ペルソナ達の午後
デュエルスタート! 雪音登場
「ハァハァハァハァハァハァ」
「ハァハァするなー!!」
どげす!
「げふっ!」
ここはCドライブにあるマイドキュメントのディレクトリ。
体中にほころびのあるペンギンのぬいぐるみが、ツインテールの少女の踵落としを食らっていた。
見事に頭が「凹」の形にへこんでいる。
「だ、だって、雪音ちゃーん」
ぽこんとへこんだ頭を元に戻して、ペンギンは鬼のような形相の少女を見上げて訴える。
「雪音ちゃんがボクを盾にするからだよー。攻撃受けてるのボクだけじゃないか!」
「アンタはぬいぐるみなんだから、いくら打撃を受けても大丈夫でしょうが」
呆れた顔で少女。
「大丈夫じゃないよー。ボクは80%しかぬいぐるみじゃないんだからさぁ」
「あとの20%は何よ?」
「……やさしさ、かな?」
「バファリンかいっ!」
ごす!
「へぶし!」
ツインテールの少女――雪音の豪快な蹴りを受けてぺんぎんのぬいぐるみ――くーはディレクトリの端まで飛ばされ、壁にぶつかって落ちた。
「ううっ、ひどい…」
よろよろと立ち上がる(?)くーに、眩い光が襲った!
「?!」
ごごん!
凄まじい爆風がくーを吹き飛ばし、破壊されたDOCファイルの破片が雪音に襲いかかる。
「くっ!」
真正面に飛び来る16KBの破片を右足で蹴り落とし、彼女は光の飛来した方向を睨みつけた。
そこには黒く丸い物体が一つ。
〇かと思えば□になり、そうかと思えば☆形になるその真中には大きな目が一つだけ。
「見つけたわよ、MSブラスターっ!」
「キキッ!」
奇声を上げた黒い物体はコンピューターウィルス『MSブラスター』。
現在、彼女のいるこのPC内で猛威を振るっている困ったちゃんである。
「今度はアタシのターンよっ,アタシはくーを生贄にマジックカード『天使の翼』を発動!」
雪音は叫びながら、懐から一枚のカードを取り出して頭上に放り投げる。
カードは四散。
同時。
「うぎゃーー!」
先程破壊されたデータの瓦礫からくーの断末魔が上がり、それと引き換えに雪音の背に一対の黒い翼が生まれた。
「あたーっく!」
雪音はMSブラスターに向かって飛んだ!
焦るウィルスは、迫り来る黒い天使へ目からの破壊の光を放つ。
「ギギッ」
それらはしかし目標に当たることなく、その背後のDOCファイルを破壊するだけだ。
「もらった!」
頭上のウィルスの懐に飛び込んだ雪音は利き足である右足を後ろへ。
「鮮烈のミドルキック!!」
ごすん!
ウィルスにめり込む雪音の右足。
重たい何かを叩きつける音を伴い、ウィルスは霧散した。
「っしゃ!」
翼を広げてガッツポーズをとる雪音。
「全然「っしゃ」じゃないよ……」
破壊された瓦礫の下で、一部綿のはみ出たくーが目に涙を溜めてポツリと呟いていた。
≪次回予告≫
ウィルスを撃退した一人と一匹に襲い来る次なる敵。
果たしてそいつのスペックは?!
次回『静かなる激怒 春菜参上!』
期待しないで待て!
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