Diary


8/13〜16まで、お隣の韓国へ旅行へ行ってまいりました。
メンツはいつもの顔ぶれ(大学時代の友)。男3人で暑苦しいことこの上ありません。
さて、時期的に終戦記念日。韓国では解放記念日となるわけです。
ちょいとその辺に一抹の心配を覚えつつも、ソウルを中心に水原・仁川へと足を伸ばしてきました。
近いのに知らなかった隣国ではありますが、実際に足を踏み入れてみて、感じたことなど少々。
まず韓国での物価ですが、分野毎に日本と異なります。
基本の衣食住のいづれも、日本より安いです。多分3,4割程度。
特に住については、敷金(バカ高いが)を入れておくだけで、アパートなんかは無料で住め、出るときには満額返済されるそうな。
家主は資金運用で生活しているのか……ちょっと謎。
反面、電化製品は日本よりちょっと高めです。売り場にも自国製が多かったですね。
車についてはヒュンダイやKIAがほとんど。たまにベンツを見かける程度で、日本車は皆無でした。
安いものとしては革製品。そしてメガネ。これについては後記します。
国の雰囲気的はというと、台湾以上に日本に近いものを感じました。
でもどこか『雑』。なんといいますか、てきとう感がどこかしら感じられます。
ソウル中心街の街並みはきれいではありますが、ちょっとした路地裏やソウル郊外に出るとごみが袋に包むことなく、かつ回収日や分別などお構いなしに捨ててあるのが目立ちました。
そして解放記念日前後なのでしょう、街のあちこちに警官が巡回しています。
物々しいのかというとそうでもなく、住民は余り気にしていない感じを受けました。
南大門市場や東大門市場、明洞といった繁華街は外国人観光客のみならず、多くの韓国人自身が「休日ラッキー♪」ってな感じで楽しんでいましたし。
反面、TVではKBSを中心として解放を祝い、ソウルの競技場辺りで行われた市民参加のセレモニーを大々的に放送。
かつ終戦記念日の日本を取材し、かなり偏っていると思われる意見を中心として重々しいBGMをバックに内容を展開しておりました。
これは日本のマスコミとは逆の、愛国心を煽ることで視聴率を上げる目論見を感じます。
ですが日本のそれと同様にから騒ぎ感があり、実際のお国の背景とは異なっていると思われます。
日本では竹島を巡って韓国での過剰な反応を嬉々として放送するマスコミですが、KBSの上記放送を見て「多分韓国人が日本のTVを観て自分の国についてのコーナーを見たら、同じこと思うんじゃないかな」と言った感じ。
っつーか、多分反日を叫んで日本の国旗を燃やしているヤツラは物凄く極端な一部でしかないんじゃないかね??
KBSで取り上げていた、軍服を着て靖国に参拝している日本人グループを見てそう思った次第です。滅多に着るヤツいねーだろっ。
こんな妙に色々なものが似ていて余り違和感を感じない国・韓国ですが、一言で言いますと『僅かに次元のずれた異世界』といった感じも受けます。
あまりにも似ていながら、しかし表記が全てハングルであり、まったく「読めない」のがそう感じた一環かも。
去年訪れた台湾は英語、および漢字が表記に多く使われていたため、なんとなく何が言いたいのかが分かる。
しかし読めないハングルのみと、かつ色々なものが似ているが故に何だか異世界に感じるのです。
同様に向こうの人が日本に来ると……漢字も読めない方が増えているようなので、同じなのかもしれません。


【韓国の食】
主食では必ず前菜として小皿が3,4皿出てきます。
これは無料。キムチの他にチヂミやカクテキ、サラダなんかが並ぶ。

焼肉>>
骨付きカルビ、タン塩を食べました。
ソウルと水原で食べたんですが、基本的に味付き。
焼いた肉をサンチュに包んで、好みに合わせてジャンをつけたりにんにく入れたり、キムチを合わせたりして食べる。
美味しいです。ただし根本的に日本の焼肉とは違う食べ物。
それさえ納得の上で食せば、美味しく食べることができるでしょう。
だいたい一人前が20000〜30000Wくらい。

プルコギ>>
韓国風すき焼き。これもサンチュに包んで食べたりします。
野菜も一緒に焼くので、焼肉よりもボリュームはあり。
味は甘め。そして多分、食べる店によっては素材(特に肉)が悪いと不味いと思う(私達は非常に美味でした)。

肉鍋うどん>>
プルコギを食したお店で食べたもの。
鍋で牛肉を煮て出汁を出し、そこにうどん入れて食す。
韓国でのうどんは日本のそれとは異なり、太目のラーメンに似ている。
酒飲みが焼肉やプルコギを食すと、ご飯を食べないので、〆の一品にはぴったり。

サムゲタン>>
鶏一羽のお腹に朝鮮人参などを混ぜたもち米を詰め込み、じっくり煮たもの。
味が薄いので、あとから塩やコショウで味付けする。韓国では日本で食べるうなぎに相当する料理(精力つくらしい)。
焼肉三昧で油っぽいものが苦しくなってきたときにぴったりかも。
あっさりした塩味に、柔らかなもち米と鶏肉がするっと喉を通る。
出しているお店は少ないけれど、一度は食しておきたいところ。
価格は10000Wくらい。

朝の定食>>
一般的な家庭料理。
一膳の白米と、汁物の味噌チゲ。
魚を一匹焼いたものに、キムチ類やどんぐりの粉を固めたトコロテン状のもの、ちょっとした煮物などが出る。
日本の味噌汁に相当する部分が味噌チゲであり、ヌカ漬けがキムチなところにお国柄を感じ入る。

石焼ビビンバ>>
日本で食するものとほとんど変わらない。
可もなく、不可もなく。
同行のガイドさん曰く「余ったご飯におかずの残り物を入れたのが始まりじゃないかな?」とのこと。
不味く作るほうが多分難しい。値段は800Wくらい。

刺身>>
仁川のフェ・センターにて、あなごの刺身を食べる。
一人前3000W。2人で食べたが食べきれない。
多分軽く湯引きしているのだと思うけれど、よもやあなごが刺身で食べることができるとは。
歯ごたえがあり、脂が乗っている。アゴが鍛えられそう。
場所によっては骨が多く、私には厳しい。
しょうゆは甘口、わさびは辛くないという噂は本当だった。
あなごにはちょうど良かったけれど、他の刺身にはこのしょうゆは合うのかな??
ちなみにひらめは一匹6000W。日本と同じ位??

チヂミ>>
海鮮チヂミを頂く。
お好み焼きのソース部分を無くして薄くして、トウガラシを練りこんだような感じ。
故に全体的にぱりっと焼きあがっている。具を直接下に感じることができるのが嬉しい。
間違いなくビールがすすむ。価格は600W近辺。

お酒>>
ビールは主に大手三社。それぞれ味わいが違うけれど、どこも薄いのは否めない。
発泡酒のような感じ。だいたい瓶で600Wくらい。
呑むならマッコリかもしれない。やや酸味が利いているが、それ故に爽快に呑める。
食堂のお姉さんは呑みすぎて良く二日酔いになるらしい。友人の一人が実際その通りになった。
かなりの量があって700W近辺。
他には日本でも有名な焼酎「ジンロ」がある。
韓国でのジンロは甘い。ややフルーティな喉越しになっている。
これの亜系で果実酒もある。我々は苺酒を呑んだ。
ジャムを溶かしたような甘さ。2度は呑めん。女性に人気があるそうな。
他には韓国版の日本酒なんてのもある(名前忘れました)。
やや辛口。すっきりした喉越しで、辛いものに合う。
呑めなかったのだがドントン酒というものがあるらしい。いわゆるどぶろくだそうで、お店によって味は違うんだろうなぁ。
総合的に、マッコリが一番美味しかったです。

全体的に韓国での「食」は「辛い」物が多いです。
辛いのが苦手な人には相当キツイかと。
それ以外に関しては舌に馴染みやすいと思います。
ただ刺身を始めとした魚介類系は結構クセがある気がしました。


【韓国での交通手段】
ソウル市内の移動は、網の目状に張り巡らされている地下鉄か、タクシーとなります。
バスもありますが、ハングルが読み書きできないと厳しいかと。
地下鉄の料金は市内ならば大抵900W。市外へ出る鉄道を併用しても合計1400Wくらいで済みます。
駅名については全て番号がふられているので、これを利用すると便利でしょう。
切符は自販機と駅員に直接買い求める方法があります。自販機の種類はまちまちで、始めに料金ボタンを押してからお金を投入、なんてタイプもありました。
基本的に自動改札ですが、駅によってその種類がまちまちなのがある意味興味があるところです。
鉄道では、あとソウル駅を通る韓国版の新幹線「KTX」なんかもあります。
これについては水原の帰りに乗りましたが……日本の新幹線をバカにするなっ!と言いたくなりました。
普通の特急電車です、はい。
一方のタクシー。これは模範タクシーと一般タクシーの2種があります。屋根に付いている飾りの色で分かれています。
模範タクシーは英語や日本語が通じますがちょっと高め。
一般タクシーは場合によっては乗り合いすることもあるそうですが、昼間は滅多に無いそうな。
私達はほとんど一般に乗ってました。ガイドブックで指を示したり、適当な英語や韓国語で何とか通じるもので。
そんなやり取りも結構面白いものです。
さてタクシーでの移動は地下鉄に比べると高めで、一般ならば初乗り1500Wから。
ただここで注意点。
タクシーは全てナンバープレートが黄色です。
緑のものは個人タクシーで、あとからふっかけられます(実際にふっかけられました)。
とは言ってもちょっとくらいなので、気にしない方は笑って払ってやるのも懐の見せ所かと。
運転はみんながみんな荒いです。かつ左ハンドルで右車線。助手席に乗っているとかなり怖い。
さらに一般道で平気で140km/hを出しやがります。
でも交通事故は日本の方が多いそうな(ガイドさん曰く)。


【韓国で出会った人達】
何故か日本人だと分かる。レジのお姉さんまで分かっている。
聞こえてくる全く知らない単語の羅列が唐突に「こんにちわー」だとか「ありがとうございました」とか言われると慌てる。
顔つきで分かると言っていたけれど、それだけじゃない気がします。なんか日本人オーラとかあるのかな??
別にだからといって不利益を受ける訳もなく、むしろしっかり話を聞いてくれるので安心する。
ちなみに韓国の女性はみんながみんな、デフォルトで愛想が良かったのですけど、少しは日本でもその傾向があっても良いと思うんだなっ!(泣きながら)
ともあれ、そんな観光の途中、韓国人の小学4年生くらいの男の子と2年生くらいの女の子とすれ違いました。
何かを尋ねたかったらしく、男の子の方が韓国語で私達に質問してきます。
当然、何を聞かれているのか分からずに戸惑う我々。
「ノー コリアン」
隣の友が一言、ようやく告げました。
その一言で少年の言語が一瞬で英語に変化。
どうやら私達の建った今行ってきた観光施設が今日営業していたかどうか聞きたかったらしい。
むしろたどたどしく答える我々に、2人は礼儀良く英語で御礼を言って駆けていきました。
正直、全員が全員とは思いませんが、少年に咄嗟の機転や知識だけでない英語を見て『ああ、将来どうなるのかな』とか感慨に耽ってみたり。
「あの2人って兄妹かな?」
「そうだろうね、きっと休日だから妹がお兄ちゃんにどこか遊びに連れていってってせがんだんだよ」
「なるほどー、「お兄ちゃん、どこか遊びに連れていってよー」とか?」
「いやいや、いいトコの子っぽいからきっと「お兄様、どこか遊びに連れていってくださいませんこと?」じゃないかな?」
「むしろ「兄上、お休みくらいどこかに連れていってください!」とかじゃん?」
むしろ、こんなバカな会話をしている我々の将来が心配だ。


【韓国で買ったもの】
正直、買い物には余り興味は無かったけれど、買うことになったものが2点。
まずは革ジャン。
南大門市場は雑多で、色々なものが置いてある。上野のアメ横よりも混沌とした感じ。
そこには革製品を扱うお店が多いのだけれど、もともと韓国では革製品が安いと聞いていた。
そんな時、同年代くらいのお兄さんがお店から声をかけてくる。
どんなものかと足を運んだのが運のツキだったのだろう。
「お兄さんに合う商品アルヨ」

革ジャン


と言って出してきたのが写真の商品。
「革の中でも最高級ネ。ほら、ライターであぶっても燃えないヨ」
分かったから炙るな。
「幾ら?」
「40万Wネ」
「高いよ」
「安いやつだとコレくらい重いヨ。これなら10万Wくらいネ」
出してきたのは同じようなコートだけれど、何か安っぽい。
持ってみると3倍くらい重い、それ以上か??
こんなのは10万だしてもいらん。
「今は夏だから、普段より安いヨ。なら39万にするヨ」
「いや、別に欲しくは…」
「着てみるネ」
「……うぉ?!」
少し大きいが夏故に薄着だから丁度良いかも?!
重さも今まで想像していた革の重さよりもずっと軽く、そして生地は柔らかい。
なにより、身体にしっくりとまとわりつく感じがする。
「うむ、悪く…ないね」
「お兄さん、買うなら現金?」
「ああ。現金だなぁ」
「なら38万にするヨ。円にする、それともウォン?」
「買うならウォンにしよーかねぇ」
「ワタシ、ウォン大好きネ。37万にするヨ」
「いや、でもなぁ」
「お兄さん、今日始めてのお客さん。始めてのお客に買って貰えないと今日の売上げがダメになるジンクスあるのヨ。だから36万Wでどう?」
しかし冷静に考えて……36万Wと言ったら4万円程。安いのかね??
いや、高いだろっ!
革製品のついての予備知識の無さに心の中で舌打ちしつつ、今回は諦めることとする。
が。
「お兄さん、幾らなら買うネ? 考えている値段教えてヨ」
言って計算機を出してくる店のお兄さん。
しばし考えつつ、
『36で出してきてるからなぁ。無理な値段出して諦めさせよう。でも安すぎる値段出しても拗ねそうな気がするしなぁ』
そこで叩いた数字が24万W。隣で見ていた友人が「いきなりそこまでかっ」などと驚く。
しかし。
お兄さん、思った通りの苦い顔をしつつ、
「まいったよ、でも今日最初のお客さんだし仕方ないネ。24でオッケーヨ。でもチップで1000Wは頂戴ネ」
ふぇぇ?! 3分の2にしてOKなの?!
「だから次来るときは絶対またウチに来てね、約束ヨ」
内心唖然としながら、指切りをする2人。
しかし金がそんなにない。
「みんな、オラに力(主に金)を貸してくれ!」
と元気玉を練ってみる。
「分かったよ、貸すから」と、同行している友人に借りた。
で、買うつもりが無かったのだけれど、買うことになってしまった写真のコート。
革はラム。非常に柔らかい上に、冬は暖かそうだ。
価格は24万W(日本円で28000円くらい)。
正直、高いのか安いのか分からないけれど、一着くらいこんなのがあっても良いと思う。
そう思うことにした。

色つきメガネ


そして明洞にてメガネを購入。
こちらは同行している2人も含めて全員メガネ君ということもあり、覗くだけしてみようとのことだ。
実際に見てみるとフレームの種類は多く、レンズも安い。
特に目が悪くて安いレンズだと厚みが牛乳瓶の底ほどになってしまうという方には間違いなく安い。
私の今かけているメガネはレンズを一番薄いものにしているため日本で6万円程したが、同様の商品が韓国だと2万円ほどで買える。
レンズは一段階安いものとし、色づけは無料とのことだったので少しグレーを入れてもらった。
価格は14000W(16000円くらい?)。
20分もあれば生産可能とのことでしたが、ホテルにまで届けてもらいました。
実際にかけてみると……悪くない。
けれどちょっと雑。鼻当てにうっすらとバリがついています。なので長時間かけると痛い。
家に帰ったら削ることにします、はい。


そんなこんなで買い物をしました。
革といい、メガネといい、一部商品だけ価値が下がっている気がします。
いや、日本での価値が高すぎるだけなのだろうか??
この辺の違いを見つけるのも面白いかもしれませんね。


【総括】
次の点は予備知識として記憶の片隅に留めておいても損はないかと思います。

* 別に街はキムチ臭くない
* 案外、日本語が通じる
* 1000W≒120円くらい
* 緑ナンバーのタクシーは避けろ
* Wへの換金は韓国国内で行え(結構あちこちにあります)
* できれば移動は地下鉄で(電車間隔は5分ごとくらい)
* 正直、史跡巡りは観るところがないので難しい
* 辛いものが苦手な人は食に困る
* 平気な人には日本と変わらない
* ビールよりもむしろマッコリが良いかと

最後に。
韓国に限らず、胸を張って自分が正しいと思って行動することが一番楽しく旅行できるのではないかと思います。
でも他人の気持ちも考えつつ、ね。

16th Aug/2005


夏の話題は今のうちに、っつーこって。


行き当たりばったりな突然の小旅行。
いろいろあって、目的の海へとたどり着いたかと思った矢先、大雨が降り出した。
結局、雨は夕方まで降りつづけたせいで海を堪能することができなかったのだが、乙音さんの運の力で宿を取ることができた。
そして今。
俺達3人は浴衣に着替え、すっかり晴れてしまった夜空を地元の神社の境内から見上げている。
しばらくすると、
ひゅー
そんな空気の抜けるような音がどこからともなく聞こえ、
どん!
お腹に響く夜を叩く音とともに、星空に輝く夜空に黄色と青の光で作られた大輪の花が咲いた。
どん、どんどん!!
咲いては消え、咲いては消える。
こうしてじっくり花火を見るのなんて、何年振りだろう。
ふと視線を隣に移す。
そこには目を輝かせて花火に魅入る雪音ちゃんと、
「どうしたんです、亮クン?」
「あ、いえ」
何故か俺と視線の合った乙音さん。
そんな必要もないのに、慌てて俺は視線を夜空へと戻す。
隣で、かすかに笑う声が聞こえたと思うが、
どん!
花火の音に掻き消えた―――


海の家から宿へと案内された俺達は、想像もしなかった立派な温泉と、思ったよりも豪勢で美味しかった料理、そしてぴりっと辛口な地酒を俺達は堪能することができた。
なんだか1年分の運を使い果たしてしまったようだ(主に乙音さんのだが)。
ほろ酔い気分な俺と乙音さんに、一人ジュースを悔しそうにすすっていた雪音ちゃんが突然窓を開け放ったものだ。
「ねぇ、なんかお祭りやってるみたいだよ!」
耳を澄ませば、たしかに。
遠く風にのってお囃子の音が聞こえてくる。
宿の女将さんに聞けば、近所の神社で夏祭りが今日明日と行われるらしい。
「亮お兄ちゃん、もちろん行くよね!」
正直、部屋で地酒を飲んでいた方がラクなのだが。
「他ならぬ雪音ちゃんのお願いだ。行こうか」
一人でジュースばかり飲ませていては可哀想だとも思う。
「そうですかー、じゃ、私も行きます」
ややおぼつかない足取りで乙音さんも立ち上がった。
近所の神社は歩いて5分程度。
海に面して小さな山があるのだが、そこに建つ小さな地主神社でのお祭りだった。
神社へと続く寂れた商店街(のような通り)には、ささやかながらも出店が並び、海を楽しむ観光客がメインでそこそこ賑わっている。
くいくいっと、浴衣の右の袖が引っ張られた。
「亮お兄ちゃん、金魚すくいがあるよ」
雪音ちゃんだ。
「やってみる?」
「海に逃がして良いのなら」
「やめてください」
ろくな事を考えない。
くいっと、今度は左の袖が引かれた。
乙音さんである。
「射的がありますよ、亮クン」
「あ、懐かしいですねー」
「『鏖殺の亮』と呼ばれたころを思い出したんですか?」
「そんな時代はありません」
人の過去を勝手に作らないで欲しい。
そんなこんなで出店を眺めながら、俺達はゆっくりと神社の方向へ向かって歩いていく。
丁度境内についた頃、夏祭りにあわせて開催される町内会の花火大会が始まる時間となった。
「花火って、くるくるまわって最後に爆発するヤツ?」
「ちがうわよ、雪音。人に向けて飛ばすやつよ」
「……間違ってはいませんが、それはねずみ花火とロケット花火ですね。今から観るのはそれよりも大きい、空に打ち上げるヤツですよ。観たことないんですか??」
「「インドア派だから」」
「そうですか……」
海が観たことないという姉妹は、花火もまた見たことがないと言う。
俺はどこか違和感を覚えつつも、2人とともに花火が咲くのを夜空を見上げて待つのだった。
花火を見て、どんな反応をするのかを想像しつつ―――

* 最近、何を求められているのか良く分からん

旅行に行きたい。
っつーことで、今週土曜日からちょっと韓国に飛んできます。
ただただ、ネタを求めて♪
韓国のお勧めってなんでしょう?
焼肉、かなぁ、やっぱり……

9th Aug/2005


夜半に雨が降る。
うぉぉ、涼しいっ。
これってやはり「打ち水」を全国的に展開すればかなり気温下がるんじゃ?!
改めてそんなことを実感いたしました次第。
涼しくて今夜はゆっくり眠れそうです。


【更新】 キャラリナ「雪音」の午前時報にCVが実装されました。
     坂崎さん、お疲れ様ですっ♪

8th Aug/2005


暑いので、乙音さんのお話続きでも―――

どこまでも続くかに思われる青い海と、なだらかに伸びる白い砂浜。
太陽の日差しはその青と白をより強調させているかのようだ。
耳に響いてくるのは波が砂浜に打ち寄せる音と、隣を歩く彼女の息遣いだけ。
静かで美しい場所だった。
―――と、言うような海岸などこの日本にそうそうあるものではない。
得てして足元を子供達がちょろちょろと走り回り、砂浜はどことなく黒っぽい。
そんな砂浜にはタバコの吸殻や、いつやったのか分からない使用済みの花火、空き缶が半ば埋もれていたりする。
肝心の海の水は濁り、ところどころ妙に暖かかったりする訳だ。
少し泳げば、腕にはどこから流れ着いたのか分からない海草が絡まり、隣のカップルと危うくぶつかりかけたりする。
そう、これが日本の一般的な海水浴場である。
駅を一駅分歩いて1時間半。体は汗だくだが、拭きつけてくる潮風はそれゆえに心地よい。
「「うわぁーー」」
隣の2人が歓声とも溜息ともつかぬ声を上げていた。
それはきっと『海』というものに抱いていた憧れを壊されたからだと思う。
実は乙音さんと雪音ちゃん、これまで海を見たことがなかったらしい。
田舎が山のほうなのだろうか??
「想像していた通りね、雪音」
「はい、姉上!」
「なぬ?!」
「ほらほら、あの海の家で売っているラーメンなんか、ぜんぜん美味しくなさそうよ。食べてみたいわ」
「監視員さんが口うるさいですよ、あの目をかいくぐると思うとワクワクしますねっ!」
どうやら俺はまだまだ甘かったらしい。
「さ、お兄ちゃん、泳ごうよ!」
俺の腕を引っ張る雪音ちゃん。そんな彼女を、
「まずは海の家を借りて着替えてからよ、雪音」
乙音さんがたしなめる。
と、その時だ!
何かが、頭上で光った。
「「?!」」
一瞬の後、ごごん!と空気を突き破るような破裂音が響いた。
雷だ。
いつしか空は黒く曇り、それに気付いた時にはバケツをひっくり返したような雨が降り注いだ!
「うわっ、とにかく適当な海に家へ」
「はい」
「うん!」
俺達3人は手近な海の家に飛び込んだ。
「いや、まいったまいった」
すっかりぐしょぬれになってしまったTシャツの裾を絞りながら、俺は上空を見上げる。
大粒の雨が乾いた砂浜にどんどん吸い込まれている。
「夕立、ですかね」
隣で困ったように乙音さんが呟いた。
「そうですね、って?!」
彼女に視線を向けるが、そこに映った光景に慌てて視線をそむけた。
「??」
乙音さんは首を傾げ、俺の視線の先に回りこんでくる。
また目をそらす、その先にまた回りこんでくる。
「どうしたんです?」
「いや、その。雨で濡れたから、ちょっと目に染みて」
「そうなんですか?」
とても言えない。
すっかり濡れてしまった乙音さんの薄いワンピースが、彼女にぴったりとくっついてしまって下着のラインすら透けて見えてしまっているなどとは。
そらした俺の視線の先で、いつのまにやらパーカーを上に羽織った雪音ちゃんがニヤリと笑って親指を立てている。
顔に似合わずオヤジくさいと思った。


水平線すら見えない海、広がる砂浜。
そして高い波、降り続ける雨、強風。
「台風って来てましたっけ?」
「いや、来てはいないと思うんですけど」
ようやく乾いた乙音さんはイチゴ味のカキ氷を崩しながら、俺の答えに「そうですかぁ」と呟く。
せっかく延々と歩くというおまけつきで海へきたというのに、一度も海水に触れることなく終わりそうだ。
「しょーがないから今日はどこかに泊まっていこうよ、姉上」
「そうね」
伸びた焼きそばを頬張る雪音ちゃんに、乙音さんはそう頷いた。
いやいやいや。
この時期、予約もなしに泊まれるところなんてあるはずが、
「大丈夫ですよ、亮クン。きっとどうにかなります」
「いや、無理でしょう」
「んー、じゃあもし大丈夫だったら、今夜の酒代は亮クン持ちですよ」
「はぁ。構いませんよ。とれればの話ですけど」
「うふふ。あ、すいませーん」
微笑む乙音さんは海の家の主人を呼び寄せると、何かを話し始めた。
「じゃ、3名で」
「ありがとうござんしたーっ!」
海の家の主人はそう言うと、乙音さんに一礼して去っていく。
「とれましたよ」
あっさりと乙音さん。
「らっきー♪」
笑う雪音ちゃんに、
「え、どうやって?!」
俺は首を傾げる。
「実は案外、旅館の当日キャンセルってあるものなんです。で、この海の家は近所の旅館が経営しているものでしたので」
「へぇ、そうなんですか…」
「でも当日キャンセルがあった旅館を探すのが大変なんですけどね。一件目で見つかるなんて運が良かったです」
「海に来たことがないのに、良くご存知ですね」
ふと根本的な疑問が口をついて出た。
「ええ。旅行の本とか読むの好きなもので…」
やっぱり変わった人だとは思う。
「あとですね、都合上3人1部屋なので、我慢してくださいね」
「あ、はい」
それは俺が男扱いされていないだけなのか、それとも害はないものと判断されているのか。
「私も雪音も寝相が悪いので、くれぐれも息の根が止まらない様に注意してください」
どうやら自分のためにも、廊下で寝たほうが良さそうです。

* アッパーカットとかかと落としを食らいます

うみほたるを通過して、九十九里までドライブして来ました。
何年ぶりかに海へと『浸かる』。泳ぐではない、浸かる。
一年に一度は入っておくと風邪とか、病気になりづらいらしいですよ?

四季ちゃんとピートさん


藤ゆたかさんより↑の暑中見舞いをいただきました。
成恵の世界より四季ちゃんと…げげェ、バロン登場!(ピートさんです)
暑さのあまり、猫の世界へ旅立ちそうな昨今ですね。
ありがとうございました♪

7th Aug/2005


暑い今日は乙音さんのお話でも―――

夏の容赦ない日差しは高く澄み渡った青空を通して、燦々と輝く太陽から垂直落下してくる。
見渡す限りの青々とした田んぼは湯気立ち、それを刺し貫くようにして走る乾いた砂利道からは陽炎が立ち上る。
夏だ。
ひたすらに暑く、この大地には生きる物がいないかと思うほど静かだった。
鳥のさえずる声すら聞こえない。それほど暑い、真夏の昼間。
時々思い出したように頬を撫でる風が、わずかに潮の香りを含んでいた。
それ以外に周りにはなにもない、ここはそんな土地だった。
「それにしても、暑いですね」
かけられた声に、俺は我に返った。
視線の先、延々と続くかと錯覚する白い砂利道の少し先を歩く女性に俺は返す。
「そうですね、今年の暑さは尋常じゃないですね」
言葉に、彼女は射した白い日傘の下で小さく微笑む。
薄い青の混じった白いワンピース姿の乙音さんだ。今日は腰までの黒く長い髪を結い上げている。
日焼け知らずの白い肌は、天の青空と地の緑の間でくっきりと切り取られているような一枚絵を思わせた。
「亮くん、お茶飲みます?」
「ええ、お願いします」
乙音さんが手下げバックから小さな水筒を取り出すと、用意してあったコップに冷たいお茶を注いでくれる。
それを受け取ろうとした時だ。
「いただきっ!」
横から小麦色の細い腕が伸びたかと思うと、コップをあっさりと奪い取る。
「こら、雪音っ」
乙音さんとおそろいの、こちらはやや赤みが入った白いワンピース姿の雪音ちゃんは、コップの中身を一気に飲み乾した。
飲み終えてから、動きを硬直させる。
「どうした?」
「あ…う」
ギギギと軋んだロボットのようなな動きで俺に振り返る彼女。
麦わら帽子のせいでよく分からないが、顔色が紫っぽく見える。
「にが、にがぃ」
泣きそうな顔で訴える雪音ちゃんに、
「特製のアロエとにんにくと朝鮮ニンジンのお茶なの」
答える乙音さん。
「元気出るでしょ? おかわりいる? 亮くんもどうぞ」
「「いや、それは遠慮したい」」
珍しく俺と雪音ちゃんの意見が一致したのだった。


そもそもどうして俺達がこんな灼熱地獄にいるのかと言うとだ。
昨日の夜のこと。お隣ではこんな会話がなされていたらしい。
「暑いわね、雪音」
「うー、海でも行きたいね」
「じゃ、明日行きましょう。お隣の亮くんも誘って」
「え、お兄ちゃんも?! アタシ水着、スク水しかないんだよ」
「GJ」
「わけわかんねーよっ!」
「いいじゃないの。よく知っている間柄なんだし」
「だからダメなんじゃない! 知らない人だけならスク水でもいいけどさ、よく知られているからこそ恥ずかしいでしょ」
「…そうかしら?」
「そうです! そもそも姉上はどんな水着持って行くつもりなんです?」
「貰い物のバトガールの…」
「ダメダメダメ、目立ちすぎるから絶対にダメー!! っていうか、それはコスチュームというんですっ!」
「じゃあ、どうしましょ?」
「買いに行きましょう」
「これから?」
「そう、これから」
「NOW?」
「英語で言っても同じだから。NOWです」
妹に腕を引っ張られ、姉はあたふたとついていく。
壁の向こうから一部始終を聞いていた(というか聞こえている)俺はその10秒後、問答無用で買い物兼水着選びに付き合わされたのだった。
そして翌朝。
電車を乗り継ぎ、目指すは田舎の海水浴場。アパートから3時間の場所だった。
8両編成だった電車は一回の乗り継ぎで3両となり、2回目の乗り継ぎでワンマンとなる。
そして目的の駅の一個手前での出来事だった。
「え、この電車ってここまでなんですか?」
「そうだよ。次の電車を待ってくれな」
運転手兼車掌のおじさんはあっさりとそう答えた。
時刻表を見ると、次の電車はまるまる1時間後。
駅前には民家が数件並ぶだけで、喫茶店もなければキオスクすらない。
当然、コンビニなんてものもない。
それでもこの駅は、この路線では大きな駅だ。何故なら無人駅ではないから。
「とんでもないところにきちゃったわねぇ」
困った顔の乙音さん。
「しょーがないよ、たった1駅なんだから歩こうよ、お兄ちゃん」
早く泳ぎたい一心の雪音ちゃんは俺にそう言った。
「そうだなぁ。いいですか、乙音さん?」
「私はかまいませんよ」
そんな訳で、俺達は次の駅を目指して歩き始めたのである。


じりじりと灼熱の日差しが緩むことなく俺達を突き刺しつづける。
「もーーー! 誰よ、誰が歩こうって言い出したのっ!」
キレたのは雪音ちゃんだ。
その返答に、俺と乙音さんは無言のまま彼女を指さした。
「あぅ!」
雪音ちゃん、撃沈。
「しっかし田舎の一駅を舐めてましたね。こんなにも距離があるとは」
俺は大きくため息。
「そうですね。いくら歩いても景色が変わらないのも気が滅入ります」
と、その時だ。
ガタンゴトン……
響く音。そして遠く、電車が走っているのが見えた。
それは俺達がもしも駅で待っていれば乗っていた電車。
「「あーーーー!」」
悲鳴とも、怒声とも言えない叫びが三人から漏れたのだった。
結局それから30分後に海水浴場には到着したが、準備運動要らずだったことだけが幸いであったと加えておく。

* 炎天下は辛いね

昨日のネクソンへのメールの返事がきました。
文面と、現在の対応から判断すると「チート容認」が結論のようです。
そんな訳でチート諸君、安心して遊んでください。
そして今回の結果を踏まえると、信頼性の点で寝糞ん<癌呆の公式が成り立つと考えられますので、マビノギを選ぶくらいならエミル・クロニクルを選択したほうが良いと思います。
そんなこんなで、今回の一件でございました。


やっと一週間が終了!
明日明後日はちょいと遠出します。
ネタ集めネタ集め♪

5th Aug/2005


今日はいつもと異なる話題をば。
最近遊んでおりますオンラインゲーム「風の王国」では魔術師なのに尽力使えたり、戦士なのに生命の祈りを使えたりしているキャラが増えております。
いわゆるチート。
チートは悪なのか?と問えば、ぶっちゃけ「チートできてしまうゲームってのがダメダメだろう?」というのが私の持論。
そして風の王国は昨今ダメダメ状態が続いており、その現状をどう見ても管理会社のNEXONは黙認状態。
定例メンテについての文言はいつもの決まった「変更点はございません」のみ。
9月に無料開放、11月末で終了だからというのは分からんでもないけれど、プロの仕事じゃない。
何より、今現在は有料サービス中である。
いくらなんでもユーザーを舐めすぎ。VerUPしないは許せるとして、さすがに放置プレイしすぎ。
これは企業の体質なのだろうか?
風の王国がこんな状態であるということは他のタイトルについても管理会社が同じである以上、同様の状態である可能性が高い。
というか、今現在そうでなかったとしても、将来そうなる。
それを否定できる材料がなく、そうなる材料がここにある以上、そうなると言いきれる。
正直、マビノギには期待していたので残念でならないです。
なのでサポートへメールしてみました(以下内容)。


こんにちわ。
風の王国では「刀牙」「夜想」というキャラでいつも遊ばせて頂いております。
プレイさせていただきまして、最近目立ってまいりました件について質問をさせていただきます。
昨今、いわゆるチートと呼ばれる行為が風の王国内で横行しております。
この件については当然ご存知のことと存じますが、対策などは立てていらっしゃるのでしょうか?
風の王国は9月から無料開放となり、11月末を以って終了という話はお聞きしております。
しかし現段階である8月においては私も当然課金しており、有料サービスであります。
もっとも無料開放されるからといっても当然のことながらチート行為はオンラインゲームという分野において容認されざるものと思いますが。
現在の状況を見ておりますと御社はチートを容認しておるとしか思われませんが、その通りなのでしょうか?
現在行われておりますチートに対する御社のお考え、および対策をお聞きしたくご返答よろしくお願い申し上げます。

御社はアスガルド・テイルズウィーバー・メイプルストーリーといったオンラインゲームのタイトルを次々と展開され、現在ではお隣の韓国で人気のありますマビノギに力を入れてらっしゃるように見受けられます。
しかしながら、やはりこれらのタイトルに対してもチートは容認されるのでしょうか?
風の王国でのチートに対する御社の対応は、オンラインゲームを楽しむ者達にとって注目される件だと、私は個人的に感じております。
対応の結果如何によっては、御社の他タイトルに対してのユーザー信用度が大きく左右されるのではないでしょうか?
御社のお考えをお聞かせ願いたく、1オンラインゲーマーとしてメールをしたためさせていただきました。
重ね重ねながらよろしくご返答の程、お願い申し上げます。


自動返答、もしくは返事が無かったら、NEXONの他タイトルに対してのセキュリティはダメダメであり、その責任感すらないと判断する。
適当な時間伸ばしな返答ならば、技術力および応用力の無さと無責任さが他タイトルでもそのうち蔓延するんじゃないだろうかね?
しっかりした対策の返答が着たならば、今後のNEXONのオンラインゲームには期待が持てる。
けれど返事だけで実行に移さないならば、他タイトルの今後の展望が羊頭狗肉であると判断せざるを得ないだろう。
そんな感じ。
正直これって今後のオンラインゲーム管理企業としての信用度がかかっている重要案件じゃねーのかね??
場末のタイトルとは言え、それ故に対応如何によって体質が分かる好例だと思うのです。

* 正直、こんな暇はないのだが

猛暑の中でのネクタイは気が狂いそうです。

4th Aug/2005


少年の瞳はアタシを捉えていた。
普通の人間には見えないはずの、アタシを。
「!?」
本能的に身を隠そうと動こうとするが、しかしそれは叶わない。
何故ならアタシ自身もまた、彼をじっと見つめてしまっていたから。
「あ」
見上げる彼の瞳、透き通るような黒さを持つその右目に異変が生じる。
黒い瞳に映ったアタシの姿が一瞬揺らぎ、淡い黄金色に染まった。
途端、アタシは逆らい難い力に吸引される―――


足元でちょこんと座り込んで、その小動物のような生き物は僕を見上げていた。
邪気の無い小さな瞳には、呆然としている僕の姿が映っている。
と。
右目が疼いた。
それは僕の意思に従わない、本能の力。
自然とまばたきをしてしまうのと同じ、どうしても止められない力だった。
右目の視界が変化する。
一瞬、今まで抑えていたもの全てが解放された、そんな感触。
片目の視界だけが、足元の小動物に急速にズームインされる!
いや、違う。
白い妖が、僕の右目に飛び込んできたのだ!!


「ぐぁ!!」
「うぁ…」
目を通して脳に直接、ソイツは飛びこんできた。
まるで頭の中に自分以外の何かがいる、そんな信じられない状態。
その上で、ソイツは狭い僕の頭の中を右へ左へと大暴れしていた。
「ぐっ」
頭を抑えて僕はうずくまる。響く鈍痛に目を閉じた。
閉じた先、暗闇となるはずの視界に白い獣が突っ込んできた!
避けられない、いや、どう避けたら良いのか分からないっ。
ゴッ!
数瞬後、頭の中だけで響く音。
思考の中の僕と、頭の中の何かは互いに、盛大に頭をぶつけ合う。
結果、実世界の僕はコースに身を投げ出して気を失ったのだった。

* ゲットだぜ?

お仕事が今週さえ乗りきれば、少し楽になりそうです。

2nd Aug/2005


僕には、見えてはいけないモノが見えてしまう右目がある。
そのお陰で幼い頃からあり得ない怪我や病気、果ては異世界に連れ込まれて神隠しにあったりもしたものだ。
この右目は生まれつき備わっているもので、今でも苦労させられている。
高名な占い師によれば、僕の右目は妖精眼や邪眼、千里眼といわれるものの類であると言う。
この世に在らざるモノや妖怪の類、果ては人の思念までもこの目を使うと「見る」ことができるのだとか。
もっともそれは「鍛えれば」の話であり、その修行は過酷でありかつ普通の生活を送っていては得られないものだと聞いている。
故に僕は「封じる」方法を教わった。
占い師は言う。
「気にしないことです。そうですね、例えば一つのことに熱中してみてください。周りのことが気にならないくらいに」
こう助言を受けたのは中学2年生の夏の終わり。
遊びに行った海で、怨霊に危うく溺死させられかけた帰り道でのことだった。
とは言え、その頃の僕には熱中できると言えるようなものはなかった。
スポーツ少年でもなければ、ルービックキューブを瞬時に解いたりできる文科系でもない。
そこで。
取りあえず、走ることにした。それも短距離。
走ることはいつのまにか得意な部類に入っていたから。何故ならずっと逃げていることが多かったから。
それに全力で走りつづけていると、苦しさで周りが見えなくなっていくから。
だから僕は、短距離走を選んだ。
走って走って走り続け、周りを見ないようになっていった。
そして高校生となった今では、短距離走でレギュラーの座を獲得するまでになっていた。
走り始めてから4年目の夏。
周りを見ないようにしていただけなのに、いつのまにか僕を見る人が多くなってしまった、そんな夏の日。
僕は『それ』と出会ったんだ。


風が頬を撫でる。
茹だった夏の空気を、僕は全力で駆けぬけることで切り裂いていく。
直線200m。
当然のことながら1分もかからない時間の中、僕の意識はただただ先だけを見つめる事ができる。
走りきる!
「うん、良いタイムよ、芳樹くん」
弾む声とともに真っ白なタオルが投げかけられる。
「ありがとう、楓さん」
タオルを受け取り、額を拭いた。走ったこともそうだが、この気温と湿度では存在しているだけで汗をかく。
「まだ走るの?」
「うん」
そう問うてくるのは日向 楓さん。陸上部のマネージャーで僕より学年が一つ上の三年生だ。
「熱中症で倒れるわよ」
ポニーテールの髪を揺らしながら、小走りにスタート地点へと戻る僕に併走してくる。
「大丈夫ですよ、水はちゃんと捕ってるから」
「ならいいけど。でも…」
「集中したいだけだから」
「…そう、ね」
僕の言葉に楓さんは小さく微笑む。
彼女は僕の遠縁に当たる人で、僕の「体質」については幼い頃からよく知っている。
受験で忙しい三年生なのにマネージャーとして付き添ってくれているのも、そんな僕を心配してくれているからだ。
「ありがとうございます。もうちょっと走ったら帰りますから、楓さんは切り上げちゃってください」
「ん……。じゃ、図書館寄ってから帰るから、5時に校門で待ち合わせしよ?」
「はい」
僕の頷きに彼女は微笑み、校舎へと足を向けた。
それを確認してから、僕はスタートラインにつく。
脳内で審判の「よーい」という声を再現。
「どん!」
と、声をイメージしたのと同時、クラウチングスタートから身を起こした、その時だ!
「!?」
遥か右手、グラウンドの端。
道路と校庭を区切る並木の中に、その気配が発生した。
おとなしく気配を殺してはいるが、とてつもなく大きな力をもった『何か』。
そこいらの怨霊や自縛霊など比較にならない、すでに段階自体が異なると思われる力だった。
右目がうずく。
そいつは何かを探しているのか、グラウンドを見つめている。
一体、この力は何だ??
思わず視線を向けようとして、しかし慌ててそむける。
ダメだ、見てはダメだ。気づいてはいけない存在だ。
怨霊にしてもなににしても、こちらが気づかなければ手を出してくることは無い。
彼らは人間が鈍感であることを知っているから。そしてそれ故に興味に対象ではないからだ。
だから僕は、ひたすらに足を踏み出した。
ただただ、ゴールだけを見据える。
周りに何があろうが関係無い。僕は走り続け、ゴールのその先だけを見つめていれば良いんだ。
だから僕は走り続ける。
何本、200mをこなしただろう?
いくら走っても走るのをやめようとは思わなかった。
走ることに慣れた僕の身体もまだ悲鳴は上げていなかった。
そして夏の茹だるような気温と運動量を以ってしても、僕の意識はまだ薄れていかない。
長距離ランナーにはよくある、ランナーズハイの領域に届かない。
理由は、とてつもない力の接近のせいだ。
そしてその力は、いつしか僕のすぐ傍にあった。視線は向けないが、「それ」は僕と併走している。
走っても走っても、いくら走っても、抜くことも抜かされることもなくぴったりと横についてくる。
一体何だ? 僕はコイツに気づいていない。僕はコイツを見ていない。
ただただ走って、ゴールの先を見つめているだけなのに。
ただゴールの先だけに向かって。
……ゴールの先、そこには何があるのだろう?
僕はどこに向かって走っているのだろう?
そしていつまで走り続けるのだろう??
マズイ!!
一瞬、意識が飛びかかった。
何十本目かのゴールを前に、僕は足を止める。
途端に一気に疲労が体を襲った。
思わず白く靄のかかりかけた視線を下に落とす。
そこで―――
目が合った。
リスよりも少し大きな、両手の上に乗るほどの大きさの白い動物。黒い大きな瞳が僕の瞳を映し出している。
その白い身体と同じ位の長さのギザギザの尻尾は、鋼鉄の刀のような光沢と鋭さを持っていた。
見たことの無い、動物だった。
いや。
それこそがずっと感じていた大きな力。
今まで僕が遭遇したどんなものより桁違いな力を持つ『なにか』だった。


これが、目的がないままに走り続けることのできる少年と、目的にたどり着くことなく走る場所を無くした妖との出会いである。
この2人が出会うことによって、各々がさらに先へと進めるのかどうかがコレからのお話である。

* 次回、対決か?!

カマイタチ=年下キャラ,楓さん=年上キャラという公式でお願い致します。


昨日は母校の高校へ行ってきました。
当時所属していた部活の様子を見てきたのですが、代が変わっても雰囲気は変わらないことを改めて感じましたよ。
まさに類は友を(以下略)。

31th July/2005


Passed Log ...