走れ!雪音ちゃん 後編
著 御調


8.安藝急行株式会社広報特別啓蒙係

 「ふぁ〜〜〜」
 大アクビこき太郎の雪音は今、安藝急行広島市内線の電車の中。
 エネルギアビルの中町電停から折良く来た藝急宮島往き電車に乗り込む。
 此処で初めて「パセオカード」を使用。
 朝ラッシュの帰りと言う事で空席もまばら。
 ロングシートに腰掛けるも、電車の加減速に左右にグラングラン揺れる。
 眠気もあって振幅が激しく、時折空いた座面に「ペタッ」となるとそのまま寝入りそうになる。
 「お客様」
 そんな雪音に声を掛ける車掌。女性で胸には「小林」の名札。
 「ふにゃ………」
 生返事の雪音に小林車掌は、
 「あそこのカドが空いていますからそこに寄り掛かって下さい」
 と、後ろ側になった運転台のすぐそばの席に促した。
 「すみません」
 と、トコトコ移動。
 席に座るとまた大アクビ。
 繁華街を過ぎると乗客も居なくなって、雪音が一人になった。
 先行電車に支えると希にこういう状態になる。
 「お客様はどちらにお越しですか?」
 不意に訊ねる小林に雪音、
 「宮島に行きますぅ」
 半寝の状態で返事。
 「ソレではあと50分お待ち下さい。ごゆっくりお休み下さい」
 そう言うと小林は雪音のディバッグを網棚に揚げた。
 結局、終点に着いて2分弱寝入っていた雪音。
 「着きましたよ〜」
 小林に促されて起こされる雪音。ディバッグを担いで駅の改札に出る。
 するとコンナ声がした。
 「あ! 雪音ちゃんだぁ〜!」
 改札員の一人にケイが居た。
 「あ、五嶋さん」
 と返事はするが、昨日の疲労と眠気で元気がない。
 「昨日は大変だったけェねぇ〜。岩国寿司を肴に舞妓さんが宴会したんでしょ?」
 ケイの応答に雪音が二本指を立てた。
 「泊めて貰ったからだけど午前2時まで。此処だけの話だけどお酒も入ったし」
 「あら〜」
 二人の話に朝食休憩の小林が割り入った………というか、職場の私語は禁じられているので二人をホームに引き寄せた。
 「だめよ〜、改札ケージで私語しちゃ。アナタが噂の『不幸な雪音ちゃん』ね」
 元気ない一礼をする雪音。
 「すっかりノビちゃって………あたしが朝ご飯おごってあげるから一緒に食べよ」
 促す小林。
 宮島口の「藝急”対巌山(たいげんさん)観光センター”」。
 団体客対応や名物販売をしている建物だが、社員食堂兼用の食事処がある。
 そこで小林は自分の米飯と生卵、雪音の和朝食を注文した。
 「あたしは時間がないから簡単にしてるけど、遠慮なく食べてね」
 小林はそう言って米飯に生卵を落として醤油と一緒にかき混ぜた。
 元気なく雪音もアサリ汁に手を着ける。
 「なんか酷いことになったそうだけど、今日はどうすンの?」
 ちょっと人には見せられない、小林の食べながら会話。
 マジで時間がないようだ。
 雪音は苦笑を浮かべながら答えた。
 「今日は一応舞妓さんが宮島観光を付き合って欲しいって。包ヶ浦(つつみがうら。宮島北部)で簡易キャンプ張るんだって」
 「そうだっけ? ソレでみんな広島に来たんだ。雪音ちゃんアナタ運がイイんか悪いんか解らんねェ〜」
 妙に事情を知ってる小林に雪音は訊ねる。
 「車掌さんは何やってるんですか? なんかヤケに事情に詳しいけど」
 すると小林は口を休めないまま答える。
 「あたしは小林ひとみ。藝急初の女性乗務社員だったんだけど、ソレが元で『広報特別啓蒙課』も兼務して、週一回はあそこのビルに行ってるの。昨日は夜の仕事を喰ったから行けなかったけど、他はみんな集まったみたい。けっこうみんな身を乗り出したみたいね」
 「鉄道会社ってそう言う部署もあるんだ」
 と感心する雪音に、小林ひとみは平手を大きく左右に振った。
 「学校の部活みたいなものよ。そんなたいそうなモンじゃない。げに『オフィシャル』として派遣されてる『御調』さんが大テンプラで、行動が伴ってないもん。開店休業みたいな状態なのよ」
 「ウチの管理人さんと大差ないかも」
 雪音が愚痴るが、また平手振りのひとみ。
 「器量が全然。何時潰れるか解ったもんじゃない」
 言ってる間に混ぜご飯を平らげた。
 「あたしは乗務があるからおいとまするけど、雪音ちゃんはゆっくり食べていってね。舞妓ちゃんに宜しくね」
 言うと、ひとみは宮島駅に戻った。
 「5分掛かってませんよ。早メシは鉄道乗務員の特技なんでしょうか?」
 と、ボケをかますくーに雪音は肘一発………
 朝食に甘えた雪音は宮島渡船に乗り込み、一路宮島に向かった。


9.戦略大作戦?

 宮島桟橋に到着した雪音は、感慨を抱く余裕もなく桟橋広場を歩く。
 「ゆ〜きっねちゃん!」
 と、呼び止めたのは舞妓。先にクルマで渡船していたのだ。
 「はい」
 返事する雪音をまた拉致宜しくクルマに引き込み、クルマを駆け出した。
 今度は府子のYRVだ。
 リアシートにはその府子と凪沙が寝ていた。
 イヤ、普通は二人だろう。舞妓のハイテンションのほうが異常なのだ。
 YRVは宮島北岸に向けて走り出す。
 オートマチックをもどかしげに扱う舞妓だが、おかげで昨日のような悲劇はない。
 「あんまりとばすと、往来の鹿さんに失礼だからねぇ〜」
 と言う舞妓だが、
 「車内のゲストはどうなンや〜」
 寝ぼけた凪沙が突っ込む。
 それに舞妓は、
 「そりゃあ距離を走るときは事情が許さないわよ。ちょっと荒っぽかったとは思うけど」
 コトも無げに答える。
 『ちょっとかイ?』
 声なき声で凪沙と雪音が突っ込む。
 10分もしない間にYRVは島の北岸にある包ヶ浦キャンプ場に到着した。
 手慣れた手際でモンベル・ムーンライト5テントを設営する舞妓はあっと言う間にキャンプサイトに拠点を築く。
 「事務所に手続き取りましたよ〜」
 府子が薪を手に戻ってきた。
 緑暗いテントにはガソリンランタンが灯され、中央にちゃぶ台が置かれ、その上にくーが据えられた。
 「と、言う訳で『三都物語再興計画』改め『雪音ちゃん復讐計画』を立ち上げます」
 ナニがそう言うワケなのか解らないが、昨夜?の宴会で寝ぼけている少女達を仕切る舞妓。
 「まずディレクター、乙音さん一行の所在は?」
 まずはくーに情報を請う。
 珍しく上座に据えられて上がってしまうくーだが、ヘタ打つと雪音の仕打ちがコワイのであまり余計なことは考えないようにした。
 「まだ宮島には来てないようです。昨日拾えた情報ではお昼前の上陸になるかと」
 ソレを受けて舞妓は腕を組む。
 「う〜ん。上陸を襲う手もあるけど、昨日の府子の報告じゃ煙に巻かれる可能性があるわね」
 「観光地で襲うのは無しですよ。ウチら『ゴッつぅ怖ろしい関西人観光客』になるやんけ」
 「水族館のラッコに石投げて襲わせるとか」
 ツッコむ凪沙にボケる府子。
 それに舞妓がひらめいた。
 「猿を使おう」
 「「はい?」」
 一同、唖然。
 「アノ悪名高い箕面山の猿ほどガラが悪いかは解らないけど、野生なんだから」
 『おいおい』
 そう言う問題か…と3人は顔を見合わせた。
 それに舞妓は自信ありげにこういった。
 「蛇の道は蛇。ここは一つ」
 そう言うや机上のくーをポンと叩く。
 『へ?』
 くーに内心冷や汗が伝った。
 「猿との外渉担当にコレを使いましょう」
 『ひえ〜……………そんな無理難題な』
 内心滝涙のくーだが、自分から言葉を発せない悲しさで拒否できない。
 「機械にそう言うマネできる訳ないやン」
 府子がツッこむ。
 『府子さん、ナイスなツッコミありがとうです』
 一瞬、涙目で崇めたい気持ちのくーだが、
 「大丈夫よ。こう言うことのために持ってきたんだから」
 肝心の雪音が無根拠にこう言いだしてまた滝涙状態。
 「一体このディレクター、何者よ」
 あきれかえる府子。
 結局、襲撃は夕刻準備で夜食を襲い、くーは別行動で弥山の山麓に据えられ、残りは日中は宮島観光にフケ込むと言う事になった。
 『雪音ちゃん、今日ほどキミを恨んだことはありませんよ(怒』
 ヤケクソになって歩き出すくーに、程なく猿が群れてきたという………(T^T)


10.ワレ奇襲に成功………

 厳島神社の奥座敷、大元公園の脇。山を背後に控えた鉄筋立てのホテル「みせん」。
 此処に乙音と楳田が投宿したのは日も暮れた18時だった。
 「結局、雪音は来れませんでしたね」
 と一応妹を案じる乙音だが、実際の処はこの旅のメインディッシュの牡蠣の土手鍋に眩んで心配もソコソコ。
 浴衣に着替えてサッシ窓を開け、裏山を仰ぎ、バルコニーに出てみた。
 「う〜ん………でも旅行って愉しいけど疲れますね」
 落葉も一段落し、腹の底から澄みそうな冷え切った空気が風呂上がりに心地よい。
 しかし乙音が望む山腹には怖ろしい光景が繰り広げられつつあった。
 「舞妓さん…コレはちょっと………」
 小型テントを張ってサテライトキャンプを張る舞妓は、幾条ものザイルと数個のカラビナを巧みに扱ってなにやら仕掛けを作っている。
 瞠目して見守る雪音に舞妓は、
 「大丈夫大丈夫。測量上は全く問題ないから」
 構う風もなくマイペース。
 「測量上って………」
 舞妓という人物をはかりかねてる雪音に舞妓がスッと立ち上がって言った。
 「よぉ〜し、準備完了。コレで殴り込み準備おっけェ!」
 雪音の目の前には前方にある高木(こうぼく)に吊られたザイルが垂れていて、足許のテント用の杭に斜めに張られている。
 「まさかコレを使って正面のホテルに飛び込むって………」
 「そうよ」
 ………そうよってアンタ、と言いたいのをグイと飲み込んで雪音は、
 「舞妓さんって一体京都で何やってる人ですか?」
 質問ではぐらかす。
 それに舞妓は、
 「チマチマ下着メーカーで書類を扱ってる人」
 全く回答になっていない。
 ひょっとしてそ〜ゆ〜趣味? と言う質問は、回答が恐くて出来なかった雪音だった。
 しかも、いつ持ち込んだか耐火金庫が一本のザイルに括り着けられた。
 その怖ろしい行動とは裏腹に舞妓はこう言う。
 「それにしてもディレクターは何処に行ったンやろか? 猿に持ってかれたかな?」
 くーの事である。
 雪音はまさか自分で歩き回ったとは言えないし、ちょっと酷かったかなとは思ったが、まぁ自分でついてきたんだし何とかなるわと、あまり考えなかった。
 あまり考えないようにと、
 「でも大丈夫? まっすぐ部屋に行くかな?」
 ザイルを握って雪音は半信半疑タイガース。
 「うき?」
 その時、こんな声と共に「ピン!」と言う音が聞こえたようだった。
 「へ?」
 妙な引力が雪音に働いた。
 横に張られたザイルのテンションがみるみる下に落ちてきて、雪音はそのテンションに持って行かれそうになった。
 いや、持って行かれ…なんて暢気なタイミングなど無い。
 舞妓の目の前から雪音は瞬く間に消え去った。
 「そんなに心配しなくっても大丈………」
 と、なだめる舞妓は目前の猿に瞠目した。
 「雪…」
 音ちゃんじゃないわよね、とボケを噛ましそうになる舞妓の耳に、
 「うあわああわあああわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」
 と、雪音の乱高下な悲鳴が聞こえた。唸る風切り音と遠ざかる悲鳴。
 「あいや〜」
 中国人ではない。舞妓は青筋を立てて呆然と見送った。
 その舞妓の周りに猿が群れ始めていた。
 「ピン!」
 残ったもう一個のトリガーも外れる音がした。
 「猿の軍団、猿の軍団!」
 もうボケるしかない舞妓であった。


 此処でさっきの乙音のシーンに戻る。
 心地よいほの冷やい風に思わず背伸びの彼女の耳に
 「………ぁぁぁぁああわわああああわわあああああああああああああああ」
 と、揺らぎのある悲鳴が接近していた。
 「ん?」
 背伸びで閉じていた目を開く乙音だが、
 「姫! メインディッシュの登場です」
 背後からも楳田の声が聞こえて感覚が混乱、硬直状態になってしまった。
 むっぴゅ!
 重なり合う凸と凹、飛び交う宇宙記号、コングラディエーション・ソユーズである。
 乙音はロープで飛び込んだ雪音と正面から衝突、ダイヤブロックを歯噛みにした格好でドッキング状態になってしまった。
 事の異様さに驚いた楳田はバルコニーに向かうが、
 ひゅお〜!
 黒光りする物体が続いて楳田を襲った。
 チョリっ!
 雪音に続いて飛んできた耐火金庫である。紙一重で避けた楳田。
 「ナンの! コンダクター歴ウン十年! こんな攻撃に不意を衝かれる私ではない!」
 しかし仁王立ちはマズイだろう。
 ゴワぃ〜ン!
 揺り戻しは全く頭になかったようだ。
 後頭部をしたたか打って楳田は崩れ落ちた。
 「あおたタタ………」
 その場で合体していた二人がやっと我を帰した。
 「いたたった………雪音! なんてお行儀の悪い!」
 そう言う次元じゃないだろう、乙音。
 「あってって………自分だけ旅の余韻に浸りやがってこのやろう」
 我を忘れて言葉がおかしくなった雪音。頭を振ってここ一日の恨みを爆発させた。
 「あれからどんな目にあったか、姉上にも味わって貰うわよ!」
 「要らないわよ」
 怒り狂った雪音の相手なぞ、とトンズラを決め込む乙音だが、
 「逃すかァ! 竹原産スリップハンド!」
 すかさず雪音は乙音の足許にナニか投げつけた。
 ズッテ〜ん!
 巧い具合に乙音の足に軍手がはさまった。
 ラバー加工の表が乙音の足裏を捉え、無加工の木綿の裏地が畳の目に沿ってうまく滑った。
 「イッタぁ〜!! ナニ………」
 腰を押さえてうずくまる乙音に雪音は容赦なく、
 「松永名物リモコン下駄!」
 履いていた下駄を足で蹴り投げた。
 リモコンもナニも、ただ怒りにまかせて下駄を飛ばししただけだが、乙音の向こうずねを的中!
 逃げ足を封じられた乙音に、雪音は何かを投げつけた。
 「喰らえ!」
 避けようとした乙音だが、反して身動きが出来なくなった。
 「なに?」
 浴衣の袂には縫い針が刺さり、乙音は壁に張り付けになった(つうか、普通はそうナランと思うのだが(苦
 「広島特産、国産縫い針の影縛り」
 怒りのなせる技か、何処でそう言う妙技を会得した雪音ちゃん。
 柳田理科雄先生に突っ込まれるぞ。
 「くぅう!」
 身をよじるも虚しく、乙音は雪音に無防備の骸をさらけ出す。
 目が三角になり、怒りのオーラが白熱している雪音は赤いブルマに「NIPPON」と赤字で書かれた白シャツを身に纏った鮎川こずえスタイルで耐火金庫からバレーボールを取りだしていた。
 「喰らえ! モルテンボールで猫田仕込みのゴレンジャーハリケーン・ストーム!」
 ………オイオイ、デタラメは困るぞ雪音ちゃん。
 フォローするナレーターの身にもなりなさい。そもそも猫田さんはセッターだって。
 それでも渾身の一撃で繰り出したアタックは見事乙音に命中。
 「ぐうぅ………広島名産だったら松茸とか広島菜とかアナゴメシとか、そ〜ゆ〜モンでしょ〜に〜」
 断末魔にコンナ愚痴を遺し、乙音は倒れた。
 此処に雪音は打倒乙音を果たしたのであった。
 が………
 「よぉ〜っし! 次は牡蠣の土手鍋………」
 桟敷を振り返ってみるとトンデモナイ光景が展開していた。
 猿の軍団・猿の軍団!
 「さ…る…?」
 呆然とする雪音の目の前を、ロープで闖入する猿がよぎった。
 「さ…猿が鍋を囲んでる………」
 ドンドコドンドコ闖入してくる猿が牡蠣の土手鍋に無遠慮に手を突っ込んでは食べている。
 その中に見覚えのある影が紛れていた。
 「くー!?」
 猿に紛れて闖入していたのだ。ナント器用に箸を使っている。
 駆け寄ってくーの胸ぐらを掴み、雪音は怒りを通り越した笑い顔でくーに詰め寄った。
 「ナンデぬいぐるみのアンタが鍋つついてるのよ!」
 「ソレは国家の謎なんですよ」
 澄まして答えるくーだが、この状況は尋常ではない。
 「アンッタって奴ぁ〜」
 再び目が三角の雪音だが、落ち着いてくーが答える。
 「いや〜、やって出来ないことはないんですね、猿とのネゴジェーション。鍋も食べられたし、やっと旅行の雰囲気に………」
 「わりゃあ!」
 広島弁、ソレも男言葉で凄む雪音だが食べるモノ食べたせいか、くーは冷静モード。
 「ソレよりもこの状態は撤収した方がいいンじゃないでしょうか?」
 確かに。
 きっかわ同様、取るものとりあえず脱兎の雪音であった。


11.そして帰路へ

 翌朝。
 包ヶ浦で一泊した一行はエネルギアビルに戻った。
 「いや〜ひさびさおもろかったわ。旅は靴擦れだねぇ〜」
 訳解らない舞妓の一言。
 一方でくたびれきったのは雪音。
 結局、岩国寿司以外はそれらしいモノは口に出来なかった。
 「コンナ旅もうこりごりよォ〜」
 愚痴る雪音を府子が慰める。
 「今度夏休みにウチがまた案内してあげるって。今度はまともな観光をやろうね」
 「またキャンプやろうよ」
 凪沙も誘う。
 「本当に広島ってイイ処ですねぇ。また宜しくお願いします」
 ………こう言ったのは乙音である。
 「厚かましいことこの上ない!」
 「何を生意気な!」
 クロスカウンターで応酬の雪音だが、
 「だいたい何で姉上がこっちへ? 楳田さんと一緒じゃなかったの?」
 ツッコミ一本。
 それに鼻をすすって乙音が答える。
 「だぁ〜って気が付いたらホテル追い出されて楳田さんも居なかったんだもの。舞妓さんを拝み倒して小さいテントを借りて夜を明かしたのよ」
 マット一枚しか無く風邪を引いたようだ。
 「ふえっしょ!」
 帰路にあたって雪音はサッサと府子の車に乗り込んで逃げるように大阪への帰り路に就く。
 取り残された乙音と舞妓は、
 「じゃ、帰りましょうか、大阪まで」
 愛車に誘う。
 「宜しくお願いします」
 うやうやしく頼む乙音。
 しかぁし、この後どうなったかは想像に難くないであろう。
 しかも雪音が広島県内で済んだのに、乙音は風邪ひきさんで大阪までである。


 丹波篠山。
 意識朦朧とする乙音は舞妓に訊ね返す。
 「此処って国道じゃないのでは?」
 「アラ、ちゃんとした国道よ。327号線。川西に向かう173号線まではちょっと待ってよね」
 当分乙音はタクシーさえ乗らなかったそうな。

おわり♪



 お疲れ様でした、御調さん。
 広島応援なペルソナショートストーリー、如何でしたでしょうか?
 何気に乙音が良いものばかり食べて一番得しているような気もしますが。
 広島に寄られた際には、ぜひとも参考にしてみてくださいね♪
 御調さんのHP「AIBEX」はこちら
 安藝急行のみなさんの詳細がありますので、是非とも覗いてみてください。


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