が貼られている。
『FOX HUNTING』
「ふぉっくす はんてぃんぐ??」
「いや、知人に会いに…ですね」
薄い笑顔を伴いながら、流暢な日本語で彼は答える。
管理官は特にこれといった興味を持たずに、手にした入国を示す判をドンとパスポートに押した。
「よい旅を」
一言だけ、彼女は日本語で告げると次の入国者に視線を向けた。
こうして彼はこの日本へと足を踏み入れたのである。
雨の降る、やや肌寒い日だった。

「とは言っても、だ」
ボストンバックを片手に、スーツ姿の彼は名古屋駅で途方に暮れた。
「こうまで探しにくい国だとは、な」
高めの鼻をひくつかせ、困った顔で呟く。
「八百万の神が住まう国とは良く言ったものだ。この国には妖が多すぎる」
彼のブラウンの瞳が金色に染まる。
すると彼の見えていた行き交う人々の姿が、一部違う姿となって見い出された。
5人の女子高生達と談笑しながら歩いていく、セーラー服を着た猫の変化。
改装中のペナントへセメント袋を持って走る、ヘルメットをかぶった熊の変化。
携帯電話で得意先と商談をしているのだろうか、スーツを着たタヌキの変化などなど。
「地道に探すしかないか。なにより俺には自慢の鼻がある」
小さく微笑むと、彼は北へ向かって歩き出す。
『北』という方角が好きなだけの、案外能天気な選択だったという。

彼がこの地に足を下ろしてから一ヶ月が過ぎた。
「ハァハァ」
4つの足で、彼は街中を駆けている。
彼が駆け抜けた後、しばらくしてから網を持った作業着姿の男達が追いかけるようにして走り抜けた。
彼らの胸には保健所を示す刺繍が施されている。
「しつこい連中だ」
人の言葉ではない声で呟くと、彼は道行く歩行者達の足元を駆け抜けて裏通りへ。
そしてビルとビルの隙間に走り込み、追いすがる人間達を見送った。
「この国は犬に対して慈悲がないのかっ!」
呟く声は「うー」だとか「わん」だとか。
今や彼は、灰色の毛皮を纏った精悍な犬の姿を取っている。
犬に詳しい者ならば、グレイハウンドという犬種であることが分かるだろう。
古来より狩猟犬として有名な血を引いている。
それ故に飼い主もなく歩いていれば、保健所に通報され収容される運命だ。
そもそも何故彼がこんな姿になっているのかというと……
ぐーーーー
彼の、腹が鳴る。
「いかん、腹が減りすぎてこのままでは野垂れ死にだ」
この一ヶ月の間に持ち金を使い果たし、食事も摂れず、体力が落ちてとうとう『人』の姿がとれなくなったのだ。
彼はこの日本での言葉を借りるのならば、犬神と呼ばれるモノ。
長く生きた犬のうち、選ばれたものだけがなることができると言われる動物神の一種だ。
神とは言え、万能であるわけではなく、生きる為には食事も必要であるし、傷つけられれば死だって訪れる。
「ヤバイ、空腹のあまりに立てなくなってきた」
クラクラと歪む視界。その回る世界の中で、彼の鋭敏な鼻はすぐ傍に食べ物の香りを嗅ぎ付けた。
「?!」
それは彼の傍らにある青いポリバケツ。
どうやらこのビルのどちらかがレストランでもあるようだ。そこのゴミらしい。
彼は思わず身を乗り出し、バケツに犬の手をかける。
そこで彼の動きが止まった。
彼は想像する。犬神である自身がゴミを漁っている姿を。
「あぁぁぁぁぁぁ……ダメだ、それはダメだ。それは越えてはイケナイ一線だっ」
呟き、その場にへたり込んだ。
”この異国の地で、あの女狐にも会えずにこうして死んでいくのか……な”
空腹感以上に、永遠の眠りへと誘いそうな睡魔が襲ってきたときだ。
彼の鼻腔に食べ物の香りが流れてきた。
それはゴミではなく、甘いパンの香り。
目を開けると、彼の前にはしゃがみこんだ女性の姿が一つ。
手にはコンビニの袋が下がっており、もう片方の手は彼に向けて差し出されていた。
まるいパンが一つ。
「食べる?」
みつ編みをした彼女は、やや厚めの眼鏡の奥に優しげな色を湛えていた。
彼はパンと彼女を交互に見やり、
「わん」
小さくないた。

これが彼女と彼との出会い。
彼からすれば、彼女は野垂れ死ぬところを助けてもらった命の恩人であり。
彼女からすれば、死にかけの犬にエサをあげただけの、何処にでもありがちな出来事だった。

* 続きます。

映画「アイ・ロボット」を観ましたよ。
ロボット三原則をいかにして破るのか、それに伴うロボットの進化なんかを描いておりました。
腑に落ちないところも何ヶ所かありましたが、テンポも早くて楽しみましたよ。
なんというか、最強に近いサニーくんの扱いを見ていて、何処かで見たような……。
あー、アレだ。キャプテン翼で、日本代表として敵だった日向くんが味方になった感じ?
最後に、米で放送中の連続ドラマ「TRU CALLING」の第一話が入っておりまして。
内容積め込みすぎの一話でしたが、何気に『本編よりも面白いんじゃ?』とか思ってしまいました。
でも多分二話はトーンダウンしていると思います。あんなテンションで続く訳ない……。

今日のメイポ―――
なんとなく気分的に、着物を購入しました。

お銀さんと呼びなされ


旅する女仕事人。
物陰から、要人の心臓を自慢の弓で一撃よ♪

20th Feb/2005


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